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くまから・かまから vol. 258

2024 7/15
メールマガジン
2011年12月15日2024年7月15日

こんにちは〜。
今年も残すところ、んなぴっちゃがまとなりましたね。
今年最後の、くま・かまお届けです!お楽しみくださいね〜。

目次

家具調テレビの思い出

與那覇 淳(平良・鏡原出身)

宮古でテレビ放送が始まったのは1967(昭和42)年のことです。

我が国での放送開始が1953(昭和28)年ですから、本土に14年遅れてテレビ放送が始まったことになりますね。

宮古での放送開始2年前の1965(昭和40)年に歴代の総理大臣としては初めて、当時の佐藤総理が宮古島を訪問しました。鏡原小学校近くの城辺線を通り過ぎる総理大臣一行の車に向かって、日の丸の旗を振らされた覚えがあります。

そのときの宮古島からの要望の一つが「子どもたちにテレビを」で、佐藤総理は先島でのテレビ放送の実現を約束しました。宮古島に、あたまんてぃ(にわかに)テレビブームが到来。

親戚が沖縄本島で電気関係の会社に勤めていて、我が家はテレビを無理やり買わされたように覚えています。それは当時、中学1年生の私にとって、うかーす(大変な・一大)事件でした。家具調の やぐみ(立派な・尊い)大型テレビが放送開始前に届いて一番座に鎮座していました。

あたーま(しばらくは)段ボール箱に入ったままでした。親が畑に行っている間に、やらっちゃがま(ゆっくりと、そうっと)箱を開いて、まずがーてぃ(試しに)電源を入れると、ザーッという音とともに砂粒を すきゃしゅうにゃーん(散りばめたような)画面が現れました。たまにテストパターンが映ったりします。それを見て「映っている」と、ぷからっさ(喜んだり)したものです。

学校の休み時間ともなると、話題はテレビのこと。テスト放送をたまたま観たという生徒が自慢げに話していました。

そして、いよいよ放送が開始されました。放送は総合と教育の混合編成で遅れ放送。大相撲や高校野球は一日遅れ、紅白歌合戦は元旦の放送でした。放送開始年の朝の連続ドラマは「旅路」。平岩弓枝・原作で北海道を舞台に国鉄職員とその妻を中心にした一家の愛の物語でした。子ども番組は井上ひさし原作の「ひょっこりひょうたん島」が人気を集めていました。

放送開始から44年。いまでは、テレビのない暮らしが考えられないほどです。テレビ文化の浸透に伴って子どもの遊びにも変化が見られるようになりました。テレビの出現以前の子どもたちは、もっと自然と触れる機会が多かったように思います。自然から計り知れないほどの情報を得ていたのです。

テレビを悪者扱いする気は毛頭ないが、もう少し子どもたちが自然と向き合う環境づくりが必要かな、と思います。そういう自分も、日常生活の中でテレビと過ごすことが多くだらだらと観てしまいがちです。

ちなみに、いま楽しみにしている番組は朝の連ドラ「カーネーション」です。

やーのつかふ(家の近所)の地層

松谷初美(下地・高千穂出身)

先月宮古に帰ったときに、毎朝 すとむてぃしゃーか(朝早く)起きて、近所を散歩した。

ばんたがやーや(我家は)、宮古空港から東に2キロくらいのところにあり、カザンミと呼ばれている。ンミ(峰)というくらいだから、少し高台になる。

11月だというのに、毎日夏のようで、朝の散歩は気持ちが良かった。飛行場のほうに向かっていくと土地改良の工事がされている。以前、獣道のようなところを通って行った、うちの畑(ぐなんばりという名前だった)は、見る影もなく、きれいに整地され、一瞬どこかも分からなかった。

そっか。子どものころ、葉タバコのマタ積みや花を取った畑はもうないんだ・・・。少し感傷的になりながら行くと、工事途中の場所があり、よく見ると、おごえ、地層になっている。

一番上には草が生え、その下に赤土(80センチくらいか)、そしてその下に石灰岩(3メートルくらい)。

へー、地面はこんな風になっているのか。土の部分は少なく、その下は、石だらけ。そりゃ、昔の人は、かじて(耕して)は、石を拾う拾うしたわけだ。

石灰岩の部分をよく見ると貝殻や魚の骨とおぼしきもの、何か動物の歯のようなものが見える。どれくらい前のものなんだろう。石灰岩の下のほうにあるので、だいず昔ということか!?ドキドキ。

