春は名のみの風の寒さや?。あば、正月ぬ おわずたーびゃーてぃ うむーちか 立春てぃー。あすが、まだ ぴしむぬー。皆さん、ぞーかり うらまんなー。
(あれ、正月が終わったと思っていたら、立春。でもまだ寒いですよねー。皆さん、お元気ですかー。)
今回は、海のぱなす(話)と、さとーきびのぱなす。
『たこを取るカニ』
のり坊
「ノリ坊、アツァ、タクトウトゥガ、マーツキイカデナ」
(明日たこを取りに一緒に行くか)
ウプゥヤ(叔父さん)の誘いに僕は、イイバー(やったー)と小躍りするほど喜んだ。インシャー(漁師)のウプゥヤが初めて漁に連れて行ってくれるのである。断るはずがない。
翌日、ウプゥヤのサバニ(舟)が係留されている第二桟橋(現在のマティダ劇場辺り。昔は天然の入り江があり、砂浜もあった)から僕とウプゥヤは、サバニに乗り込んだ。サバニには、モーターが付いていたが、舵は付いていなかった。舵を取るのは、ウプゥヤの手にする一本のイザク(櫂)である。エンジンに火が入った。出航である。エンジンの回転音が高くなった。小学校五年生の僕の胸も高鳴った。
漁場は、パイナガマの沖合いで、長崎(パイナガマの左側の岬を僕達は、そう呼んでいた)の100mほど先である。エンジンを止め、アンカーを下ろす場所を探す。水深5m程だろうか。水は澄み切っていてサバニの上からでも砂地と岩場の区別がはっきりと付く。
「タクゥ チャンキ クウバマチウリヨー ノリ坊」
(たこを刺してくるからまってろよ)
言ったと同時にウプゥヤは、パンツまで脱いで素っ裸になった。そして、顔にインミガニ(水中ネガネ)を装着し、手にはウギャン(モリ)をもって海へと飛び込んだ。しかしこれで謎が解けた。ウプゥヤの色の黒さにはパンツの境目がないわけである。
ひとり海上に残された僕は、だんだん心細くなってきた。いくらたってもウプゥヤが海面に現れないのだ。まさかウプゥヤが溺れた?やっと海面に現れたウプゥヤは、手にたこの刺さったウギャンを持っていた。実際には3分から5分くらいだったようだが、僕にはすごく長く感じられた。何度かサバニを移動しながら、同じように漁を続けた。しかし、錘も足ひれも付けずによくあれだけ潜れるものである。イギャン!(感嘆!)
この日、何匹たこが取れたのか、今ではまったく記憶に無い。タグゥミガニで覗いた海底の美しさと、ウプゥヤの色の黒さだけが目に焼きついている。
あのウプゥヤは、もういない。あのサバニも朽ち果てた。そして、ウプゥヤのあの漁場のあのときの輝きも、今はもうない。
※タイトルの「たこを取るカニ」のカニはウプゥヤの名前です。
『宮古のことわざ』
〔 松木ぬ芯ぬ立たんきゃや 二月風回いすあ済まいん 〕
マツギィヌ スンヌタタンキャヤ
ニガツカジマアイスア スマイン
松の若葉が出てこないうちは 二月風回り(季節風)は完全に終わらない。二月風回りは 急に天候が変わり、大風が吹き荒れたりするので特に漁師は用心した。昔の人たちは自然を観察することでそれを生活の知恵とした。
んきゃーんじゅく 佐渡山政子/編 より
『学校がない 宮島分校編』
神童
日本地図について。
同級生に ヒコ坊というのがいる。
まず、さとうきびの話をしなくてはいけない。さとうきびは畑から刈り出されたあと、アギトラック(ダンプカーをそう言っていた)に積み込まれ、製糖工場で汁をしぼられ、煮立てられ、ふっふぉふぬ(黒い)ミルク状、もしくは茶色のザラメの状態で宮古島を離れ、内地に行って、白い砂糖(グラニュー糖)になる。
宮古圏域では、唯一、宮古製糖多良間工場が固まりとして黒糖(含ミツ糖と言うらしい、ほとんど土みたいなもの)を作っている。日本料理のかくし味として高値で取引されるという。これは工場の規模で製糖内容が決まっているようである。「高値取引だから宮糖砂川工場でも作れ」ということではないそうである。その他に和菓子のトッピング等に用いられる和三盆(わさんぼん)というのがあるが、これは四国あたりで作られている。
さとうきびは、製糖工場から、6tダンプトラックにザラメの状態で積み出され平良港で船に積まれて、内地の製糖工場へと向かう。この際、ダンプトラックの荷台には、少量の(バーキ<かご>5コ分くらい)ザラメが残っているが、やらび(子供)たちは、その残ったザラメを集めるためにそのダンプカーに群がるのであった。
そのダンプカーの持ち主は、ヒコ坊のおじさんで、川○○蔵と言う。ヒコ坊が友人数人とザラメをかき集めている時に、そのダンプカーが動き出してしまったのである。ヒコ坊を除く、友人はダンプカーの荷台から飛び降りたのだが、ヒコ坊は荷台に残されたまま、島尻販売店から宮島分校を左手に見ながら、島尻の集落から遠ざかって行ったのであった。
ここまで読んで日本地図との関連は、発見できましたか?
次号へ続きます。
『ミャークフツ講座?キ゜ム(肝)・バタ(腹)編』
Hatsumi.M
日本語の中にも「肝」や「腹」がつくことばにはいろいろあるが(例えば、肝だめし、肝心、腹が立つ、腹黒いなどなど)ミャークフツにも同じような表現がある。
- キ゜ム (肝) = 心・気持ち
- キ゜ムカギ = 心がきれい
- キ゜ムヤム(肝病む) = 気にする、心を痛める
- キ゜ムイディ = 怒る、へそを曲げる
- キ゜ムタカリ = 少しの事で、すぐ怒る
- キ゜ムガジャガジャ = 心が乱れる、いらいら、わさわさ。
- バタフサリ(腹が腐る)= 腹が立つこと
- バタゴーゴー = 腹いっぱいで苦しい
- バタフッズ = おちょくること
※フッズとは、ほじくる、かき回すという意で相手の腹の中をかき回してイライラさせる感じ。
『編集後記』
あの頃の海と今はどれくらい変わったのだろう。。バンタガオトウマイ(私たちの父も)昔は、松明をもって、夜、海に出ていた。朝になると、アズュ(アイゴ)やたこやカニ、グルクン(カサゴ)がやまかさ(たくさん)かごになーあった。んきゃふ(海ぶどう)も川満の海でやまかさなー採れたのに、今は1パック450円。んびゃーいん。
神童の日本地図の話、さとうきびからどうやって日本地図の話になるでしょか。次号をお楽しみに。
次号は、2月21日(木)の予定です。