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くまから・かまから vol. 335

2024 7/15
メールマガジン
2015年3月5日2024年7月15日

こんにちは〜。
初夏のような陽気かと思えば、冬のようなぴしさ(寒さ)になったりの宮古です。それが春とのばーだね〜。いろいろな人生模様が見られる、くま・かまです。
きっとぬふーぬふ(温かく)なりますよ。今号もお楽しみくださいね〜。

目次

北海道に嫁ぐ宮古生まれの娘

キムキム(平良・西里出身)

「あなたは、いつもかぞくみんなにおいしいごはんをつくってくれますよって、ここに しょうします」

娘が小学校1年生のとき、母の日に「かたたたきけん」と一緒にくれた賞状。28年前に宮古病院で産声をあげた娘は、小さい頃から、周囲を喜ばせるのが好き、手のかからない「おりこうさん」だった。

あすがどぅ、がーずー。どぅが、あんちーてぃ うむうつぅか聞かん。(だが、強情で、自分がこうだ、と思ったら聞かない)・・・誰に似たんだか?

一昨年の夏、「家族みんなに会ってほしい人がいる」彼氏を紹介したいという娘。「どんな男だ、変な奴じゃないだろうな?」「鼻に、牛みたいな輪っかをしてるような奴だと会わんよ」動揺を隠せない夫は、心なしか声が震えているように聞こえた。「変な人ってどんな?お父さんより変な人っている?」と、あえなく撃沈。かくして、ご対面の日が来た。

娘と一緒に現れた青年は、背が高く今どきのイケメンがま。(あば、あぱらぎにしぇいがまさいが・・・とりあえず鼻に輪っかはないし、耳にピアスもない、見た目は合格かねぇ)いやいや、男は見た目じゃないんだ。硬い表情を崩さない夫を尻目に、妹は、「お〜格好いいじゃん。お姉ちゃん、やるな〜」と、おおはしゃぎ。

お互いの友人の結婚式で1年前に出会い付き合いが始まったという。食事の前に、イケメン君はとても緊張した様子で、「1年前からお付き合いさせていただいています。ご挨拶が遅くなりましたが、今後もお付き合いさせていただくことをお許し下さい」と、正座して頭を下げた。

おごえ〜、あんちぬ まいふかにせい、みぃーやーみぃん。
(こんな素敵な青年に会ったことがあっただろうか?)

さっきまで、くぱーくぱだった(固かった)夫は、「いや〜、よ、よろしくお願いします」と顔が緩んだ。足をくずして、さぁ〜食べよう、となっても、イケメン君は、正座のまま。自分の家族のこと、仕事のこと、今まで生まれ育った故郷のことを笑顔で話してくれた。

上機嫌で帰宅した夫は、「いい奴だな、若い頃の俺にそっくりだ、やっぱり、なんだかんだ言っても娘は父親に似た奴を選ぶんだなぁ・・・」
「?????」

沖縄を離れ、大和嫁になり30年。親や兄弟姉妹と遠く離れ、暮らしの中に沖縄行事を感じることが少なかった私は、秘かに、娘達は嫁いでも近くで暮らして欲しい、いつでも手助けできるところにいたい、と思っていた。

北海道・・・遠い、寒い。あがいたんでぇー、なんで北海道?同じ遠いなら沖縄がいいさ〜、寒いところなら新潟でいいじゃない?(夫は新潟生まれ)ぴんなぎ気持ちを抱えて、見守るしかなかった。

それから、二人の交際は順調に進み、昨年の夏、両家の家族で食事、結納をすませた。結納の日は、夫の誕生日、娘は手作りのケーキを2個準備して、(あば、なんで2個か?)彼のお母さんと誕生日が一緒という偶然も重なり、にわかに運命みたいなものを感じながら。

春になると嫁ぐ娘、「おめでとう」と「いっちゃうの?」が行ったり来たりの思いに「んにゃ、子離れができていない」と自分にカツをいれている。

私が結婚した時の「うや(親)」の気持ちを初めて考えながら。娘が選んだ私にとって初めての息子にまかせよう。二人で築いていく家庭さーね。おめでとう。

ジュウロクニツ(十六日祭)

松谷初美(下地・高千穂出身)

明日(6日)は、旧暦の1月16日。宮古では「ジュウルクニツ」と言って、あの世のお正月だ。(1月15日までは松の内でこの世のお正月。それが過ぎた16日をあの世のお正月とした!?)

