こんにちは〜。
春は天候が不安定なことが多いですね。 ぱだーぱだーうらまずなー(お元気ですか)?
今日もゆっくりとお楽しみください。
『ワイドー』は平和のこぶし
さどやませいこ(城辺・新城出身)
ピャウナ(東平安名岬)では、ちらほらとテッポウユリが咲き始め、島はまたアツい「トライアスロン」の季節を迎えた。今年は何と35回目の大会。あがいたんでぃ、あの飽きっぽい みゃーく(宮古)人のイメージは完全に払しょくされてしまった。「五(いつ)ぬ 指(ういび)ぁ 内(うつ)んかいどぅ折(ぶ)らい」(宮古の諺。5本の指は内に折れる。このことは身内のことをさし、同時に同胞の結束を表現している)人頭税を撤廃させた結束力は、今スポーツとして息づいている。
第1回大会が開催された当時は、地元新聞社に勤めていて、取材というかたちで参加した。当時、聞きなれないスポーツ名は、大混乱の内に展開した。まず、島中に動員された警察官が物々しく交通整理、ほぼ一日中コース内での車の通行は禁止。取材陣はバイクで移動し、とにかく緊張のうちにスイム、バイク、ランを取材、記事を書き始めたのは、競技を終えた九時以降だった。
何より当時の取材は、写真はモノクロ、記事は指定の原稿用紙に書くという、アナログな世界での作業だったので今の5、6倍もの時間がかかった。
当時の話で今、思い出すだけでも肝の冷える話がある。午前4時に記事と写真を出稿してフラフラ家に帰り、床に就こうとしたら編集長から電話。私の写真が1枚足りないという。慌てて会社に戻り、フィルムから探すというアクシデント。35年経った今でも忘れることはできない。
第7回大会に、沖縄県宮古郷友文化協会の主催で「大世栄綾船(うぷゆーぱいあやぶに)ー宮古島人頭税物語」が平良市民会館(現在の宮古神社のある場所)で上演された。これは、トライアスロンを成功させようと旗揚げしたもので、故真喜屋恵義会長は「島を挙げて繰り広げられるボランティアの精神と農民が結束して勝ち取った人頭税撤廃運動のあのエネルギーが似通っている」と話し、大きな話題を呼んだ。
この大会からさらに競技の距離も延び、NHKは第1回に次いで生中継の全国放送を実施した。
人頭税の頃の結束のこぶしは「アララガマ」(自分を鼓舞する言葉)だったが、スポーツの祭典トライアスロンでの応援は「ワイドー」(頑張って)となった。
◇あの話をもう一度
與那覇 淳(平良・鏡原出身)
「やぐみこと」 vol.288 2013/3/21
今年は宮古民謡界で一つの歴史がつくられました。
地元紙でも大きく取り上げられましたのでご存じの方が多いと思いますが、それは、宮古の代表的な民謡「とうがにあやぐ」の歌碑が建立されたことです。うかーす やぐみ(大変、素晴らしい)ことです。
「さんしんの日」の3月4日にカママ嶺公園で歌碑の除幕式が行われました。この歌碑は沖縄宮古民謡協会の設立40周年記念事業として建立されたもので、沖縄宮古郷友連合会、それに地元の宮古島市、宮古民謡保存協会、宮古民謡協会が協力して除幕式の日を迎えました。
郷友ら70人の見守る中で、関係団体の代表らの手によって幕が下ろされ、歌碑がお披露目されました。続いて「とうがにあやぐ」の演奏が奉納され、記念碑の建立を祝いました。
この歌は、ほとんど三番まで歌われますが、歌詞は全部で九番まであります。一番が「御主が世」、二番「宮古のあやぐ」、三番「家運繁盛」、四番「お正月」、五番「子宝」、六番「結婚祝」、七番「夫婦相和」、八番「子孫繁盛」、そして九番が「慶事を祝う」で、宮古の主長のもとに暮らす人々の平安への願いが格調高くうたわれています。
この歌詞の五番「子宝」は、「黄金(くがに)白銀(なんざ)ぬ大家(うぷや)まい 家(や)桁(ぎた)んつき満(ん)て俵(たあら)ぬ山(やま)まい較(くら)びやならんよ 子宝(ふふぁだから)ど生(な)しぶら宝(たから)ど此(く)ぬ宝(たから)よ」(黄金白銀の大きな家でも家桁に付き満てる程の俵の山も較べることはできない 子宝を生み育てた宝がこの世の宝だよ)と歌われます。
この歌詞から万葉集のなかで山上憶良がうたっている歌が思い起こされます。
「銀(しろがね)も金(くろがね)も玉も何せむに勝れる宝 子に及(し)かめやも」
これは銀も金も玉として何の役に立とう。優れた宝も子に及ぶことなどあろうか、と子宝を称賛しており、「とうがにあやぐ」の五番の歌詞と酷似しています。
もうひとつ、私が好きな歌詞は七番の「夫婦相和」です。
「松木(まつぎ)が葉(ぱ)やまん すうんざぎむぬ 枯(か)り落(うてぃ)すきやまい前向(まうきゃ)どうりよ ばんたまい 宮古(みゃーく)となぎ 前向(まうきゃ)どうすうでよ」(松の葉はうらやましいものよ枯れて落ちるまでも向いあっているよ 私たちもこの世のある限り向いあっていようよ)
マツは分類上、五葉松類と二葉松類に大別されるようで、針状の葉が五枚束になっているのが五葉松類で二枚づつ束になっているのが二葉松類だということです。琉球松は二葉松類に属するということです。
「とうがにあやぐ」の五番では、松の二葉に寄せて初々しい夫婦の心情がうたわれています。この歌詞は宮古研究の先駆者といわれるニコライ・A・ネフスキーも大変気に入ったようで知人に書いて贈ったと伝えられています。(参考文献:ニコライ・A・ネフスキー生誕120年記念シンポジウム報告書「虹とみやこ」発行・同実行委員会)
