くまから・かまから vol.111

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 みなさん、こんにちは〜。 文化の日、いかがお過ごしですかー?
 さぁ、くま・かまも文化の かざがま(香り)がするはずよ。
 vol.111お楽しみください〜。

初めて物語

ざうかに(平良市宮原出身)

<僕の730(ななさんまる)>

 僕が宮古島を離れた頃は、車は右側通行だった。運転免許を取ったのもその頃である。初めて内地で車を運転したときの話。

 ある日、僕は会社の車にガソリンを入れるべく車に乗り込んだ。幸いガソリンスタンドは、すぐ近くにあったので、無事に入る事はできた。ガソリンも満タンにして、さあ帰ろう思い、道路に出て車を走らせた。「あば?来た時よりも車がすいているな」と思ったのもつかのま、な、なんと信号の向こうから、だいず やまかさぬ(すごくたくさんの)車が、僕に向かってくるではないか。「アガイタンデイ のうしぬ ばあ りゃ(ああ、どういうことだー)」と思いながら、路地へ逃げ込んだ。

 よく、よく考えてみると、あんちぬばあ(そういうこと)だった。そう、僕の車は、右側を走っていたのである。穴がない、穴がない、(あぶない、あぶない)これが僕の、730である。

 ※沖縄は本土復帰から6年後の1978年7月30日に車は左側通行になった。7月30日にちなんで、「ななさんまる」と呼ぶ。
 
<銭湯>

 僕が子供の頃は、風呂なんか入ったことはなかったと思う。もちろん体は洗いました。これを水浴びと言っていました。

 さて、身も心もきれいな、なばたかり(垢だらけ)青年が初めて、内地で銭湯へ行ったときの話である。

 仕事仲間に誘われて銭湯という所へ行ってみた。まず目についたのが、番台のおねえさんだった。なんで女の人がいるの? だけど、みんな気にする事なく服を脱ぎ始めるではないか。そのうちみんな、ぴさがなありて(丸裸で)洗い場の方へいってしまった。
 
 しょうがなく、僕も度胸を出して脱ぎはじめた。まず上半身は脱げた。次、ズボンを脱ごうとすると番台のおねえさんと目が合ってしまった。「のうていが、ばぬう、みいうがあ(どうして 僕を 見ているかよー)と思いながら、ゆっくりと脱いだ。

 さあ、いよいよ最後の一枚である。僕は人前で ぴさが(丸裸)になったことはない。当然見られた事もない。どうしてもあの番台が気になる。なんかいい方法はないものかと考えたあげく、「そうだ、タオルがあるではないか」、そのタオルを腰にまいて、そーっと、そーっと、番台を気にしながら最後の一枚を降ろしにかかった。一応番台をも みいみいとして(チラチラ見て)、片足ずつ脱いでいった。足首までおろせた。しめしめうまくいったと思い腰をかがめたその時である。タオルが、虎の子のタオルがなんと僕の大事なあのタオルが落ちてしまったのである。

 どうしよう、はずかしい、おしまいだ。おもわず番台を見た。幸い目は合わなかった。でも見られたかも、いや見たにちがいない、もしかして僕のすべてを見た初めての女?

ミャークフツ講座 連声(れんじょう)編

ひさぼう(平良市西仲出身)

 アメリカに行ったら、バスを降りるとき「アゲドーフ(揚げ豆腐)」と言わないと、バスを停めてくれないらしい。これを、学校で習ったとおり「アイ・ゲット・オフ(I get off )」などと言っていたら、ゼッタイ降りられないという。 

 言葉の前後のつながりで、もとの言葉が全然違う風に発音されるということ(連声)は、日本語でもある。例えば、観音様のかんおんは、カンノンと読むし、云々は、うんうんではなくウンヌンである。また、トイレの雪隠は、せついんであるのに、セッチンと言う。
 
 こういう、前の音と後の音がくっついて、別の発音になるということがミャークフツには多い。しかもかなりややこしい。以下は、くまかま vol. 84(助詞「は」と「を」の使い方)の続編で、前音と後音が融合して、発音が変わる、という視点で考えてみた。

標準語ミャークフツ主 語
花 は 赤花ぱな あ あかばなぱな(PANA)
酒 は 命さきゃあ んぬつさき(SAKI)
箱 は 四角ぱこ お しかくぱく(PAKU)
星 は 知っているぷっさ っしどうずぷす(ス)
熱 は ないにっつあ にゃあんにつ(ツ)
寄付 は ないきっふぁ にゃあんきふ(フ)
波 は 荒いなん ま あらあ あらなむ(NAM)
犬 は 吠えるいん な ぶい どうすいん(IN)

 このように、前の主語の語尾によって、後ろの「は」の言い方が違ってくるし、主語も影響を受けている。「を」の場合も同じ。

標準語ミャークフツ主 語
花 を 活けるぱのお いきずぱな(PANA)
酒 を 持って来いさきゅう むち くーさき(SAKI)
箱 を 作るぱこ お しかくぱく(PAKU)
星 を 見上げるぷっすう みゃあぎずぷす(ス)
熱 を 計るにっつう ぱかずにつ(ツ)
寄付  を 集めるきっふ うぐないずきふ(フ)
波 を 見るなん む みいずなむ(NAM)
犬 を 連れていけいん ぬ さーりーいきいん(IN)