正月は、今では新暦でやるのがほとんどだが、ジュウルクニツだけは、現在でも旧暦でやり、この日に合わせて帰省する人も多い。

この日は学校も半日。(すごいね〜。今でもそうなんだね)午後2時頃から やーでぃ(家族)そろってお墓に行く。

じゅうばく(重箱)に、揚げ豆腐、天ぷら、煮物、三枚肉の煮付け、かまばく(かまぼこ)、ぱなだく(タコやイカを赤く染めたもの)などを詰めてもうひとつの じゅうばくには、餡餅を9個。他には、黒線香、酒、水、かびじん(紙のお金)にマッチ。ゴザなどを持ってお墓へ。

前もってきれいに掃除した墓の前に、先のものを供え、それから墓の外に、やーむと(おじいの実家)の神様、んまやー(おばあの実家)、おばあやー(母の実家)、それから父の弟や妹たち、それぞれの神様を見立て木の枝を置き、そこに、お供えの料理を分けたもの、黒線香、酒、水を供える。

そして、かびじん(紙のお金)を焼き、終わったら、父の「てぃ ゆかみる(手を合わせて)」の合図で、お墓に向かって皆で トートーイと手を合わせ拝む。その後は、他の神様たちにも手を合わせる。

父が言うには、最近は、神様がたくさんになったから、「うつざ んーな くまんかい うがなーら さまち(親戚みんな、こちらに集まってください)」と声をかけ一カ所にするそうな。

手を合わせたら、みんなで じゅうばくの料理や餅に舌鼓をうつ。やらびぱだ(子どもの頃)には、取り皿の替わりに近くにあった、木の葉っぱを使ってなーいた。

雨が降った時や、その日が「申の日」に当たった場合(申には、去るの意味もあり、あまり良いとされないようだ)墓には行かず、家の近くの野でやったり、家の中でやったりする。今年は「申の日」にはあたってないので天気さえよければお墓に行く予定だ。

♪じゅうるくにつ の あぎぱんびん あつこーこーてぃ ふぁーばーやー(ジュウロクニツの天ぷら 熱々で食べたないなー)と歌っていた やらび(子どもの)は今、ぱんびんをあげる番である。

原風景と祖母と

Motoca(平良・下里出身)

子どもの頃、うちには毎日のように、祖母の とぅんからあぐ(おしゃべり仲間)のおばさんたち(ご近所とか親戚とかのおばぁ世代だが、慣用的におばさんと呼んでいた)が誰かしら、うちを訪ねてきていた。

ちょうき(おやつ)をつまみながら むぬゆん(おしゃべり)に花を咲かせる彼女たちの ゆかーらん びじー みーうたー(そばに座って見ていた)。方言と笑い声が飛び交う、そんな昼下がりの ばんたがやー(我が家)の光景が、私の原風景だ。

私が宮古を離れた後も、彼女たちの日課は続いていたが、やがてどこどこのおばさんは亡くなり、どこどこのおばさんは沖縄本島にいる息子家族に引き取られていった、という話を耳にするようになり、いつの間にか、宮古に帰っても、ばぁちゃん友達にも会わなくなった。

祖母も10年近く前に宮古を離れ、それからまもなく沖縄本島の介護施設に預けられた。私の原風景は記憶の中だけのものになってしまった。

その祖母は先月、旅立った。数えで101歳(満99歳)だった。なぜだか寂しい気持ちにはならない。ばぁちゃんやおしゃべり仲間のおばさんたちの記憶は、それだけ私の中で鮮明に、生き生きとしているから。あの原風景が心の中にあったからこそ、私は「方言のことをちゃんと勉強しよう」と決めたのだ。

