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くまから・かまから vol. 245

2021 5/11
メールマガジン
2011年6月2日2021年5月11日

こんにちは〜。6月になりましたね。
先月は台風2号が宮古に上陸して、だいずな被害がでました。お見舞い申し上げます。
今月は何事もなくおだやかでありますように!
vol.245お届けでーす。

目次

指笛の季節

クイチャーマン(下地・与那覇出身)

「指笛の季節」というのがある。夏である。

のーはーがらいら(なんでだろうねぇ)
のーてぃーの つみゃーんが あんし あーがらいら
(どういう理由でそう言うのかねぇ)

理由は、読者の想定内だと思うが、主なものをいくつか挙げてみよう。

まず、指笛を全国民にアピールする季節と言えば夏の高校野球である。甲子園の沖縄側のアルプススタンドの応援の指笛は、ずみ!(最高!)。テレビ、ラジオを通じて、んざがみめー なりゃー ぴーぴー(どこまでも鳴り響いていく)。春のセンバツには、沖縄代表が出場するとは限らないが、夏は確実なのだ。

次にエイサーとの関係だ。

旧盆はだいたい8月中旬にあたる。その本番に向けて、各地で盆踊りのエイサーの練習が繰り広げられる。全島エイサー祭りなどもその頃だ。エイサーの醍醐味を引き立てるのが指笛である。

クイチャーとの関わりはどうだろうか。

クイチャーあーぐ(クイチャーの歌)には雨乞いの内容も多い。夏のぴゃーす゜(旱魃=かんばつ)のときに、雨乞いのクイチャーを踊るときの指笛が、みんなの願いを天の雨の神様に運ぶのだ。

昔から「ハーリーがに(鉦=かね=)が鳴ると梅雨が明ける」とも言われるが、櫂(かい)で果敢にサバニを漕ぐ人達に、岸から送られる指笛は、彼らの底力を引き出し、競漕を盛り上げる。梅雨が明ければ本格的な夏の到来だ。

ところで、私が子供の頃、ゆなぱ(与那覇)の かいば(公民館)で遊びの中で先輩から教えてもらった指笛の吹き方は、人差し指を7の字に曲げて、舌の上に乗せ、口に含んで鳴らす方法だった。現在、全国的に指笛で音楽を演奏している人たちの吹き方も全く同じである。吹き方は他にもあるが、指笛は10本の指の組み合わせで吹き鳴らせる。

指笛の季節は夏、吹き方などを総合勘案して、指笛王国おきなわが提唱して、7月10日を「指笛の日」として5年前に制定し、県内では定着しつつある。今年も「指笛の日」記念のイベントに向けて準備を進めている。

今年は「指笛の過去・現在・未来」と銘打ち、東日本大震災との関連もふくめ「災害、緊急時にも役立つ指笛の普及を」とも位置付けたフォーラムを予定している。

あんしぬばーやりばどぅ ばー んなまからー ぱんたふとぅ なーぱず。
(そういう訳なので、私は、これからは 忙しくなるはず)

※ゆなぱ(与那覇)の方言では、指笛のことを「てぃびー」と言います。直訳では、指の笛というよりも「手の笛」という感じですね。読者の皆様の地域ではなんというのでしょうか。教えてください。

兄と葉タバコ

松谷初美(下地・高千穂出身)

実家は葉タバコ農家だ。父の代から始めて50年近くになる。

今回の台風2号の襲来で、葉タバコは収穫半ばで全滅となってしまった。かける言葉が見つからなかったが、兄(55歳)は「来年になったらまた作れるし、大変だけど、なんとかやっていくさー。落ち込んでいても始まらない」と明るく話す。

兄が父の跡をついで農業をするようになって13年。すっかり農業人である。実は、兄が本格的に農業をするようになるとは、うむいや つーんみーったん(思ってもみなかった)

兄は中学を卒業すると沖縄本島にある工業高校に進んだ。絵が上手でその年に開設されたというデザイン科に入った。しかし、家元を離れた兄は、すっかりハメをはずし、親はたびたび呼び出しをくらう。(呼び出しと言っても沖縄本島まで行かなければいけないのだ。)それでも、直らず、とうとう退学となってしまった。その時父は職員室で兄の顔を殴ったそうである。(のちに兄は、この時のことを殴られて良かったと話している)