 以上、ミャークフツの「は」と「を」の言い方は、ややこしいようだけれども、前の主語・目的語の語尾によって規則的に変わっていることがわかる。つまり、語尾が、A、I、U、ス、ツ、フ、M、N のどれになっているかによって、「は(WA)」と「を」の言い方が違ってくる。その中で、五十音のウ行(う・く・す・つ・ぬ・ふ・む・ゆ・る)は特徴があって、ス、ツ、フ、は、つまって、小さい っ になる。また、「ん」は、使い分けて、波(なん)、神(かん)網(あん)、芋(ん)などは、M で、犬(いん)、恩(うん)、金(じん)門(むん)などは、N である。

 実際に、くいゆ いだし つかいわき しーみーさーち(声を出して、使い分けしてみて下さい。)

宮古スピリッツ 佐久川洋子さん

松谷初美(下地町出身)

 うわー んにゃ ゆんでぃすたー?(あなたはもう読みましたかー)
 宮古のギャグ満載の「宮古スピリッツ」という漫画。2003年9月に第1号が出て、口コミで広がり、現在4号まで発行されている。4号合わせて全部で8000部出ているというから、すごい人気である。

 強烈なキャラたちから飛び出す、宮古精神満載の言葉や出来事は、身に覚えのあることが だう(たくさん)あり、思わず、「ぶっ」と吹き出してしまう。

 「やましたですか?」「いえ木下です」の、古典的ギャグや、テレビのレポター「那須記者」を「なすきしゃ(末っ子)」だろうかと思ってしまう、最近のギャグ?も やまかさ(たくさん)! だいずばかーず(ものすごく)笑わせてくれる。
 
 漫画を描いているのは、平良出身、現在は上野に住んでいる佐久川洋子さん。1960年生まれというから、年は さんみん(計算)してね。洋子さんは、みゃーくふつが聞けるのは、50パーセントくらいかなーと言う。正確には理解していないことも多いはずよとも。辞書や友人たちが洋子さんを助けているようだ。

 洋子さんは、子供の頃から漫画が大好きだった。以前から宮古の話をネタにしたら面白いだろうなーと思っていたのだそう。しかし、いつも、何かをやりたいと思いながらも、何も行動を起こさずに過ごしていた。40代に入り、急がなくちゃ先がない!という焦りが行動を起こさせた。9.11の同時多発テロにも、かなり衝撃を受け、今やらなければという思いに火をつけた。2003年台風マエミーが吹き荒れる中、その年の6月ごろから描き始めた原稿を仕上げ、9月27日に、待望の1号を発行した。

 漫画はすべてパソコンで描いている。1号を出したところ、こんなのもあるよーとネタを提供するメールがたくさん届いた。それらの投稿を基に漫画を起こし、この2年近くの間に 2号、3号、4号と発行した。アカの他人が「面白かったよー」とコンタクトしてくれることが一番うれしいという。

 読んでいて、洋子さんのセンスは、すごいなーとつくづく思う。女性ではなかなかいない切り口じゃないでしょうか。(実際最初のころは、書いているのは男性かと思っていた)おふざけな部分も、クールに見るところも、実は繊細でナイーブなところも、私は大好きだ。時々吐露する言葉がまた、うむっしなんだよね。

 落ち込んだときや、嫌なことがあったときは、「宮古スピリッツ」をぜひ読もう。どーんと沈んだ気持ちも、くさくさした気持ちも吹き飛ばしてくれること間違いなし!もちろんそうじゃない時でも、上等さ〜。

 洋子さんの夢は、発表した作品だけで、生計が立てられるようになることだそうだ。そのためにきょうもパソコンに向かいせっせと原稿を書く。そろそろ5号の発売も近いかも。

 ホームページもぜひご覧くださいね。新鮮なネタもまだまだ募集中!

 「宮古スピリッツ」は、1冊525円。ブックボックス(沖縄本島も)などで買えます。空港の売店などにも置いています。まだの方、さーてぃ みーみーるよー(見てみてね)。

「宮古スピリッツ」
 http://www2.miyako-ma.jp/spirits/

兄を想って書いた兄の詩8 ボクのことば辞典

ワタリマリ(上野村出身)

