こんにちは〜。6月になりましたね〜。
梅雨の晴れ間に二番がーす(二番ゼミ)が、ジージーと鳴いています。vol.389お届けです!
ぬかーぬか(ゆっくりと)お楽しみくださいね〜。
宮古ふつと幼児語
Motoca(平良・下里出身)
宮古ふつに「幼児語」ってあるのだろうか、と、ここ2年ぐらい考えていた。幼児語、というのは、車を「ぶーぶー」と言ったり、足または歩くことを「あんよ」というように、小さい子が発音や表現をしやすいようにやさしく言い換えた言葉。娘が産まれてもうすぐ2年、簡単に伝えられる方言の表現はないだろうかとずっと考えていたのだが、私が育った家の環境なのか時代柄なのか、そういうものの覚えがほぼない。
唯一思い当たるのは、叱られるときは「めっ!」ではなく「はん!」だったこと。ジェスチャーもあった。右手で右膝をたたきながら、右足は地面をドン!と踏みつける。その仕草に、自分が叩かれることを連想して、なかなかの恐怖であった。言うことを聞かないと、「あんたは、すぐ〜、はん!するよ」が、最後通告だった。
そういえば、「すぐ〜!」も方言だはず。共通語で「今すぐ」というときの「すぐ」ではない。いや、同じなんだろうけど、共通語のそれよりも時間の近さをあおられている感じがする。この「はん!」と「すぐ」ぐらいしか幼児語らしいものを知らない。他に、なにかあったっけ?
思い当たらないまま約2年。でも最近、気づいたことがある。宮古口はたぶん、そのままでも子どもに通じる。通じるというか、小さい子でもそのままわかりやすいし発音しやすいのだと思う。
1歳を過ぎた頃、離乳食の遊び食べがひどかったので、お皿をすっと下げたら、目を丸くして「あばっ?」と言われた。抗議の意志を含んだ「あれっ?」である。使うタイミングもバッチリ。あがじゃ、だいず。ばんたが っふぁー、天才ぱず(おや、大変だ。うちの子は天才じゃないか)、としばし喜んだのだが、後で冷静に考えたら、この頃の発語は大体「あー」とか「ばぶー」とかだったのである。発音できる音がたまたま組み合わさっただけさいが。
その後、スプーンがまだうまく使えずなかなか食べられないのを、私が「んじんじ(どれどれ)」といって手伝ってあげていたら、子どももごはんを食べ始めるときに「んじんじ?」と言うようになった。どれどれ、どれから食べようかな?というニュアンスになって、それはそれで正しい。最近は、「んじんじ?」といって靴を履く。
そういえば、宮古口の会話は擬音語・擬態語が豊富なのである。繰り返し言葉も多い。別段、幼児語なんて括りがなくても、そのままで、いろいろな物事の表現を覚えていけるのかもしれない。
出産当初は、「言葉を覚えてきたら『ママ』じゃなくて方言の『あんな』で呼ばせてみようかな」とか「どのタイミングで方言を使ったら覚えてくれるかな?」とか考えていたけれど、結局その頃に考えていたことはすべてやりそびれている。でも、普段私の口からぽろぽろと出てくる言葉をしっかり拾って、方言とも共通語とも分けずに覚えているようだ。「あが(痛い)」と「あいじゃ(濡れちゃった)」もマスターしつつある。
宮古ふつを真似するときは、いつも満面の笑みである。音の響きが楽しいのかもしれない。ひらがなで書けないような変な発音も多いし、難しいかな?と以前は思っていたが、文字を覚える以前の子どもにはそんなことは関係ないのである。
私としては、娘が方言の音を楽しんでくれていることが嬉しい。今月で2歳。二語文も上手になり、表現できることもどんどん増えてきた。言葉を覚えていく中で、宮古ふつにもちょこっと触れて、普段使う言葉との違いや類似を感じながら、表現豊かな子に育っていってほしいな、と最近は思っている。
◇あの話をもう一度
クイチャーマン(下地・与那覇出身)
「ヤマガギナうくす」vol.148 2007/5/17
ばが やらびぱだぬ ばんたが やーんな(私が幼少のころの我が家には)、ぴんざ(山羊)数匹と、ぬうま(馬)1頭が たつ(家畜小屋)にいた。とぅず(鶏)も みなか(庭)で放し飼いしていた。卵をよく産むといわれたレグホンという品種の鶏の名も記憶している。
4、5年生になると ぬーまやぴんざの草刈りをした。
「きゅうやんざんけーがいかでぃ」
(今日はどこへ行こうか)
「ちー、ヤマガギナうくすか」
(ヤマガギナを刈りに行こうよ)