地層の長さは10メートルもなかったと思うが、うすみて(しゃがんで)みては写真を撮り、細長い骨のようなものを発見しては、驚き・・・しばらくその場所から離れられなかった。

やらびぱだ(子どもの頃)、島尻の断層を見に行ったことがある。だいず大きくて、幾層にも分かれていた記憶がある。いかにも大昔からのだなーと感じられた。

ここにあるのは、そんな重厚なものではないけれど、確かにここに生き物が生息し、もしかしたら人もいたかもしれないと思わせた。どれくらい前のものか分からないが、今その頃と目を合わせているような、なんともあたらすー(愛おしい)という気持ちが沸き起こり、胸が高鳴った。

家の近くでこんなものが見えるとは。びっくりするやら感動するやらだった。

あの場所は、今はどうなったのだろう。均されて、畑になっただろうか。

誰か、専門の人に伝えたほうが良かったのかなーと考えたりしながら、東京の空の下、スマホで撮った写真を眺めている。

『宮古馬』の記憶

ビートルズ世代のサラリーマン(平良・下里出身)

ばんたが やらびぱだ(僕らが子供の頃【昭和30年代】)には、すま(島)にはまだ沢山の のーま(馬)がいた。農家にとって馬は、朝夕は、ぱり(畑)へ農具や収穫物を運ぶ馬車として、ぴすまんな(昼間には)重い鋤をひき畑を耕す農耕馬としてなくてはならない大切な家畜だった。

私が中学生の頃までは、まだ荷馬車が現役として活躍していて平良港に陸揚げされた荷物の大半が荷馬車で運ばれていたと記憶している。港から続くあの長くて急な坂道を ぱなゆならし(鼻を鳴らし) いき°やふき(息を吹き)懸命に荷を牽き登っていた荷馬車の姿を覚えている。

あの坂道は、力自慢の宮古馬でもかなりの難所で、坂の途中でへばって立ち止まりそうになる馬に ゆかーらから(横から)手綱で腹を打ち、必死にかけ声を人馬一体となってかけて登っていく。今では懐かしい記憶の中の風景だ。

毎月第3日曜、渋谷で開かれる宮古方言教室(通称「新里教室」)で宮古方言「のーま(野馬)」について習ったことがある。

宮古はかって、宮古馬の名産地で、古くから乗馬の盛んな土地柄だったそうで、昭和の初期頃までの青年達は競って乗馬用の馬を飼って自慢し合っていたそうである。そして、その乗馬用の馬を“たてうま(立て馬)/たてぃむま”と称し、これに対し労役に用いる馬を「野馬」と言ったのでは無いかということを教わった。

宮古島は、古くから馬の一大産地であったようで、琉球王朝時代、江戸上りで貢物として将軍へ献上された馬ももしかしたら宮古馬でなかったでしょうか。

宮古馬は、小型で性質がとても穏やかで粗食や重労働にも耐える等の特徴があり、昭和10年には城辺で飼われていた3頭が皇太子殿下の乗用馬に指定され宮内庁に納められている。その内の1頭は、確か、私の生まれ里、城辺西中(にしちゅう)にあるタイフク家で飼われていた宮古馬である。子供の頃、額縁に入れられ床の間に飾ってある馬の写真を見たことがある。

そんな宮古馬も、昭和40年頃からどんどん減り続け、ついには絶滅の危機に瀕する。昭和51年当時の新聞記事などによると、「純粋の宮古馬はわずか11頭にまで減少。オス7頭、メス4頭だが、オス7頭のうち6頭は去勢馬。メス馬も老齢化のため、繁殖可能の馬は地元・平良市に2頭のみ。具志川市のオス馬も老齢化で、繁殖可能な期間は後2、3年だという」と、まさに危機的状況だったことが分かる。

たった1頭残った具志川市のオス馬(太平号)をメス馬3頭が待つ宮古島に迎え、そして、「ゆかりゃ号」との間に待望の「宮古馬2世」誕生と相成ったのです。うばいがうばい(やれやれ)、こうして、すんでのところで種の保存が図られたわけである。