 この詩は、脳性マヒの あざ(兄)を想って書いたものです。

 ボクのことば辞典

 ボクには限りなく少ないが発することばがある
 ボクとボクの家族だけに通用することば
 ボクのたくさんの思いは
 ボクのこの限られたことばに凝縮されている
 「ん・ぐ」は水
 「あー」は食べ物の催促
 「ん・ま」は食事とかあちゃんとに使い分け
 「ん」は了承
 「ん・ば」は拒否と否定
 「いーえ〜」は怒りと喜びに使い分け
 夜中にのどが渇いて「ん・ぐ」とさけぶ
 妹たちは起こされるのがたまらんと
 ブツブツ言いながらボクの世話をなすりつける
 「ん・ぐ、ん・ぐ・・・・ん・ぐ」
 なかなかきてくれない妹たちに怒りそうになる
 ボクの世話はしっかりしろ!とね
 それになにやらおいしそうなものがあるとき
 妹たちはボクに隠して食べようとする
 そうはさせないぞ ボクの嗅覚は動物並 
 「あー」とさけぶと
 「あっかいんにゃ みいらいにゃあん
 (しまった 見られちゃった)」と妹
 家族の皆さん、特に妹たち 
 おいしいものはみんなで分けて食べましょうねえ
 おなかが空いているときは「ん・ま」と訴える
 哀しいときやさびしいときにも「ん・ま」
 家族の者たちはボクの表情と
 声の調子から「ん・ま」の意味を読み取る
 「やーすうぬ(お腹すいた)?」とか
 「かあちゃんぬちな(お母さんのこと)?」とか
 夜中にボクが「ん・ま」と呼べば
 今度は母ちゃんはすぐに来てくれる
 寒かったり、どこか痛いときには
 「ん・ま」で要求が伝えられた
 母ちゃんは誰よりもぼくのことが大事だからね
 長男は大事にしないと
 ボクは結構かたくななところがあって
 どうしても自分の気持ちを曲げたくないときがある
 そのときのために「ん・ば」の一言は便利だ 
 嫌いな人がボクに対してあれこれ言ってくるけれど
 ボクはやっぱり「ん・ば」と受け入れない 
 妹たちは冗談で すんたあぬ(死にたい)?と
 聞いてくることもあるが答えは「ん・ば」
 ときどき「ん・」になるときもあるけれど
 それはボクの冗談さあ
 ボクのことばはたったこれだけ
 汚いことばもない
 やさしいことばもない
 うそも偽りもない 
 なんというシンプル 
 ボクの世界ではこれで十分
 何よりもボクとボクの家族の絆は
 このことば辞典のおかげで強くむすばれているのだから

お便りコーナー

宜野湾市在住 屋宜さんより

 お久しぶりです。前号の菜の花さんの「繋がり」は昨年姉を亡くした自分としては母親の気持ちを今一度推し測れよと言われているようで涙を堪えるのに必死でしたよ。

 神童さんは相変わらず色々な体験を語ってくれて楽しく読ませてもらいました。「来年は絶対に・・・」と括っていますがやるんでしょうね来年も・・・きっと。

 ※コラムのひとつひとつが心の奥底まで届いていると思うと、まーんてぃぷからすむぬです。屋宜さん、お便りたんでぃーがーたんでぃ〜。

おしらせ

松谷初美(下地町出身)

アガイダンディーズのライブが今月もありますよ〜。

●アガイダンディーズ@わしたショップ大和店

日 時2005年11月19日(土)
午後1時〜2時 午後4時〜5時 の2回
場 所わしたショップ大和店(がんじゅう亭)
神奈川県大和市深見東1-2-36

 ●以前おしらせした11月12日の大和市産業フェアライブの時間が変更になりましたので改めておしらせしますねー。午後3時〜4時ごろとお伝えしましたが、午後2時30分からだそうです。

日 時2005年11月12日(土)午後2時30分〜
場 所小田急線大和駅前広場西側プロムナードステージ

 どちらも入場無料です。ぜひおでかけくださいね〜。
 ばんまい いき゜がまた(私も行くべきさー)

編集後記

松谷初美(下地町出身)

 vol.111、のーしがやたーがらー(いかがでしたかー)?文化ぬ かざあーっすたーびゃー(文化の香りはしたかなー)?(笑)

 笑いあり、ジーンとくるものあり、なるほどーと思うものあり、だったんじゃないかなーと思っています。

 ざうかにさんにも、純情な頃があったんですねー。(笑)ざうかにさんは、「初めてシリーズ」のネタが結構ありそうですよ。お風呂の話も続きがあるのだとか。どうぞお楽しみに!

 ひさぼうさんの分かりやすい、ミャークフツ講座。今回の解説も「なるほどあんちぬばーな(そういうことかー)」と、ひざを打ったかたも多いのではないでしょうか。意識してしゃべるとまた面白さが増しますね。
 
 佐久川洋子さんとは、さどやませいこさんのお店「とぅんからや」でお会いしました。(せいこさんが二人を繋げてくれました。)宮古かーぎ(顔)で、だいず美人の洋子さんでしたが、くきーくきした(気取った)ところがなく、初めて会ったにも関わらず、懐かしい感じのする素敵な方でした。2時間あまりもしゃべりまくり、楽しい時間を過ごしました。洋子さん、これからの活躍も期待しています!

 ワタリマリの「ボクのことば辞典」胸に迫りますね。言葉の本来の役割、人と人を繋ぐという基本がそこにあり、言葉の重みと、お兄さんの強さと優しさが伝わってきました。

 みなさんからの感想、励ましが、ライターの明日へのコラムへと繋ぎます。ぜひぜひ、メールをお寄せくださいませ。

 あて先のメールアドレスが下記に変更になりました。どうぞよろしくお願いします。

 次号は、11月17日(木)発行予定です。あつかー、またいらー。
 きゅうまい がんずーやしー うらあちよー(きょうもお元気で〜)