MENU
宮古島方言マガジン「くまから・かまから」
宮古島方言マガジン「くまから・かまから」
宮古島方言マガジン「くまから・かまから」

くまから・かまから vol. 267

2024 7/15
メールマガジン
2012年5月3日2024年7月15日

こんにちは〜。
ゴールデンウィーク真っ最中ですね〜。いかがお過ごしですかー?
子どもの日が近いということで、やらびぱだ(子どものころ)の話しからスタートです。
vol.267お楽しみください〜。

目次

やまがっこうとわたし

幸地郁乃(平良・久貝出身)

小学生の頃は、街はずれの家から平良第一小学校(平一小)まで通っていた。いま思えば、2キロほどの道のりなんて何でもないのだけど、子どもの足には遠く遠く感じた。

そのときの私は、通知表に「もっと積極的に友達をつくりましょう」とか「休み時間には体を動かしましょう」といった先生のアドバイスが書き込まれるような子だった。

普段は女の子同士のつきあいも少なかった。たまに混ぜてもらう女子らしい遊び(チェーリングやゴム飛び)もルールがよく分からず、きっと仲間をしらけさせてしまっていたのでは、と思い返して青ざめる。先生からすれば級友とのコミュニケーション不全に映っただろう。けれど私は、充分楽しかった記憶しかない。学校の行き帰りに見るものや本のなかのことで頭がいっぱいだったから。

教科書で一番好きだったのは、沖縄の学童向けに編さんされた準教科書だ。そのうちの一冊に載っていた、地元で見られる草花の写真に目をひかれた。ブッソウゲやムラサキカタバミ、カラスノエンドウといった名前もそれらの本で教わった。蜜の吸える花を覚えて、通学路で見つけたらさっそく試したりもした。文字通り「道草を食っていた」。

学校でお気に入りの場所は図書館か池のそば。水面に浮かぶミズスマシや、ホテイアオイのような水生植物を、とぅりばりて(ボーッと)ながめているのが楽しかった。まだ汲み取り式のトイレの近くにナズナが数本生えているのを見つけ「ああ、こんなところに・・・」と嬉しくなって摘んでいると、ぴさら(平良の街なか)の子に「?」という顔をされた。

当時、私の家から平一小までの間は住宅地ではあったけれど、緑も多く残っていた。けっこう大きな亀甲墓もあったし、そのあたりから小高くなった原野には、手の切れそうなススキの葉などが茂っていて、そこをかき分けながら、まゆがま(猫)の目線で花や虫などを探してゆくのであった。いみっちゃ(小さい)なのに鮮やかな青色をして地面を這うように咲く花を見ると、おかえりと言われるようで安心した。ピンピンと勢いよく飛び跳ねる かた(バッタ)、びーず(トンボ)、たまにはバカギジャ(キシノウエトカゲ)に出くわして、ぴくまりる(びっくりする)こともあった。

道のない道を行こうと決めた日。たまたま帰りがけにあまり知らない同じ学校の男子と一緒になり、そうなったような覚えがある。時間はかかったけれど、ガジュマルの木などをうまく伝いながら、窪地にはまり込むこともなく案外すんなりと通り抜けられた。服には ムツウサ(タチアワユキセンダングサ)の種がいーっぱい付いていたに違いないが・・・そういう部分はきれいに忘れてしまっている。

学校をさぼったりして山で遊びながらいろんな知識を身につけてゆくことを“山学校”というそうだ。私より上の世代は、もっともっと豊かな山学校体験をしているに違いないが、70年代後半、宅地開発中だった学校の行き帰り、まばらにあった原野にも、そういう空間があった。山学校であり、ミクロコスモスだった。その中で思いっきり心と体を遊泳させることで、子供時代の自分のバランスは何とか保たれていたような気がする。それは大人には見えないし評価もできない世界だっただろう。

学校と習い事に忙しく、帰ってきたときの息抜きがゲームという子は今の宮古でも多いかもしれない(うちの子もそうだし)。送り迎えも車の場合、道端の草を眺めつつ歩くこともない。自分の子供時代と比べて、どちらが幸福かなんていうつもりはないが、ちょっとお疲れ気味の、ばが ふふぁがま(わが子たち)と、今度ゆっくり散歩でもしてみなくちゃなあ、と、ものぐさな母(山学校卒業生)は反省するのであった。

身近な薬草

松谷初美(下地・高千穂出身)

