MENU
宮古島方言マガジン「くまから・かまから」
宮古島方言マガジン「くまから・かまから」
宮古島方言マガジン「くまから・かまから」

くまから・かまから vol. 270

2024 7/15
メールマガジン
2012年6月21日2024年7月15日

こんにちは〜。
台風4号が縦断していきましたが、大丈夫でしたかー?5号もちびおいて(後を追って)きてしわ(心配)ですね。気を付けましょう!
vol.270 お届けで〜す。

目次

んなま(今)の宮古 〜早めの七夕気分〜

カニ(平良・西里出身)

はいよ〜カニどー。

台風接近の宮古島ですが、今晩(6月16日)は満天の星空です。カニは にすぬいむ(北海岸)へ行き、上りくる「天の川」を見てきました。さそりの ちび(尻)あたりから、北海岸の「いむぬぱてぃ」=「水平線」の上に顔を出している「っしとずぷす」=「白鳥座」あたりに、天の川はっすふむ んーだかに ありうずたむどー(白い雲のようにありましたよ)思わず手を合わせましたよ!
 
織姫と彦星の出会いもすでに始まっていましたね・・・。
夏の三角形を北海岸の海の上で確認し戻ってきました。
 
今晩はたぶん今年最後の「南十字星」にも会いにいきました。そうしてしばしの別れをしてきました。次は来年の1月の真夜中の再会を誓いました。
 
6月の始めごろから時々南風が吹き始めていましたが、ここ2〜3日は真南風に近いです。そうしてこの吹き方からして「夏至南風」=「かーちばい」です。しかし台風接近のため、どうなるやら・・・とにかく涼しい南風になりましたねぇ。
 
昨日の朝の散歩で ナビガース(くまぜみ)の鳴き声も聞きました。この初鳴きで梅雨明けだと思いましたねぇ。自然界が知らせてくれるんですね ・・・ありがたいものです。
 
やらぶの白花が満開。ゆうなの黄花が鮮やかで満開。
  ・
  ・
畑には2年前に植えた「シマバナナ」についに実がつきました。3本のバナナ木に実がついてるので嬉しくてたまりません。
 
梅雨のこの時期にたっぷりと水を含んだ植物(木々)らは生き生きとしています。畑のタブの木もまた成長したように感じています。「ぴゃーぴゃーてぃ ぷどぅい うぷぎーん なりよ」(はやく成長し大木になーれ)と願うばかりです。

そのタブの木に「くうすふぁや」=「きのぼりとかげ」がいましたので
「はい うう”ぁ んなまがみまい がんずーしーうずたーなぁ」(おい あんたは今まで元気だったのかい)とつい声かけしましたよー。
 
はいよー 初夏の便りでした。

くゆんバッチ

與那覇 淳(平良・鏡原出身)

6月も下旬を迎えました。時の経つのは、はやいもので今年も折り返しを過ぎましたね。

年を重ねるたびに歳月が短く感じられるのでしょうか。周りを見渡すと、つい最近まで集落で存在感の大きかった大先輩方が亡くなり、過去の人となってしまっているのに気がつきます。

還暦を迎えたというと、以前は「かなりの年寄り」というイメージを持っていたが、自分が還暦に手が届く年齢になってしまいました。時代の移り変わりのスピードに自分の意識がついていけないように感じます。

そんなある日、集落の先輩で80代前半の2人の男性と少しばかり会話をする機会がありました。そのうちの一人が「んきゃんとぅ、んなまとー むいがーい やーば(昔と今では隔世の感がある)」と切り出しました。それにもう一人の先輩は「あし、んなまぬ やらびんかい あいいきかさばまい むい すさんさーい(そりゃ、今の子供たちに昔話をしたって理解できるわけないよ)」と話しました。

そこから、昔話に話が弾みました。その年代の人たちは子どもの頃、履物もなくて裸足でポー山(クロイゲが植生する原野)にも出入りしました。ふだんから裸足の生活で足のかかとは固くなって皮革化し草刈り鎌でそぎ落とすこともできました。

野球用のボールも手に入らないので、大根をほどよく乾燥させて丸め、それをぼろ布で巻いてボール替わりにしました。また、バッチ(めんこ)は手作りでした。バッチ作りには日めくり暦の台紙が分厚くて丈夫とあって最も重宝され、「くゆんバッチ(暦のめんこ)」と呼ばれていました。私が知る由もない戦前の話です。そんな話をしてくれた大先輩は、ゲームで勝って相手から取り上げたバッチを大量に床下に隠し持っていたようです。