その後、兄はロックに夢中になりバンド活動をするようになる。沖縄では結構有名なギタリストになったらしい。

それから、結婚をして東京で暮したりしていたが、宮古に戻り、しばらくして離婚。職も転々とした。その時々で農業の手伝いをすることもあったが、本格的にやるということはなかった。

父とはなかなかソリが合わず、家も出たり入ったり。それが、現在の奥さん(Mちゃん)と結婚をする際、農業をさせてほしいと父に頭をさげたそうだ。兄42歳の時である。

父も最初は、続くのかと心配したようだが、ふたを開けてみれば想像はまったく違っていた。兄はもちろん、大阪出身のMちゃんも畑に入り、泥まみれになって働いているという。馴れないながら一生懸命やるMちゃんに父は目を細め、私にも「すぐとまい ぴゃーむぬ(仕事も早いよ)」と自慢する。まじめに働く二人に、父は跡を継がせることを決めたのだった。

兄が家を継ぎ、孫も生まれ、我家にはたくさんの幸せが運ばれた。両親は、兄の農業はまだまだだと思うことも多いようだが、うむやすーうむやす(安堵)している部分も大きいんだろうと思う。今はすっかり二人にまかせ、孫の世話とグランドゴルフやゲートボウルを楽しんでいる。

台風で被害が出ても私は あがた(遠く)から しわ(心配)することしかできない。兄は「ういど 農業さい(それが農業さー)心配するな」と言う。「来年はいつもの2倍、3倍の出来だといいね」と私が言うと「普通でいいんだよ。普通で」と兄。普通に収穫できることがどんなに有難いか、当たり前でないかを13年、葉タバコと向き合ってきた兄は知っているのだろう。

それでも私は、こっそり「来年は、何倍も良い出来でありますように」と欲張りに願っている。

舞踊発表会

大和の宮古人(城辺・長南出身)

親友が新日本舞踊の家元をしていることから毎年発表会の手伝いをしている。(数年前、運動のつもりで1ヶ月ほど習った事があるが古典だった事もあり覚えられず止めてしまった。)

人前に出て何かすることの苦手な私は回りに人がいると頭の中が真っ白になり前に進めなくなる。努力すればどうにかなるとも思ったが素質が にゃーん(無い)ことも明らかだった。素質の無いものが死に物狂いで頑張ってもセンスのある人の足元にも及ばない気がする。と、かってぃーん(勝手に)解釈しての事だ。

1ヶ月で物になる人はいないと怒られたが、私には縁の下の力持ちの方が向いている気がして早々と脱線。其れからは毎年 ゆかの すたんふぐみゅう(床の下に潜っている)。

朝10時開始で夕方4時頃までに70〜80組の方々が ぶどぅす°(舞う)。一人の方も有れば10人以上の団体もあり様々で100人以上の方が出演される。一組の持ち時間は5分。スムーズに進行するためには ぴゃーぴゃーてぃ(早々と)支度を終えて5組先まで舞台の袖で待機させていく。ういがどぅ うむがあなーんならんゆ(此れが思うように進んでくれないのだ)。

なにせ3歳の幼稚園児から80歳以上の方まで幅が広い。幼児はユカタで踊るので簡単だが年長組みからは本格的な和装になり 手間が掛かる。普段は化粧も着付けも自分たちで出来るが短時間で仕上げなければいけないので当日は着付けの専門に任せる。それでも一人に時間がかかりヤキモキするのである。

大勢の中にはノンビリさんとせっかちさんがいる。セッカチさんは2時間も前に準備万端整え10分おきに「今は何番の方が踊っているの?」と訊きに来る。最初の年の余りの多さに、次の年からは、A4の用紙一杯にナンバーと演目・名前・イラストなどを入れた物を作成し各部屋に掲げ、終わった順に一枚ずつ外していくので私の所に来なくても分かるようになっているが、誰かに不安な気持ちを話して安心したいのと晴れ姿を見てもらいたくて来られるようだ。

逆にのんびりさんは5組前になってもまだお化粧をしている。時間ですよと急かすが「もう直ぐです」とマイペースだ。遅れることも考えて次の人に了解を取っていたりするとギリギリで間に合う。意外と当人たちは承知しているのかもしれない。一度も遅れた人はいないから。(私もノンビリしているから人のことは云えないが)