やらびぱだ(子どもの頃)、医者に行くことはめったになかった。ばたやむ(お腹が痛い)と言えば、やつうさ(ヨモギ)を煎じて飲まされたし、怪我をして出血したときは、ぴきぱずふさ(和名不明)を突いて汁を出し、その汁を傷につけられた。

イシャイラズ(アロエ)は、家に必ず植えられていて、火傷や日焼け、怪我の時などにも大活躍だった。イシャイラズという名前は、方言だとばかり思っていたら内地でも言うのでびっくり。それが「医者いらず」と知ったのは大人になってからだった。

さて、昨年宮古に帰ったときに、父親にならった うむっし(面白い)薬草がある。

その名は「すっす てぃんざく」。白いホウセンカのことだそうだが、魚の骨をノドにひっかけた時に、その葉っぱでノドをなでると骨が落ちるという。

私「えー?まさかよー?」
父「あば、まーんてぃどー(あれ、本当だよ)」
私「白いホウセンカと決まっているわけ?」
父「知らんけど、昔から白いのがいいと言われている。
おとうは何回もそれで骨がとれた経験があるよー」

と言う。なんとも信じがたい ぱなす(話し)

「白いホウセンカは見たことないよ」と言うと母ちゃんが「○○の家にあったじゃないか?見てきたら?」と父に言う。早速父は行ってきた。そこの家の人は、別のところにあるから取ってきておくよと話していたとのことで、夕方、外出先から帰るとうちの玄関に置いてあった(さすが宮古。ありがたや)ホントにあったんだ・・・白いホウセンカ。しかし、幸か不幸か宮古にいる間に魚の骨は刺さらなかった。なのでホントかどうかは試していない。

それから、もうひとつ。昔は、てぃーふぐかや(手の疲れ)が出たときは、手首に ぴーぴすかざ(ヘクソカズラ)をぐるぐる巻いていたとのこと。それで疲れがとれたそうである。

ホウセンカの葉っぱでノドをなでている様子や ぴーぴすかざの葉をぐるぐると手に巻いている様子を思い浮かべると、なんだか可笑しいが、子どものころから薬草に慣れ親しんでいたからか、効くかもと思う。

しかし、今は昔のように薬草を使う人はあまりいないのかな。そのうち、その植物や名前も忘れられていくのかと思うともったいない気がする。

やーのつかふ(うちの近所)だけでも、他にもいろいろありそうだ。ただの草にしか見えなかったものが、私たちの役にたってきたものだと思うと あたらすー(愛しい)という気持ちがわいてくる。

昔の人たちの知恵とともにあった薬草。もっといろいろ知りたいと思ったのだった。

小話

羽地みなと(平良・西里出身)

あるところに二人の男がいた。しばらく並んで釣りをしていたのだが、異様なニオイが二人を包み込んだ。

男1「ばたぬどぅ(おなかが)やみゆーなー?(いたいのか?)」
男2「ばが(わたしが)ばたぬ(おなかが)やみゆーんつか(痛かったら) うわがどぅ(あんたが)ぴーぷしゃーな?(おならをするのか?)」

私が大学1年生の時、あまりにも会う人に会う人に「なにか方言を話してくれ」と言われたので、父親に教えてもらった小話です。

方言で早口でまくしたてた後に意味を教えると、「おならの話なんて、そんなにしないでしょ!」と、必ずつっこみが入ります。そして必ず笑いがとれます。

ですが、さすがに持ちネタ1つだとそろそろ苦しくなってきたので(同じ人に2回はウケないので・・・)、厚かましい御願いですが、先輩方にネタを提供していただけないかと思っております。

今、新里教室では、宮古に伝わることわざを中心に、語源や音声記号など掘り下げて学んでおりますが、小話や口上など、そういう笑えるものを集めてみるのも面白いかもしれない・・・と、沖縄では梅雨入りが確認され、世間はGW真っ只中、暑くもなく寒くもなく、一番過ごしやすく大好きな季節にも関わらず、仕事で日中籠ってばかりの私は思うのでした。

お便りコーナー

前号(vol.266)へのお便りを紹介します。

ミパナアマイ(茨城県取手市)

いつも配信、ありがとうございます。
楽しく読ませていただいています。

偕楽園の梅の記事、近くにいながら詳しくは知らずにいました。実は、昨年の大震災の1週間前に偕楽園に行き、水戸駅にも降り立ったので、被害の有様は他人事とは思えずにいました。でも、こんなに回復したのを知ってとても嬉しいです。