手作りといえば思い出すことがあります。私が小学校の低学年の頃、ヘリコプターに似せたおもちゃが流行しました。高さ5〜6センチメートルで直径2センチメートル程の円筒形の上に円形のプロペラを取り付けたものです。筒の中にある心棒にタコ糸を巻き取り、筒の横穴からタコ糸を素早く引っ張ると、心棒の先と連動するように取り付けてある円形のプロペラが勢いよく空中に舞い上がる仕組みになっていました。

近隣の友人らがほとんど持っているが、私は買ってもらえず親に駄々をこねていると、祖父が「作ってやろう」と手作りしてもらったのが竹トンボでした。「それじゃない」と言って不満をぶつけ、祖父を手こずらせた幼い日が蘇ってきます。孫の喜ぶ顔を見たいとの思いで竹トンボを作ってくれたであろう祖父。そんな祖父が他界したのは私が小学5年の頃でした。

今年もあと6カ月余。戦前の男の子たちは正月が近くなると、「くゆんバッチ」欲しさに日めくりの残りの枚数を数えながら、勝ち取ったバッチの山を夢に描いていたことでしょう。

6月23日・慰霊の日には

キムキム(平良・西里出身)

固き土を破りて 
 民族の怒りに燃ゆる島 沖縄よ
 我等と我らの祖先が 血と汗を持て
 守り育てた沖縄よ
 我等は叫ぶ 沖縄よ 
 我等のものだ沖縄は
 沖縄を返せ 沖縄を返せ

「沖縄を返せ」(1956年、作詞:全司法福岡高裁支部、作曲:荒木栄) 

今年は、沖縄の本土復帰40年の節目の年。
「復帰」と聞くと、決まって思い出すのがこの歌。

「どこの出身ですか?」と聞かれ、「沖縄です」と答えると「いいわね。青い空と綺麗な海、一度行ってみたいわ〜」と・・・間違いなく絶賛される。

決して悪い気はしないし、「ぜひ、どうぞ、いらして下さい。○○がお勧めですよ。△△もいいですよ」と、にわかに沖縄観光PR大使となる。「戦争」や「基地問題」を聞いてくる人はいないし、私自身が「その話題」で沖縄を語るチャンスが、なかなかない。叔父(父の兄)は、戦死したが、家では、父の口から叔父の話を聞くことはなかった。それは祖母への気遣いだったのか、変なタブー感を感じることさえあった。

40年目の復帰の日に、ふと思い出して、小説「てぃだぬふふぁ」(「太陽の子」)を久しぶりに読んでみた。沖縄出身の子が差別に負けないで生きる姿を神戸の「おきなわ亭」を舞台に「灰谷健次郎」が描いた小説である。

長男兄々の自殺・教師としての悩み・翌年の母の死、死の直前まで一緒にいながら、救いの手をさしのべられなかった後悔。死に場所を沖縄に決めて渡ったのか。本土復帰直後の沖縄を、37歳の灰谷健次郎は放浪した。ときに空き家で寝泊まりしては、キビ倒しやパインの皮むき、土木作業などで糧を得た。

県民45万人のうち3分の1の16万人が犠牲となった沖縄戦、軍の命令で移住させられた大勢の住民がマラリアで命を落とした八重山、集団自決のあった慶良間(けらま)・・・。戦争体験を聞き、ショックを受けた。 

思い詰めた灰谷のただならぬ様子を察してか、戦争で身内を亡くしたおばあたちが、逆に励ましてくれる。「あがぃ兄々、自分を責めて生きても死んだ人は喜ばんさ〜、誰も幸せにならんさ〜ね〜」「沖縄のおばあたちが元気に暮らすのは、戦争で死んだ人たちの分も生きるためだよ」おばあに、「命どぅ、宝(ぬちどぅ・たからどぅ)」を教えられたんじゃないのかなあー。そこで、命を洗われて、生きようとなったようだ。

