第1章 – 魂は星のかけらの集合体
第4節 五感を目覚めさせるリラックス習慣
五感を研ぎ澄ますと見えてくるもの
五感を研ぎ澄ませると、見ていないはずのものが見えるようになり、聞いていないはずの音が聞こえるようになります。
もちろん、目の前に存在しないものが突然現れるという意味ではありません。
普段は意識していない小さな変化や気配を、体や魂が感じ取れるようになるのです。
以前、近くに誰もいない静かな砂浜で、ひとりシートに座りながら海を眺めていたことがありました。
遠くでは、海水浴を楽しんでいる人たちがいました。
その人たちの声は、会話としては聞き取れません。
ただ、遠くから流れてくる音として、まるで静かなBGMのように聞こえていました。
周囲はとても穏やかで、私はしばらく海だけを見つめていました。
ザザーン。
ザバザバザバザバッ。
波は、一定のリズムを刻みながら岸へ打ち寄せています。
その音に意識を向け続けていると、次第に風の音にも強弱があることがわかってきました。
波と風の小さな変化
波がザバーンと大きくなるときには、その直前に風が強くなることがあります。
何度も波と風の音を聞いているうちに、
「もうすぐ強い風が吹きそうだな」
と、わかるようになりました。
しばらくすると、遠くから飛行機の音も聞こえてきました。
空を見上げても、まだ飛行機の姿は見えません。
けれども音の方向や変化から、もうすぐ自分のいる場所の上空へ飛行機が近づいてくることがわかるのです。
五感に意識を向けると、普段なら気づかないような、小さな変化を受け取れるようになります。
自然や周囲の環境は、常に多くの情報を発しています。
私たちが気づいていないだけで、五感も魂も、その情報を受け取り続けているのです。
人間は環境にすぐ慣れてしまう
人間には、環境へ順応する優れた力があります。
けれども、その順応性は、メリットであると同時にデメリットにもなります。
たとえば、鶏を飼っている家に泊まったときのことです。
初日の朝は、雄鶏の「コケコッコー」という大きな鳴き声に驚いて目を覚ましました。
ところが、二日目からは、雄鶏が同じように鳴いているにもかかわらず、その声で目を覚まさなくなりました。
鳴き声が小さくなったわけではありません。
私の脳がその音に慣れ、反応しなくなったのです。
人間の脳は、同じ刺激が続くと、それを危険ではないと判断し、意識から外していきます。
そのため、音は確かに聞こえているのに、聞こえていないように感じることがあります。
聞こえなくても体は反応している
ビーチで働いている友人も、同じような話をしていました。
仕事中、水上スキーのエンジン音がずっと聞こえていても、本人はまったく気にならないそうです。
けれども、営業時間が終わり、ビーチから人がいなくなった瞬間、
「ものすごく静かだな」
「そういえば、ずっとゴーッという音がしていたんだ」
と気づくといいます。
音が止まると、体が軽くなったように感じることもあるそうです。
本人の意識では音を気にしていなくても、耳や体はその音を受け取り続けていたのでしょう。
大きな音や一定の刺激によって、体が無意識のうちに緊張し、余計な力が入っていたのだと思います。
音に慣れて聞こえなくなったように感じても、体まで完全に反応しなくなったわけではありません。
意識の外で、五感も魂も刺激を受け続けているのです。
順応性が感覚を鈍らせる
人間の順応性は、本当に優れています。
どのような環境でも、ある程度は慣れて生活できるようになります。
けれども、刺激に慣れるたびに、少しずつ無反応になっていくこともあります。
便利な生活に慣れる。
騒音に慣れる。
疲労に慣れる。
痛みに慣れる。
緊張している状態に慣れる。
その結果、自分が無理をしていることや、心と体が疲れていることに気づきにくくなります。
順応性が高いからこそ、長い間緊張している状態にも慣れてしまい、それが普通だと思い込んでしまうのです。
自分ではリラックスしているつもりでも、実際には五感も魂も、ずっと緊張していることがあります。
その状態が長く続けば、心や体に不調が現れることもあるでしょう。
だからこそ、意識して五感を休ませ、緊張をほぐす時間が必要なのです。
体から届くメッセージを受け止める
以前、テレビでヒラリー・クリントンさんが、お酒を飲むと頭痛がするため飲まないと話しているのを聞いたことがあります。
体に合わないものを口にしたとき、頭痛や吐き気、違和感といった反応が現れることがあります。
それは、体が自分を守るために発しているサインとも考えられます。
体のどこかに不具合が起きたときには、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などを通して、何らかのメッセージが届きます。
味がおかしい。
匂いが苦手に感じる。
音がうるさく感じる。
体が重くなる。
頭やお腹が痛くなる。
そのような反応が現れたときには、自分の正直な感覚を無視しないことが大切です。
「大したことはない」
「気にしすぎだ」
「我慢すれば大丈夫」
と決めつけるのではなく、まずは自分の体が何を伝えようとしているのか、静かに受け止めてみてください。