最近はみゃーくふつに触れる機会は、この「くまかま」と下地勇さんの歌だけです。

宮古島もだいぶご無沙汰しているので、そのうち行きたいと思っています。

※ミパナアマイさん、感想すでぃがふー!喜んでもらえて、こちらもぽからすむぬ〜(うれしい限り)。今後ともよろしくお願いしますね。

編集後記

松谷初美(下地・高千穂出身)

前号のくま・かま発行からいろいろなことがあった2週間でした。

まず、4月25日には、宮古島市ジュニアオーケストラの天野誠さんが上京されて、2年前に続き、今年も東京公演を8月2日(木)に開催するというお話しがありました。今年は国立オリンピック記念青少年総合大ホールで行なわれるとのこと。2年前、素晴らしい演奏に感動しました。今年も楽しみです。天野さんの宮古の子どもたちに向ける優しさ、情熱、まなざしには敬服します。詳細は後日おしらせしましょうね。

29日は、下地勇さんの10周年記念アルバム「“静”+“動”」の発売記念ライブが東京荻窪の新星堂でありました。勇さんの生歌は、去年の11月に宮古で聞いて以来。新曲「アンターマナ」を含む8曲を堪能しました。勇さんの歌は、まーんてぃ ずみ!オフィシャルサイトでは、全国で行なわれる10周年記念ライブのスケジュールが順次アップされています。要チェックですよ〜。

5月1日は、巨人の宮國椋丞投手(両親はともに宮古出身。ばんたが同級生)が東京ドームで投げるというので行ってきました。ホームグラウンドでの初勝利、しかも完封という素晴らしい内容に大興奮!よもや東京ドームで同級生の子どもの応援をしに来ることがあるとは!堂々の投球に感激しました。今後の活躍がますます楽しみです。掲示板にはビートルズ世代のサラリーマンさんからの写真付き報告もありますので、ぜひご覧くださいね。

さて、今回のくま・かまぁ のーしが やたーがらやー?

やまがっこうとは無縁の都会的なイメージがする郁乃さんですが、やらびぱだ(子どものころ)は、自然を観察したり、その中で冒険をしたりしていたんですね〜。道草での楽しい思い出は大人になっても幸せをくれますよね。今宮古の子どもたちは、車での送迎が多いようですが、道草のチャンスが少ないかと思うともったいない気がしますね。

宮古にある薬草。他にもいろいろご存知の方、多いと思います。良かったら、ならあしふぃーさまちよー(教えてくださいませね)。

若いみなとさんから、方言の小話がでてくるとはびっくりでした。しかも内地の人に方言で話しているとは!若い人に方言に興味を持ってもらうのに「笑える話」は、とっかかりやすくて上等かもしれませんね。他にもこんな小話があるよーとか、いろいろなネタをお持ちの方は、ぜひ教えてくださいね〜。

あなたからの感想まい まちうんどー(お待ちしています)!
皆様からの感想が、次の活力となります。どうぞよろしくお願いしますね。

今回まい しまいがみ ゆみふぃーさまい すでぃがふー!
(今回も 最後まで お読みくださり ありがとうございました!)


次号は5月17日(木)発行予定です。
いいことが やまかさ(たくさん)の2週間でありますように!あつかー、またや〜。

メールマガジン
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
  • くまから・かまから vol. 266
  • くまから・かまから vol. 268

