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選挙のルールって?~戸別訪問禁止のわけ~

選挙のルールって?~戸別訪問禁止のわけ~

美海

ねぇお父さん、さっき候補者の人が家に来ようとしてたの見たよ。これって普通なの?

お父さん

それは大変だ!選挙違反かもしれないねぇ

選挙運動には様々なルールがありますが、その中でも戸別訪問の禁止は特に重要な規定の一つです。戸別訪問とは、候補者やその支援者が有権者の自宅を個別に訪問し、投票を依頼する行為のことです。この行為は公職選挙法第138条で明確に禁止されています。

太平

でも、直接話を聞けた方が候補者のことがよくわかると思うんだけど

お母さん

そうね、でも家に来られると断りづらいでしょう?特にお年寄りは遠慮しちゃって、本当は違う人に投票したいのに、断れなくなっちゃうかもしれないのよ

戸別訪問が禁止されている背景には、有権者の権利を守るための重要な理由があります。

第一に、有権者への不当な圧力や強制を防ぐためです。自宅という私的な空間で投票を依頼されると、断ることへの心理的な負担が大きくなります。第二に、選挙の公平性を確保するためです。資金力や運動員の数によって訪問できる範囲に差が出てしまうことで、選挙戦に不公平が生じる可能性があります。第三に、有権者のプライバシーを保護する必要があります。

美海

じゃあ、どうやって候補者のことを知ればいいの?

お父さん

街頭演説を聞きに行くのもいいし、選挙公報を読むのも大事だね

お母さん

最近は若い人向けにネットでも情報発信してるわよ

別訪問は禁止されていますが、候補者には様々な方法で政策や主張を有権者に伝える機会が保障されています。街頭演説では候補者の生の声を聞くことができ、選挙カーによる広報活動では広く市民に存在を知らせることができます。

また、近年ではインターネットやSNSを活用した情報発信も活発に行われており、特に若い世代への訴求に効果を発揮しています。さらに、すべての世帯に配布される選挙公報には、候補者の政策、経歴、写真などが公平に掲載されます。

美海

違反すると、どうなるの?

お父さん

とても厳しい罰則があるんだよ。当選が無効になったり、場合によっては刑務所に入ることだってあるんだ

公職選挙法では、戸別訪問の禁止に違反した場合の罰則を明確に定めています。違反が認定されると、当選が無効となる可能性があるほか、1年以下の禁錮刑または30万円以下の罰金という刑事罰が科されることがあります。これほど厳しい罰則が設けられているのは、選挙の公正さを守ることが民主主義の根幹に関わる重要な問題だからです。

太平

そんな厳しい決まりって、憲法違反じゃないの?表現の自由とかあるよね

お母さん

それについて、たしか裁判所が判断を下してるんじゃなかったかしら?

実際、戸別訪問の禁止については、長年にわたって憲法との関係が議論されてきました。特に、憲法第21条で保障されている「表現の自由」を不当に制限しているのではないかという指摘がありました。この問題について、1981年6月15日、最高裁判所大法廷は重要な判断を示しています。

判決では、戸別訪問の禁止は、選挙の公正を確保するための必要かつ合理的な制限であり、憲法に違反しないと結論付けました。その理由として、戸別訪問には次のような問題点があることを指摘しています。

  • 有権者の生活の平穏を害するおそれがある
  • 買収や利害誘導の温床となりやすい
  • 選挙運動の機会均等を損なう可能性がある

また、他の選挙運動の方法が認められていることから、表現の自由を著しく制限するものではないと判断されました

美海

へぇ、選挙って色んなルールがあるんだね。私たちの自由な選択を守るためなんだ!

このように、戸別訪問の禁止は一見すると厳しい制限に思えますが、実は私たちの投票する権利を守るための重要な制度なのです。選挙は、民主主義の根幹を支える重要な仕組みです。だからこそ、候補者の情報は公平な方法で提供され、有権者は圧力や強制を受けることなく、自由な意思に基づいて投票できることが保障されなければなりません。

インターネットの発達により、候補者と有権者のコミュニケーション方法は大きく変化してきています。しかし、戸別訪問禁止の本質的な意義―有権者の自由な意思決定の保護―は、現代においても変わることはありません。

選挙において、私たち有権者に求められているのは、様々な情報源から候補者の政策や主張を主体的に理解し、自分の意思で判断することです。それこそが、公正な選挙を実現し、民主主義を健全に機能させる基盤となるのです。

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