身内とのお別れや終活など、さまざまなタイミングでお墓の購入を検討する人は多くいます。しかし、近年は少子化などの理由からお墓の多様化が進み、墓石を使う伝統的なお墓以外の選択肢も増えてきました。「自分はどのようなお墓を選べばよいのか」と悩んでしまうこともあります。
お墓は一度決定してしまうと、簡単に変更することはできません。後悔しないためにも「正しい知識」と「選び方のポイント」を知る必要があります。今回は初めてお墓を選ぶ人に向けて、お墓の基礎知識や種類、気になる料金などについて触れていきます。本記事を参考に情報収集をしっかりと行い、納得するお墓を見つけてください。
【この記事のポイント】
- お墓の基本情報や運営方法などから、自分がどのような墓を選択すればよいか理解できる
- どのくらい費用がかかるのか、予測することができる
- ライフスタイルを考えたお墓の選び方を知ることができる
お墓の基本情報を知る
まず最初は、【お墓の種類】【運営方法】などお墓選びの基本部分について解説します。【お墓の種類】は墓石を建てる伝統的なタイプ以外に、近年注目されている納骨堂や樹木葬などがあります。
【運営方法】は寺院・民営・公営と3つの運営主体をご紹介します。それぞれメリットやデメリットなどがあるので、ご自分に最適なお墓についてご確認ください。
【お墓の種類について】
・一般墓
墓地を購入し、故人の名前を刻んだ墓石を建てるのが、「一般墓」です。伝統的な「和形墓石」を選ぶ人が多いですが、宗教や好みに合わせて石材やデザインを変えることもできます。
一般墓を選ぶなら、建てたお墓を継承してくれる人が必要になります。また、定期的なお墓の手入れなどの負担もあります。管理面で負担がかることを考慮し、家族などと相談をして決めましょう。
◎一般墓に向いている人はこんな人◎
- 継承してくれる人(血縁者など)がいる
- 伝統を重視したい
- 人とは違うデザインのお墓に入りたい
・納骨堂
納骨堂とは、骨壺に入れた遺骨を管理してもらう場所のことです。主に寺院の敷地内に併設されていることが多く、ロッカーのようなスペースの中に遺骨が納められ、その前でお参りをします。一般墓と比べて一番のメリットは、納骨堂は室内にあるため天候に左右されないという点でしょう。
また、一般墓と比較すると初期費用は安く済みますが、遺骨の保管年数が決められ、継続の場合には維持費がかかります。納骨されているスペースが狭く供物が制限されたり、お盆やお彼岸などでお参りに来る人が多い時期は混み合ったりします。
◎納骨堂に向いている人はこんな人◎
- 天候を気にせずお参りがしたい
- お墓の掃除など管理が難しい
- できれば費用は抑えたい
・樹木葬
最近注目されているのが「樹木葬」と呼ばれるお墓のかたちです。許可された区画に遺骨を埋葬し、樹木や草木を墓碑(シンボル)とします。管理が必要なく継承者は不要です。購入した区画内であれば、制限されることが少ないため、内縁のカップルや兄弟、ペットと一緒に眠ることもできます。墓石の購入がなく、一般墓と比べると埋葬の費用は安価です。
◎樹木葬に向いている人はこんな人◎
- 管理面で負担をかけたくない
- 費用を抑えたい
- 死後は自然に還りたいと考えている
- 継承者がいない
【運営方法について】
お墓の種類についてご説明しました。続いてはお墓の運営方法の違いについて解説していきます。大きく分けて、寺院墓地・民営霊園・公営霊園の3つに分けられます。
お墓は一度購入すると変更が難しいため運営元の信頼性や将来性なども重視すべきポイントです。以下で詳細についてまとめていますので、お墓選びの参考にしてください。
・寺院墓地
寺院の敷地内などにある墓地を申し込む場合、運営元は寺院になります。元々寺院とお付き合いがある檀家などが申し込む場合が多いですが、近年は宗旨・宗派を問わず受け入れてくれる墓地や納骨堂も増えています。
周回忌や法要も執り行ってくれるため、仏事全般を全てお任せできるのが寺院墓地のメリットです。ただし、寺の修繕費などのお布施や寄付金が定期的に必要になる寺院もあります。