戦後のヤマトでは謂れのない差別があった。この小説には、戦争を背負い苦しみながらも、助け合って生きてきた沖縄の人の心が中心に描かれている。「おきなわ亭」に集まる沖縄出身の人達は皆、きむかぎぃぴとぅ(心優しい人達)だけど、それぞれに戦争の傷跡を心の奥底に引きずっている。決して、ハッピーエンドな話ではない、読み終えると、つんだらーさー(かわいそう)ではなく、き゜むぐるさぁ(肝苦さー・心苦しさ)な感情が胸の奥深くに宿った。

沖縄の苦しみは、なかなか伝わらないまま。もしかして、今以上に伝わりにくくなっていくのか?沖縄生まれで、沖縄育ちの私には、微力だとしてもこの思いを叫び続けていく「義務」があるのかもしれない。

今年も、もうすぐ、慰霊の日。

編集後記

松谷初美(下地・高千穂出身)

宮古では6月17日に「第22回サニツ浜カーニバル」が、与那覇のサニツ浜で行われたようですね。宮古馬による浜競馬や角力、綱引きなどが行われた様子が宮古毎日新聞に載っていました。サニツ浜になっている与那覇湾は、この夏、ラムサール条約に登録が予定されていますね。ぷからすもの(うれしきこと)です。

それからこの秋から始まるNHK朝ドラ「純と愛」の一回目の宮古島ロケが行われ19日に終了したということです。地元の高校生たちも出演するとのこと。楽しみですね〜。

東京では9日に、関東上野郷友会と下地郷友会の合同の総会・懇親会が行われ100名近くが うがなーり(集まり)親睦を深めました。マツカニ(棚原芳和)さん率いる三線教室のみなさんによる、あーぐ(歌)や菜の花のソロ、上野出身の演歌歌手、うえち雄大さんの歌謡ショーもあり、大盛り上がり。会場では久しぶりの再会を喜ぶ姿や新しく若い家族の参加もあったりと、だいず(大変)にぎやかでしたよ〜。

さて、今回の くまかまぁ のーしが やたーがらやー?

宮古の自然を愛し、くまなく観察しているカニさんの便りからは、細かな んなま(今)の宮古の様子が伝わってきましたね〜。知らない宮古もいっぱいでした。なびがーす(くまぜみ)も鳴きはじめ、夏がそこまできていますね。

淳さんの「くゆんバッチ」のこと、初めて知りました!日めくり暦の台紙は確かに上等そう〜。昔の遊びの様子などを聞くと知恵と工夫が やまかさ(いっぱい)で、わくわくしますね〜。懐かしく思い出された方もいらっしゃったのではないでしょうか。

もうすぐ「慰霊の日」。沖縄戦の組織的戦闘が終結したことにちなんだ記念日で、沖縄では公休日となっています。「沖縄生まれで、沖縄育ちの私には、微力だとしてもこの思いを叫び続けていく『義務』があるのかもしれない」というキムキムさんの言葉に「まーんてぃーやー(その通りだなー)」と。ばっしゃーならんやー(忘れてはいけないですね)

今号の感想をぜひお聞かせくださいね。

もちろん掲示板の書き込みも まちうんどー(待っていますよー)よろしくお願いします!

今回まい しまいがみ ゆみふぃーさまい すでぃがふー!
(今回も 最後まで お読みくださり ありがとうございました!)

次号は7月5日(木)発行予定です。
がんずぅかり うらあちよー(お元気でいらしてくださいねー)あつかー、またや〜。

メールマガジン
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
  • くまから・かまから vol. 269
  • くまから・かまから vol. 271