この記事を書いた人

松谷初美のアバター 松谷初美

関連記事

  • くまから・かまから vol.447
    2019年12月19日
  • くまから・かまから vol.446
    2019年12月5日
  • くまから・かまから vol.445
    2019年11月21日
  • くまから・かまから vol. 444
    2019年11月7日
  • くまから・かまから vo.443
    2019年10月17日
  • くまから・かまから vol.442
    2019年10月3日
  • くまから・かまから vol.441
    2019年9月19日
  • くまから・かまから vol.440
    2019年9月5日
アーカイブ
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月
  • 2018年4月
  • 2018年2月
  • 2018年1月
  • 2017年12月
  • 2017年11月
  • 2017年10月
  • 2017年9月
  • 2017年8月
  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月
  • 2017年2月
  • 2017年1月
  • 2016年12月
  • 2016年11月
  • 2016年10月
  • 2016年9月
  • 2016年8月
  • 2016年7月
  • 2016年6月
  • 2016年5月
  • 2016年4月
  • 2016年3月
  • 2016年2月
  • 2016年1月
  • 2015年12月
  • 2015年11月
  • 2015年10月
  • 2015年9月
  • 2015年8月
  • 2015年7月
  • 2015年6月
  • 2015年5月
  • 2015年4月
  • 2015年3月
  • 2015年2月
  • 2015年1月
  • 2014年12月
  • 2014年11月
  • 2014年10月
  • 2014年9月
  • 2014年8月
  • 2014年7月
  • 2014年6月
  • 2014年5月
  • 2014年4月
  • 2014年3月
  • 2014年2月
  • 2014年1月
  • 2013年12月
  • 2013年11月
  • 2013年10月
  • 2013年9月
  • 2013年8月
  • 2013年7月
  • 2013年6月
  • 2013年5月
  • 2013年4月
  • 2013年3月
  • 2013年2月
  • 2013年1月
  • 2012年12月
  • 2012年11月
  • 2012年10月
  • 2012年9月
  • 2012年8月
  • 2012年7月
  • 2012年6月
  • 2012年5月
  • 2012年4月
  • 2012年3月
  • 2012年2月
  • 2012年1月
  • 2011年12月
  • 2011年11月
  • 2011年10月
  • 2011年9月
  • 2011年8月
  • 2011年7月
  • 2011年6月
  • 2011年5月
  • 2011年4月
  • 2011年3月
  • 2011年2月
  • 2011年1月
  • 2010年12月
  • 2010年11月
  • 2010年10月
  • 2010年9月
  • 2010年8月
  • 2010年7月
  • 2010年6月
  • 2010年5月
  • 2010年4月
  • 2010年3月
  • 2010年2月
  • 2010年1月
  • 2009年12月
  • 2009年11月
  • 2009年10月
  • 2009年9月
  • 2009年8月
  • 2009年7月
  • 2009年6月
  • 2009年5月
  • 2009年4月
  • 2009年3月
  • 2009年2月
  • 2009年1月
  • 2008年12月
  • 2008年11月
  • 2008年10月
  • 2008年9月
  • 2008年8月
  • 2008年7月
  • 2008年6月
  • 2008年5月
  • 2008年4月
  • 2008年3月
  • 2008年2月
  • 2008年1月
  • 2007年12月
  • 2007年11月
  • 2007年10月
  • 2007年9月
  • 2007年8月
  • 2007年7月
  • 2007年6月
  • 2007年5月
  • 2007年4月
  • 2007年3月
  • 2007年2月
  • 2007年1月
  • 2006年12月
  • 2006年11月
  • 2006年10月
  • 2006年9月
  • 2006年8月
  • 2006年7月
  • 2006年6月
  • 2006年5月
  • 2006年4月
  • 2006年3月
  • 2006年2月
  • 2006年1月
  • 2005年12月
  • 2005年11月
  • 2005年10月
  • 2005年9月
  • 2005年8月
  • 2005年7月
  • 2005年6月
  • 2005年5月
  • 2005年4月
  • 2005年3月
  • 2005年2月
  • 2005年1月
  • 2004年12月
  • 2004年11月
  • 2004年10月
  • 2004年9月
  • 2004年8月
  • 2004年7月
  • 2004年6月
  • 2004年5月
  • 2004年4月
  • 2004年3月
  • 2004年2月
  • 2004年1月
  • 2003年12月
  • 2003年11月
  • 2003年10月
  • 2003年9月
  • 2003年8月
  • 2003年7月
  • 2003年6月
  • 2003年5月
  • 2003年4月
  • 2003年3月
  • 2003年2月
  • 2003年1月
  • 2002年12月
  • 2002年11月
  • 2002年10月
  • 2002年9月
  • 2002年8月
  • 2002年7月
  • 2002年6月
  • 2002年5月
  • 2002年4月
  • 2002年3月
  • 2002年2月
  • 2002年1月
  • 2001年12月
  • 2001年11月
  • 2001年10月
  • 2001年9月
  • 2001年8月
  • 2001年7月
  • 2001年6月
  • 2001年5月
  • 2001年4月
  1. ホーム
  2. メールマガジン
  3. くまから・かまから vol. 267

© 宮古島方言マガジン「くまから・かまから」

  • Presented by 宮古島.JP
  • Cooperate with 宮古島文化協会
  • Powerd by ONEsta
目次