などというのが、学校の帰り道の あぐ(同年の男の友人)たちとの会話であった。
ヤマガギナの生えている場所は、与那覇湾の西側の西北の長崎浜(ながさきばま)のモクマオウ林の中である。砂地を這うように茂る濃い緑色のふさ(草)がヤマガギナである。(学名とか、標準語名は分からないので、どなたかご存じの方は教えていただきたい)。
やらびぱだ、初めて「ヤマガギナうくす」という言葉を耳にしたときは、ヤマガギナがどのような状況で生えているかも分からなかった。それを「うくす(方言の直訳では“起こす”)」というのであるから、得体の知れない草が寝ているのを、ずざら(鎌)で うどぅるかして(脅して)起こすのだろうか。ばんめー ぴゃーぴゃーてぃー やまがぎのー うくしみーぶすむぬ(私も早くヤマガギナを起こしてみたい)と興味を抱いていた。
実際にヤマガギナと対面し、それを うくす作業を教えてもらったときは、いげー、あんしぬ ばーやたんなー(なあんだ、そんなことだったのか)と、がっかりした。
「うくす」というのは、ヤマガギナの生えている砂地に鎌を忍ばせるように押し入れ、糸のようなヤマガギナの根を、鎌で手前に軽く引くように刈り取る作業のことであった。方言の「うくす」には、持ち上げるという意味があり、ヤマガギナを軽く持ち上げるようにして刈り取るので「ヤマガギナうくす」という表現になったのだろう。
ヤマガギナうくすは、短時間で、簡単に、それなりの量の刈り入れが可能なため、よく出かけた。ヤマガギナうくすは、ふさかず(草刈り)の入門編だったのだ。
きわだってみずみずしいヤマガギナは、くせもので、鎌を入れると、ぬーまぬふそぅ(馬の糞)、いんぬふそぅ(犬の糞)などが隠れており、あんしぬ ふそーばー(そのような草は)馬や山羊は知っていて口にしないと教えられた。誰も刈り取らないのでいっそう青々と茂っているのだった。
自分が刈ってきた草を んまぎなり(美味しそうに)ぴんざが食するのを見るのは、ぷからすむぬ(嬉しいこと)であった。私は草をやりながら、ぴんざと仲良くなり、ぴんざの鳴き真似も上手になり、学級のレクレーションのとき、やらびぴんざから っさりぴんざ がみぬ(子山羊から発情期の山羊までの)鳴き真似を披露して周囲を あまーし(笑わせ)たりした。
ヤマガギナうくすは、私のかしい(手伝い)の原点として、んなまめー
(今でも)鮮明に思い出される。
あんすぅが(しかし)、数年前、長崎浜に行き、“お世話になった”ヤマガギナに逢いたくて、うまみーかまみーてぃー(ここそこを眺めて)探してみたが、あれから四十年余を経ており、一帯は足を踏み入れることができないほどの雑木林と化していた。
んぞーさーぬ きむんどぅ なずたーだら(残念な心持ちになったよ)。
宮古島文学賞
松谷初美(下地・高千穂出身)
宮古島市文化協会では本年度「宮古島文学賞」を創設。10月から1ヶ月間作品の募集を行う。
宮古には、んきゃーんから(古来より)口承文芸や英雄叙事詩などが継承されてきた土壌があり、文芸活動も幅広く行われてきた。
宮古における文学賞は、「文学の種まく人」と称された平良好児(たいらこうじ)氏(1911〜1996年)の遺志を継承し、宮古における文学活動に顕著な実績をあげた人を表彰する「平良好児賞」が1997年から開催されてきたが第18回で終了となった。(ちなみに『読めば宮古』は第7回平良好児賞を受賞している)
宮古島市文化協会には、「宮古に文学賞を」との声が多く寄せられるようになり、昨年、創設準備委員会を設立。宮古島市と宮古島市教育委員会からの支援を受け、新たな文学賞が誕生することとなった。
新しい事を始めるには産みの苦しみがつきものらしく(笑)、形ができるまでに時間がかかったが、先月、記者会見を開き公表した。
応募資格は不問。(島内外からどなたでも応募可能)。作品は短編小説で、純文学、児童文学、SF、歴史等ジャンルは問わない。テーマは「島」どこの島でも架空の島でも可。自由にあなたの「島」の物語を紡いでください。
選考委員には、作家椎名誠氏、児童文学者もりおみずき氏、文学紹介者の頭木弘樹氏のお三方。
一席:賞状・副賞(50万円)・記念品
二席:賞状・副賞(10万円)・記念品
佳作(若干名):賞状・記念品 となっている。
応募要領等の詳細は、宮古島市文化協会のホームページをご覧ください。やまかさ(たくさん)のご応募お待ちしています!