この記事を書いた人

松谷初美のアバター 松谷初美

関連記事

  • くまから・かまから vol.447
    2019年12月19日
  • くまから・かまから vol.446
    2019年12月5日
  • くまから・かまから vol.445
    2019年11月21日
  • くまから・かまから vol. 444
    2019年11月7日
  • くまから・かまから vo.443
    2019年10月17日
  • くまから・かまから vol.442
    2019年10月3日
  • くまから・かまから vol.441
    2019年9月19日
  • くまから・かまから vol.440
    2019年9月5日
アーカイブ
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月
  • 2018年4月
  • 2018年2月
  • 2018年1月
  • 2017年12月
  • 2017年11月
  • 2017年10月
  • 2017年9月
  • 2017年8月
  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月
  • 2017年2月
  • 2017年1月
  • 2016年12月
  • 2016年11月
  • 2016年10月
  • 2016年9月
  • 2016年8月
  • 2016年7月
  • 2016年6月
  • 2016年5月
  • 2016年4月
  • 2016年3月
  • 2016年2月
  • 2016年1月
  • 2015年12月
  • 2015年11月
  • 2015年10月
  • 2015年9月
  • 2015年8月
  • 2015年7月
  • 2015年6月
  • 2015年5月
  • 2015年4月
  • 2015年3月
  • 2015年2月
  • 2015年1月
  • 2014年12月
  • 2014年11月
  • 2014年10月
  • 2014年9月
  • 2014年8月
  • 2014年7月
  • 2014年6月
  • 2014年5月
  • 2014年4月
  • 2014年3月
  • 2014年2月
  • 2014年1月
  • 2013年12月
  • 2013年11月
  • 2013年10月
  • 2013年9月
  • 2013年8月
  • 2013年7月
  • 2013年6月
  • 2013年5月
  • 2013年4月
  • 2013年3月
  • 2013年2月
  • 2013年1月
  • 2012年12月
  • 2012年11月
  • 2012年10月
  • 2012年9月
  • 2012年8月
  • 2012年7月
  • 2012年6月
  • 2012年5月
  • 2012年4月
  • 2012年3月
  • 2012年2月
  • 2012年1月
  • 2011年12月
  • 2011年11月
  • 2011年10月
  • 2011年9月
  • 2011年8月
  • 2011年7月
  • 2011年6月
  • 2011年5月
  • 2011年4月
  • 2011年3月
  • 2011年2月
  • 2011年1月
  • 2010年12月
  • 2010年11月
  • 2010年10月
  • 2010年9月
  • 2010年8月
  • 2010年7月
  • 2010年6月
  • 2010年5月
  • 2010年4月
  • 2010年3月
  • 2010年2月
  • 2010年1月
  • 2009年12月
  • 2009年11月
  • 2009年10月
  • 2009年9月
  • 2009年8月
  • 2009年7月
  • 2009年6月
  • 2009年5月
  • 2009年4月
  • 2009年3月
  • 2009年2月
  • 2009年1月
  • 2008年12月
  • 2008年11月
  • 2008年10月
  • 2008年9月
  • 2008年8月
  • 2008年7月
  • 2008年6月
  • 2008年5月
  • 2008年4月
  • 2008年3月
  • 2008年2月
  • 2008年1月
  • 2007年12月
  • 2007年11月
  • 2007年10月
  • 2007年9月
  • 2007年8月
  • 2007年7月
  • 2007年6月
  • 2007年5月
  • 2007年4月
  • 2007年3月
  • 2007年2月
  • 2007年1月
  • 2006年12月
  • 2006年11月
  • 2006年10月
  • 2006年9月
  • 2006年8月
  • 2006年7月
  • 2006年6月
  • 2006年5月
  • 2006年4月
  • 2006年3月
  • 2006年2月
  • 2006年1月
  • 2005年12月
  • 2005年11月
  • 2005年10月
  • 2005年9月
  • 2005年8月
  • 2005年7月
  • 2005年6月
  • 2005年5月
  • 2005年4月
  • 2005年3月
  • 2005年2月
  • 2005年1月
  • 2004年12月
  • 2004年11月
  • 2004年10月
  • 2004年9月
  • 2004年8月
  • 2004年7月
  • 2004年6月
  • 2004年5月
  • 2004年4月
  • 2004年3月
  • 2004年2月
  • 2004年1月
  • 2003年12月
  • 2003年11月
  • 2003年10月
  • 2003年9月
  • 2003年8月
  • 2003年7月
  • 2003年6月
  • 2003年5月
  • 2003年4月
  • 2003年3月
  • 2003年2月
  • 2003年1月
  • 2002年12月
  • 2002年11月
  • 2002年10月
  • 2002年9月
  • 2002年8月
  • 2002年7月
  • 2002年6月
  • 2002年5月
  • 2002年4月
  • 2002年3月
  • 2002年2月
  • 2002年1月
  • 2001年12月
  • 2001年11月
  • 2001年10月
  • 2001年9月
  • 2001年8月
  • 2001年7月
  • 2001年6月
  • 2001年5月
  • 2001年4月
  1. ホーム
  2. メールマガジン
  3. くまから・かまから vol. 270

© 宮古島方言マガジン「くまから・かまから」

  • Presented by 宮古島.JP
  • Cooperate with 宮古島文化協会
  • Powerd by ONEsta
目次