・民営霊園
民間霊園とは、宗教法人・公益法人と民間企業が関わり合って運営する霊園のことです。たとえば、以下のようなパターンがあります。
民間霊園A | 【経営主体】 ・宗教法人や公益法人 | 【墓地の区画販売+墓石工事】 ・民間業者や企業などに委託 |
民間霊園B | 【経営主体+墓地の販売】 ・宗教法人や公益法人 | 【墓石工事】 ・民間業者に委託 |
宗教法人が運営する霊園ですが、宗教・国籍や継承者の有無も問われない公園墓地が多くあります。ただし、指定石材店制度を導入し管理運営を石材店に委託している場合は、指定石材業者以外で墓石を建立できません。複数の石材店でデザインや価格を比較したい場合は指定業者について事前にチェックしておきましょう。
・公営霊園
公営墓地は、市町村などの自治体が運営や管理を行っている霊園で、宗教は不問で石材店の指定もない場合が多いです。また、民間霊園や寺院墓地と比べ、一般的に費用が抑えられるのもメリットです。
ただし、公営霊園の公募は市民からの申込が殺到することも多く、倍率が高くなりがちです。たとえば、さいたま市の令和元年度の一般墓地の公募では、110区画の募集に対し、2,257件の申し込みがあり抽選で当たる確率は20.5倍でした。さいたま市に限らず、どの自治体でも公営霊園は人気となっています。
平均購入価格はどのくらい?
お墓の種類や運営方法など基本的なことが分かったところで、続いては一般墓・納骨堂・樹木葬の平均購入価格について解説します。お墓は決して安い買い物ではないので、種類ごとにかかる金額の違いを把握しておく必要があります。
【一般墓の平均価格】
株式会社 鎌倉新書様の【第12回】お墓の消費者全国実態調査によると2021年の一般墓の平均購入価格は 169.0 万円という金額でした。この購入価格には、「墓石代」「土地利用料(永代使用料)」「管理費」などが含まれた金額になります。
・管理費用とは?
墓石費用と永代使用料以外に確認しておきたいのが、管理費用です。費用の相場としては、1年間で約4,000~15,000円程で、運営方法によって金額に幅があります。また、格式高いお寺や施設が充実している民営霊園の場合は管理費がさらに高額になる場合もあります。毎年支払う費用なので、自分や家族にとって負担にならない金額かどうかをしっかりと確認しておきましょう。
【納骨堂の平均価格】
納骨堂の平均購入価格は 91.3 万円(【第12回】お墓の消費者全国実態調査)です。一般墓の平均価格と比較すると、約80万円ほど低いですが、納骨堂も管理費用や維持費などの諸費用が年単位で発生します。
【樹木葬の平均購入価格】
【第12回】お墓の消費者全国実態調査を参考にすると、2021年の樹木葬の平均購入価格は 71.7 万円という結果でした。一般墓と比べると墓石代がかからないことが多いので、一般葬と樹木葬を比べると100万円近く平均価格に差がついたことが分かります。樹木葬は一般墓より価格を抑えることができる点から人気が高まり、今後もますます需要が増えていくでしょう。
宗旨・宗派や立地も考える
お墓の種類や運営方法以外にも、お墓選びのポイントはいくつかあります。例えば、宗旨・宗派の確認です。特に寺院墓地は宗派などを限定して募集していることもあります。
また、立地もお墓選びで確認すべきポイントです。たとえば、交通利便性を考えずにお墓を選んだ場合、お墓の管理をする家族や親族に長い間負担を強いることになりかねません。自宅から霊園までのアクセスについても考慮する必要があります。
まとめ
今回はお墓選びについて知っておきたいことをまとめました。お墓は、継承者の有無やご自身のライフスタイル、ご予算などさまざまな視点から選ばなくてはいけません。少子高齢化に伴い、お墓に対する考え方が目まぐるしく変化している昨今ですが、上記でご紹介した基本情報を参考に自分に最適なお墓を選んでください。