宮古島市文化協会HP http://miyakobunka.com/
宮古島文学賞のページ http://miyakobunka.com/prize.html
お問合せ:宮古島市文化協会 0980-76-6708
お知らせ
◆宝くじふるさとワクワク劇場in宮古島
落語家や漫才師、吉本新喜劇による豪華な爆笑ステージ!
日 時 | 2007年7月16日(日)開場:午後5時/開演:午後5時30分 |
場 所 | マティダ市民劇場 |
公演内容 | 第一部:お笑いオンステージ 第二部:ふるさと、わがまち あの人、この人 第三部:ほのぼのコメディ劇場 |
出 演 | 桂米助、ザ・ぼんち、ガレッジセール、ありんくりん ガリットチュウ、葛西聖司、チャーリー浜 他 |
入 場 | 2,000円(当日 2,500円) 6月1日前売り開始 |
入場券販売所 | TSUTAYA沖縄宮古島店 |
問い合わせ | 宮古島市教育委員会 生涯学習振興課 文化振興係 電話:0980-77-4947 |
編集後記
松谷初美(下地・高千穂出身)
先月18日から1週間、東京に行ってきました。30度近くまで上がった日もありましたが、湿度は低く、とても爽やかでした。
21日は、宮古方言研究会(新里教室)に久しぶりに参加しました。新里博先生、奥さんともお元気で、うむやすーうむやす(安心しました)。新里先生は今年94歳になられるそう。びっくりです。いっぱい肖りてきました。そして、今回の講義もなるほどーと思うことが やまかさ(多く)あり、大変勉強になりました。新しいメンバーも増え宮古方言に対する関心の高さも実感。課外授業も だいず うむっしでした(とても面白かった)。来年は新里教室のメンバーの中から「鳴りとぅゆんみゃ〜く方言大会」への出場がありそうですよ。楽しみです。
さて、今回の くま・かまぁ のーしが やたーがらやー?
Motocaさんとお嬢ちゃんのやりとり、いいですね〜。「はん!」には、思わず「そうそう!」と。そういえば最近聞かなくなりましたねー。それにしても内地で子育てをしながら子どもに、みゃーくふつをとは素晴らしい!今後どんな言葉を覚えていくか楽しみですね。
あの話をもう一度は、クイチャーマンさんの かしい(手伝い)の話をお届けしました。1960年代はどこにでも見られた風景だったと思いますが、子どもたちの家の手伝いの内容や周りの自然の風景、だいぶ変わってしまいましたね。心にとめておきたい光景、風景だなーと思いました。
「宮古島文学賞」について質問等ございましたら、お気軽にご連絡ください。たくさんの方に書いていただきたいと思っています。よろしくお願いします。
「宝くじふるさとワクワク劇場in宮古島」のチケットはきょうから発売です。なかなか見られない豪華キャストだと思います。この機会にぜひ!
貴方はどんな感想を持たれましたかー?感想をお寄せくださいね。
掲示板投稿も どんない(どしどし)お待ちしています!
きゅうまい しまいがみ ゆみふぃーさまい たんでぃがーたんでぃ!
(きょうも 最後まで 読んでくださり ありがとうございました!)
次号は6月15日(木)発行予定です。
きょうも笑いの多い一日でありますように! あつかー、またいら!