この「とうがにあやぐ」がいつの時代につくられたのか分からないが、これほど文学性に優れた叙情歌を生んだ宮古の先人たちを誇りに思います。そして、それを歌碑として残したことは宮古民謡史だけでなく、宮古史に残る、うかーす やぐみことだと思います。
風のオーケストラ
松谷初美(下地・高千穂出身)
実家から歩いて2分とかからないところに住んでいる。すとぅむてぃ しゃーか(朝早く)、母を見に実家に行くのだが、この2分とかからない道のりの中で、木々や草花や鳥や蝶々、空や風や太陽の変化を楽しんでいる。
んなまずんな(今頃の時季は)、サンニン(月桃)の花がたくさん咲き、百合やグラジオラスの赤い花も見える。あ、くちなしの花はそろそろ終わりのようだ。地面を見れば、オニタビラコやギシギシ、ハルノノゲシ、テリミノイヌホウズキなどが生えていて見ているだけで楽しい。ニィニィゼミも鳴き始めた。そろそろ暑い夏がやってくるぞ。
先日、いつものように実家の前まで来ると、風の音がサーっと聞こえた。ん?と思い、前のキビ畑を見ると、昨年の夏に植えたであろう、まだ背の低いサトウキビの葉が、一部だけそよいだ。へぇー、うむっし(面白い)と見ていると、今度は反対側のキビの葉が遅れて揺れた。そして、次はみんな一斉に揺れた。小さいささやきから大きな音へと変わり、また波動していく。
これは何??同じ畑の中で風の流れが違う??とても不思議な光景。でもなんだか楽しい。まるで風のオーケストラ。誰かがキビ畑でタクトを振っているかのようだ。子供の頃から見ているキビ畑だが、初めての経験だった。
毎日、見ている風景も見逃していることはいっぱいあるのだろうと思う。そして、人が知らない世界で、きっといろいろなことが行われている。そんなものに少しでも触れられたら、幸せな気持ちになる。
さぁ、きょうも実家に行くまでの間に、のーがらーぬ(何かが)見つかるかもしれない。ゆっくりと歩いて行こう。
お知らせ
棚原芳和(宮古民謡協会事務局長)
■「第5回とうがにあやぐ大会」開催
第5回とうがにあやぐ大会(主催:沖縄宮古民謡協会、宮古民謡協会、宮古民謡保存協会)を、来る4月21日に開催します。
「とうがにあやぐ」は宮古の先人たちが残した貴重な芸能文化の遺産であり古くから祝宴の席等めでたいところで歌われてきました。島の繁栄や家庭の繁栄を願った歌詞には宮古の人々の想い、並びに世界観が表れているとされています。大切に歌い継がれてきた「とうがにあやぐ」の素晴らしさを再認識し、その保存、継承と芸能文化の普及発展を目的として「とうがにあやぐ大会」を開催します。
日 時 | 2019年4月21日(日)午後5時 |
場 所 | カママミネ公園(雨天の場合、JAホール) |
入 場 | 無料 |
どなたでも入場できます。きしみーるよー(来てみてくださいね)
編集後記
松谷初美(下地・高千穂出身)
去る4月14日(日)、第35回全日本トライアスロン大会が行われました。当日は早朝からどしゃぶりの雨。7時からのスタートは、15分遅れとなりました。しかしスイムが終わるころには晴れ間がのぞき、日中は汗ばむ陽気となりました。選手の皆さんは、体調管理が大変だったと思います。
沿道は、パーランクーを持った応援団やクイチャーで応援する団体、吹奏楽の演奏で応援する人々でいっぱいでした。私も知り合いの応援で、うまかま回りました。交通規制があるので裏道を通り、エフエムみやことネットで状況を確認。先回りをして待って声掛けしました。残念ながら完走できませんでしたが、挑戦することに意義があるんですよね。来年も楽しみです。皆さん、お疲れ様でした!
さて、今回のくま・かまぁ のーしが やたーがらやー?
せいこさんは、この時季ぴったりのトライアスロン大会のお話でした。始まりの頃の状況をよくご存知なんですね。「聞きなれないスポーツ名」、確かに。今でこそメジャーですけど、最初はそうだったことでしょうね。結束力があるからできる大会だと応援していても思います。
あの話をもう一度は、4月21日に行われる「第5回とうがにあやぐ大会」に合わせて掲載いたしました。淳さんの話を読んで見に行くとより理解が深まりますね。とうがにあやぐは、本当に素晴らしい歌です。その碑が建立されたのは まーんてぃ やぐみくとぅやー(素晴らしいことですね)。
うちから実家までの短い距離を自転車で通っていた時もありましたが、笑歩くようになってゆっくりと周りの自然を楽しめるようになりました。子どもの頃からの場所ですが、今回の風の動きは初めて見ました。
ばんたが(我らの)マツカニさんこと棚原芳和さんよりお知らせのあった第5回とうがにあやぐ大会は、今度の日曜日ですね。私は司会をします。お近くの方はぜひ、足をお運びください。
貴方の感想もぜひお寄せくださいね。まちうんどー(待っていますよ〜)
今回まい しまいがみ ゆみふぃーさまい たんでぃがーたんでぃ〜〜。
(今回も最後までお読みくださりありがとうございました)
次号は、5月2日(木)発行予定です。
がんづぅかり うらあちよー(お元気でー) あつかー、またいら〜。