コーヒー瞑想で五感を休ませる
私は仕事中に集中力が切れてきたと感じると、一度、仕事以外のものへ意識を向けます。
そのときによく使うのが、コーヒーです。
私はこれを「コーヒー瞑想」と呼んでいます。
五分から十分ほど、時間がないときには二、三分でも構いません。
短い時間だけ、意識のすべてをコーヒーへ向けます。
コーヒー瞑想を行うことで、仕事の集中力を完全に途切れさせることなく、五感にたまっていた緊張を取り除くことができます。
コーヒー瞑想の方法
やり方は、とても簡単です。
まず、コーヒーに集中する時間を決めます。
カップを両手で包み込み、静かに目を閉じてください。
手のひらに伝わるカップの温かさを感じます。
そして、大きく深呼吸をしながら、鼻からコーヒーの香りを吸い込みます。
香ばしい香り。
少し苦みを感じさせる香り。
湯気とともに広がる、やわらかな香り。
どのような香りがするのか、ゆっくりと感じ取ってみましょう。
次に目を開き、カップをゆっくり回しながら、コーヒーの色を観察します。
一見すると同じ茶色に見えても、光の当たり方によって、濃い色や薄い色、赤みや黒みなど、さまざまな色が見えてくるかもしれません。
カップや器の形、手触り、模様を眺めるのもよいでしょう。
そして、コーヒーを少しだけ口に含み、味をゆっくりと確かめます。
苦みや酸味。
口の中に広がる香り。
飲み込んだあとに残る余韻。
急いで飲むのではなく、一つひとつの感覚を静かに、丁寧に味わってください。
コーヒーだけに意識を向ける
コーヒー瞑想では、何も考えないようにする必要はありません。
何も考えないのではなく、コーヒーのことだけを考えるのです。
カップの温度。
コーヒーの香り。
色の変化。
口に含んだときの味。
飲み込んだあとの感覚。
一つのことへ意識を集中すると、不思議なことに、周囲のざわざわした音が聞こえにくくなります。
意識が仕事や悩みから離れ、コーヒーだけに向かうことで、脳と五感が短い休息を得られるのです。
コーヒーへの集中を解いたときには、心と体がリフレッシュしていることに気づくでしょう。
わずか一分でも、気持ちが切り替わることがあります。
まるで少しの間、まったく違う場所にいたかのような感覚になるかもしれません。
私はコーヒー瞑想を終えると、深い水の底に静かに沈んでいたような、穏やかな気持ちになることがあります。
決めた時間が来たら、そこで終了です。
好きな飲み物で試してみる
コーヒーが苦手な人は、無理にコーヒーを使う必要はありません。
日本茶、中国茶、紅茶、ハーブティーなど、自分が好きな飲み物で試してみてください。
大切なのは、飲み物の種類ではありません。
自分の五感が心地よいと感じるものを選び、その一杯に意識を集中することです。
香りが好きな飲み物。
色を見ると落ち着く飲み物。
カップを持ったときに安心できる飲み物。
自分が心から落ち着ける一杯であれば、それがあなたにとっての瞑想になります。
茶道に込められた集中の仕組み
近年では、日本の茶道が海外からも注目されています。
企業の中には、社員の集中力を高めたり、気持ちを切り替えたりするために、茶室のような空間を設けるところもあると聞きます。
茶道は、戦国時代に現在の形が確立されたといわれています。
武士たちは、戦いの前後に精神を整え、心のスイッチを切り替えるために、お茶の時間を活用していたのでしょう。
戦いという激しく緊張した世界から離れ、まったく反対の静かな空間へ身を置く。
それによって、精神を整え、集中力を取り戻していたのだと思います。
とても優れた発想ですよね。
お茶だけに集中する空間
茶室は、外の景色がほとんど見えない、狭く静かな空間です。
その中で甘いものをいただき、茶碗や道具を眺め、亭主が丁寧に点てたお茶を味わいます。
視覚は器や道具へ向かい、嗅覚はお茶の香りを感じます。
味覚は甘いお菓子とお茶を味わい、触覚は茶碗の温度や手触りを受け取ります。
聴覚は、お湯の音や茶筅の音、静かな空間に意識を向けます。
茶道には、五感を一つのことへ集中させる仕組みが整っているのです。
また、甘いものは疲れた心や体をほっとさせ、魂のエネルギーを補うものでもあります。
その意味でも茶道は、とても理にかなったマインドフルネスだと思います。
五感を休ませると魂の声が聞こえる
私たちは日々、さまざまな音や光、情報に囲まれて生活しています。
便利な環境に慣れる一方で、五感は知らないうちに疲れ、緊張しています。
魂からのメッセージに敏感になるためには、五感をさらに働かせるだけではなく、緊張を解いて休ませることも必要です。
好きな飲み物に集中する。
自然の音に耳を傾ける。
香りを楽しむ。
器の手触りを感じる。
静かな時間を過ごす。
こうした小さな習慣によって、環境への慣れで鈍くなっていた五感が、少しずつ本来の感覚を取り戻していきます。
五感がほぐれ、心と体が静かになったとき、魂から届く小さなメッセージにも気づきやすくなります。
忙しい毎日の中で、ほんの数分でも構いません。
自分の五感を休ませ、魂の声に耳を傾ける時間をつくってみてください。
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