素人芸とはいえ出演者には知合いの方がお祝いに駆けつける。しかし殆どの方が本名で尋ねてこられる。プログラムには芸名しか書かれないので本名を知らない私は楽屋を駆けずる事になる。

だが皆さんも、人の話を聞く余裕などないようで目の前にいても返事をしてくれないのだ。もっとも私はお弟子さんと面識が少ないので側にいても分からないが。(面識があっても顔は真っ白に塗り日本髪のかつらに振袖や内掛けのような裾を引きずる着物を着るので見分ける事など出来ない。一度など私よりも年上の人に小学生と間違えて可愛いよ、頑張ってね!と云ってしまった。お化粧落とした後はびっくり、平謝り)

人によってはホールで友達の踊りを見学していたりで、探し人と送り出しでパニックになりそうなときもある。他の人には自分で探すように指示しなさいと云われるが断れないのが私の長所と思い探すようにしている。

こんな具合で一日中駆け回っているがドラマを見ているようで楽しい。廊下で老若の舞妓さんや武士や素浪人、殿様にまで行き交うと何処かの撮影所にいる様な気さえする。

仕度に夢中で飲食は忘れ、会館が古く階段やスロープがあるので草履や下駄では転倒の心配もあり気が抜けないが、80才過ぎて綺麗にお化粧し振袖を着て楽しそうな姿を見るとこっちの疲れも吹っ飛んでいく。

舞台に上がる前は不安そうな顔が舞い終わると満面の笑顔で降りてこられ家族や友人と写真を撮っていると80才を過ぎているとは思えない若さだ。家族ではないがいつまでも元気で踊っていてほしいと思う。

今年ももう直ぐ発表会だ。全員元気に参加してくれる事だろう。いまから楽しみにしている。

編集後記

松谷初美(下地・高千穂出身)

この時季に台風が上陸するとは。台風2号の被害の大きさにびっくりですね。葉タバコもそうですが、マンゴー農家でも、もうすぐ熟するというマンゴーが落ちて商品にならないとのこと。キビの被害も出ているようです。今回の台風での被害総額は「29日現在、9億9400万円に上る」と宮古毎日新聞http://www.miyakomainichi.com/2011/05/19452/ に出ていました。台風シーズンは始まったばかり。これ以上の被害がでませんように。

東京では、郷友会関係の催しものが二つありました。

ひとつは、5月22日、東京の九段下にあるホテルグランドパレスで、関東上野郷友会と、下地郷友会の合同での総会・懇親会がありました。約80名が うがなーり(集まって)、楽しいひとときを過ごしました。上野も下地も人がなかなか集まらなくて、昨年から合同でやっているのですが、今年は、たくさん集まってぷからすものでした。上野出身のばんたがマツカニさんこと棚原芳和さんと棚原さんの三線教室のYさんご夫妻も歌・三線を披露。盛り上がりましたよ〜。

それから29日は、上野水上音楽堂において、クイチャーパラダイスと関東宮古郷友会連合会共催の「東日本大震災復興支援 チャリティ発表会」がありました。台風の影響で雨の一日でしたが、雨を吹き飛ばすくらいの熱いステージが繰り広げられました。そして〆は、やはりクイチャー。舞台も会場も一体となって盛り上がりました。入場料の千円は、すべて義援金として送られるそうです。


さて、今回の くまかまぁ のーしが やたーがらやー?

指笛の季節がやってきますね〜。いろいろなシーンで指笛はかかせませんね。「災害、緊急時にも役立つ指笛の普及を」のフォーラムも上等企画ですね。指笛王国のサイトでいろいろな情報がでていますので、チェックして下さいね〜。

大和の宮古人さんの話は、スタッフとして関わることの大変さや喜びがイキイキと伝わってきましたね〜。沖縄では、歌や踊りがとても盛んです。舞台に関わっている方多いので、共感した方多かったのではないでしょうか?

あなたの感想もぜひお寄せくださいね〜。
投稿もお気軽にしていただけると、ぷからすむぬ〜。

きゅうまい、しまいがみ ゆみふぃーさまい すでぃがふー!
(きょうも最後までお読みいただき、ありがとうございました!)

次回は6月16日(木)発行予定です。どうぞお楽しみに!
きょうも佳き一日でありますように〜。 あつかー、またいら!

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