現在では、33頭の宮古馬が元気に復活しているそうである。ネットで調べると遠く北海道の牧場でも宮古馬を飼養しているようで、「平成20年4月27日、家畜改良センター十勝牧場で飼養している宮古馬に赤ちゃんが誕生しました。母「いさみが」(13才)と父「旭」(16才)の間に生まれたのは、体重30kg、体高80cmの元気な女の子です。」なんてほほえましい記事がみえる。

でも、現在の個体数ではやはり絶滅の危機から脱しているとは言えないそうです。かっては、宮古島に1万頭以上(昭和30年)飼われていた宮古馬、これからも大切に守っていきたいものです。

最後に、長年私が暖めてきた宮古馬にまつわる宮古島の珍百景を紹介して終わりにします。

白い砂浜が人気の「砂山ビーチ」。眼前に広がるコバルトブルーの海と白い砂浜のコントラストが だいず(とても)美しい。左手には「砂山ビーチ」のシンボルともいえるトンネル岩が見えます。このトンネル岩、のーがらーん みーらいんな?(何かに見えませんか?)私には、どうしても、頭(こうべ)を垂れ草を食む宮古馬の姿に見えるのです。

新たな宮古島の観光資源として「みゃーこのーま岩(宮古馬岩)」登録!ならんかね。

編集後記

松谷初美(下地・高千穂出身)

ういまい、かいまい(あれも、これも)と、ぱんたーぱんた(大忙し)の年末に、ゆみふぃーさまい たんでぃがーたんでぃでした(読んでくださり、ありがとうございました)。

さて、今年 しみゃー(最後)のくま・かまぁ のーしが やたーがらやー(いかがでしたかー)?

與那覇 淳さんは、今回からくま・かまのライターになってくださいました。宮古でテレビ放送が始まった頃の話し、懐かしかったですね。淳さんは、鏡原の出身で1954年(昭和29年)生まれ。宮古島市在住です。人気ブログ「宮古島かなしゃ」http://yonaha38.ti-da.net/ でご存知の方も多いかもしれませんね。宮古のいろいろなことにとても詳しいです。今後の活躍にご期待くださいね〜。

あの暑い11月の宮古から戻って早一ヶ月半。あの地層は宮古では珍しいものなのか、どこでも見られるものなのか、分かりません。掲示板に写真を貼りますので、良かったら見てくださいね。

ビートルズ世代のサラリーマンさんの 宮古馬の話、これまでの経緯がよく分かりましたね。うちでも のーま(馬)を飼っていました。だいばんで(大きくて)優しい目は、今でも鮮明に覚えています。私たちの生活を支えてくれた宮古馬。保存に努力されている関係者に感謝ですね。して、砂山のあの岩、まーんてぃ、上に生えている草もまるでたてがみのよう。B.サラさんが掲示板に写真を載せてくれると思いますので、ぜひご覧くださいね。

みなさんからの感想もお待ちしています。


この一年もくま・かまを読んでくださり、たんでぃがーたんでぃでした。おかげさまで今年も無事に終えることができました。感謝申し上げます。

今年は、想像だにしなかった、未曾有の大地震があり、言葉を失いました。何かをせずにいられず、vol.240(3月17日発行)では、早急の救済・復旧を願って、ライター、読者のメッセージを載せました。また、4月には、チャリティライブを開き、義援金を送りました。その節は やまかさ(たくさん)の方にご協力いただき、ありがとうございました。

vol.241(4月7日発行)では、くま・かま10周年を記念して「方言宮古かるた」をやりました。ツイッターもされたようで、ぷからす反響がありました。

菜の花が書いた「一粒の種」は、映画になり、またさらに広がりを見せましたね。全国各地で活動をする砂川恵理歌さんの「ゆたしく通信」も紹介させていただきました。

個性あふれるライターのいろいろな話も、楽しんでいただけたと思います。

掲示板での感想や評価のところでのコメント、メールなど、毎回、ぷからすーと読ませてもらいました。ライター一同感謝の気持ちでいっぱいです。すでぃがふー!

この一年、まーんてぃ お世話になりました!
どうぞ、また、来年まい、宜しくお願いしますね。

次号は年明け1月5日(木)発行予定です。
どうぞ、かぎしょうがつ(良い正月)をお迎えください。あつかー、またいら!

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