大切な親族が亡くなったら、残されたご遺族は故人を偲びながら「喪中」や「忌中」と呼ばれる期間を過ごします。この期間は、宗教や宗派によって考え方が異なるのをご存じでしょうか。今回は、「喪中期間に禁止すべき行動」などについて解説します。また、「忌中と喪中の違い」や喪中期間をどのように過ごせばよいのか知っておくと、いざという時の心構えができますので、最後まで読んでお役立てください。
まずは「喪中」と「忌中」の違いを確認
お悔やみごとの中には「喪中」以外に、「忌中」という似たような言葉があります。混同してしまう方も多いですが、それぞれ違う意味があります。以下で、喪中と忌中の違いについてご説明します。
【喪中とは】
家族など近親者が亡くなり、喪に服す期間のことを「喪中」といいます。喪中の間は慶事などおめでたいことは控え、身を慎み故人を偲んで過ごします。日本では、江戸時代~明治29年頃までは「服忌令」という法令があり、親族の服忌(喪に服すこと)に関しては遵守が厳しく求められていたこともありました。その後、法律的な効力も無くなりましたが、近親者が亡くなったら喪に服すという考えは現代にも残っています。
・喪中の期間
喪中の期間は慣習や親密さによって考えも異なりますが、以下に一例を記載します。なお、喪中の範囲は一般的には二親等までとされます。
続柄 | 期間 |
父母 | 12ヵ月~13ヵ月 |
夫・妻 | 12ヵ月~13ヵ月 |
兄弟姉妹 | 1ヵ月~6か月 |
- 一親等→父母・配偶者の父母・子・配偶者の子
- 二親等→祖父母・配偶者の祖父母・兄弟姉妹・兄弟姉妹の配偶者・配偶者の兄弟姉妹・義兄弟姉妹・孫・配偶者の孫
【忌中とは】
忌中とは喪中の中にある一定の期間のことですが、神道と仏教で考え方や期間が異なります。以下で、それぞれの忌中の考え方と期間の説明を行いますので参考にしてください。
・神道における忌中は50日間
神道では「死は穢れ」という概念があり、身内が亡くなると近親者も「死による穢れが残る」とされています。周りに影響を与えないためにも、親族の死後50日間は身を慎み、故人を偲んで静かに過ごすべきと考えられています。この期間のことを一般的に「忌中」と呼びます。50日間が過ぎると、親族などが集まり「五十日祭」と呼ばれる儀礼を行い「忌明け」とします。
・仏教における忌中は49日間
一方で、仏教には「穢れ」という概念はありません。しかし、命日を1日目として数え、49日間は「故人の成仏を祈る特に大切な期間」と考えられています。この期間が仏教における「忌中」です。そして49日目に、故人の新たな旅立ちを願って「四十九日法要」を行い「忌明け」とします。四十九日は地域によって数え方が異なることもあり、関西の一部では四十八日目に法要が行われます。
喪中や忌中の時期に禁止すべきこと
近年は、ライフスタイルの変化により、昔ほど喪中期間を厳守して過ごすことが少なくなってきました。しかし、仏教や神道の考えに基づき、忌中の間は特に控えるべき行動もあります。以下でいくつかの項目に分けてご紹介しますので、参考にしてください。
【神社や神棚への参拝】
神道においては忌中の間は穢れているとされているため、神社への参拝は控える必要があります。また、自宅内にある神棚に対しても同様にお参りは控えましょう。忌中の間は穢れを移さないように「神棚封じ」の儀式を行い、戸を閉めておくのが一般的です。
【入籍や結婚式】
身内に不幸があった場合、慶事などのお祝いごとは延期するのが一般的です。しかし、延期やキャンセルを行うと余計な料金が発生するなどの事情もあり、忌明け後なら挙行するケースも見られます。また、「故人が生前楽しみにしていた」という理由などがあれば、予定通り行うこともあるようです。ただし、考え方の違いからトラブルなどを避けるため、他の親族にも相談をした方がよいでしょう。
一方で、結婚式などに参列する際も、忌中期間を過ぎれば問題ないとされることが多いです。
【旅行に行く・宴席の出席】
行楽が目的の旅行や宴会などは、基本的には禁止とされています。しかし、大切な親族を亡くされたご遺族は、身も心も疲れ癒されたいと思う時期でもあります。故人の供養が目的だったり、気持ちの整理をしたりといった特別な理由があるなら、旅行に出ても不謹慎とはならないでしょう。
【新年のお祝い】
忌中や喪中の期間は、おめでたい行事を避ける傾向があります。年賀状やおせち料理などお正月の準備はどのように行うべきか以下でご紹介します。
・年賀状
新年のお祝いの挨拶を行う年賀状ですが、喪中の期間は年賀状は控えましょう。例年年賀状をやり取りしている方には、年賀を欠礼するお知らせの「喪中ハガキ」を用意し、12月上旬くらいまでに投函します。
・おせち料理
豪華な料理や飲酒などは、忌中の間は控えた方がいいとされています。しかし、近年は、忌明けを過ぎていれば、おせち料理を食べても問題ないという考えが一般的になりました。ただし、紅白の食べ物や鯛など慶事を連想させる食べ物は避け、シンプルな内容の料理を用意するとよいでしょう。
・初詣
忌中の期間は神道では「穢れ」とされるため、神社に初詣の参拝をするのは控えましょう。しかし、忌明けが過ぎたら、新年の参拝は差し支えないとされています。お守りの購入については、神社や地域によって考えが違うため、心配なら社務所などに確認しておくと安心です。
喪中や忌中の時期でも問題ないこと
喪中の期間は控えるべき行動がいくつかありました。続いては、喪中や忌中の間でも問題ない行動についてご紹介します。
【葬儀への参列】
喪に服している期間に控えるべきことは、慶事などのお祝い事が該当します。そのため、故人を偲ぶ葬儀に参列するのは問題ないとされています。
【暑中見舞い、寒中見舞い】
年賀状は新年を祝う挨拶状なので、喪中期間は控えた方がよいです。しかし、暑中見舞いや寒中見舞いは、相手の健康を気遣った挨拶状でもあるため、喪中期間でも送付することは可能です。
【寺院参拝】
寺院には「穢れ」という考えはありませんので、忌中の間でも参拝に行くことができます。合格祈願などを行いたい場合、神社では忌明けまでは難しいですが、寺院ならいつでも可能です。
喪中や忌中がない宗教や宗派もある
宗教や宗派によって、「死」に対しての教えや見方に違いが見られます。「忌中」や「喪中」といった考えがない宗教や宗派もありますので、ここでご紹介します。
【キリスト教】
キリスト教においては、死は「不幸なこと」や「穢れ」という概念はありません。「現世にいる自分たちもいつか神様の導きで天国に行き、故人と再会できる」という考えなので、死を悼む期間は設定されていないのが特徴です。
【浄土真宗】
浄土真宗には「亡くなった方はすぐに仏になる」という「往生即身仏」の教えがあります。魂は彷徨うことなく、穢れも残しません。亡くなったと同時に阿弥陀如来に導かれ、極楽浄土に迎えられたことに対する喜びや感謝の気持ちで葬儀を行います。このため、「忌中」や「喪中」という考えは浄土真宗には存在せず、浄土真宗の門徒の方は喪に服すことはありません。
まとめ
今回は喪中の時期に控えるべき行動や、喪中の期間などについて解説しました。親族を亡くした後の喪中や忌中という期間は、故人を偲びながらも自分の気持ちの区切りをつける大事な時期だといえます。残されたご遺族が自分の人生に前向きになるためにも、喪中期間は大切に過ごしましょう。