祖母と最後に話をしたのは、1月下旬だった。スマートフォンの映像付き通話機能で、顔を見ながら話すことができた。

「あんたたちはみーんな、ばぁちゃんという根っこから生えた枝葉だよ」そんな言葉を繰り返していた。入院して、ちょっと弱気になっているのかなぁ、と思っていた。後から母がいうには、あんたがカジマヤーの時に歌ったからさぁ、とのこと。

4年前、祖母のカジマヤー(数え97歳の生年祝い)のときの余興で、豊年の歌を歌った時に、「豊年の歌」の歌詞をひとつ付け足して祖母に贈ったのだった。そのときのことを書いたくま・かま(Vol.254「ばぁちゃんのカジマヤー」https://miyakojima.jp/kumakara-kamakara/vol-254/ )のプリントを、祖母は何度も読み返し、大事に取ってあったのだそう。

「ウプヅ ンナ ニーユ パラシ ンビィ スゥラ ンナ カギバナド」
(大地には根を張らせて、伸びた枝には美しい花だよ)

あがい、どぅーぐりーさ!気恥ずかしすぎて、3年半見返しもしなかった出来心満載の歌詞。出来心だったけど、本心でもある。

時が流れ、世代が移ろう。根から養分を吸い上げた枝葉の先に実った果実から、新しい種が生え出る。ばぁちゃん、あなたの5人目の うぷんまが(ひ孫)が、いま私の ばた(腹)の奥で、私のことを蹴飛ばしているよ。今度帰省する時には、連れて手を合わせに行くからね。待ちうりよー(待っていてね)。

ばいばい、ばぁちゃん。

編集後記

松谷初美(下地・高千穂出身)

サトウキビの収穫も終盤になってきました。きれいさっぱり、そーきー(何もない広々)とした畑があちこちに広がっています。ハーベスターが主流になってきたとはいえ、手刈りをする農家も見られます。丁寧に積み上げられた ぶーぎ(キビ)を見ると、本当にお疲れ様。という気持ちになりますね。また、畑の脇などには、オキナワシャリンバイの白い花や、ナスタチュームのオレンジ色の花やトベラの花なども見えます。あ、2〜3日前にはガイチン(セッカ)も飛んでいました。

前号でも書きましたが、先月は宮古島市文化協会主催の「みゃーく ワーくショップ」が全四回行われ全てに行ってきました。ー温故知新 島の自然と文化を味わうー がテーマでしたが、まさに古きを訪ね新しきを知る上等機会となりました。掲示板でそれぞれのワークショップの様子を書き込みしてありますので、どうぞご覧くださいね。

今年も間もなく3月11日がやってきますね。東北でくま・かまを読んでくださっている方もいらっしゃいます。お元気ですか?遠くから想うことしかできませんが、忘れずにいたいと思います。

さて、vol. 335 のーしが やたーがらやー?

キムキムさんのお譲さん、ご結婚ですね〜。おめでとうございます。本当にいいお嬢さんですね。遠く離れることへの複雑な想い、自分にカツを入れ親としてちゃんとしようという想いにウルウルきました。宮古生まれのお嬢さん。北海道でも頑張れることでしょう。ご多幸をお祈りします!

ジュウルクニツについてはこれまで何人かのライターが書いていますが明日に控え、改めて両親に聞いてみました。やり方は地域によって違うかもしれませんが、宮古は、あのゆーまい、このゆーまい んーな ぴきゃーりて(あの世もこの世もみな繋がって)いますね。今年も宮古のお墓はにぎやかだはず〜。

Motocaさんが書いたカジマヤーのおばあちゃん、亡くなられたとは。驚きましたが大往生でしたね。幼い頃おばあちゃんと過ごした日々が、Motocaさんの中に息づいて、根から生えた枝葉は、また新しい芽を出そうとしていますね。おばあちゃんも大喜びのことでしょう。おばあちゃんへの深い想いが伝わってきました。

今号も、しまいがみ ゆみふぃーさまい すでぃがふー!
(最後までお読みくださり、ありがとうございました!)

次号は3月19日(木)発行予定です。どうぞ、お楽しみに!
明日は啓蟄。春はすぐですね。がんづうで(元気で)いましょう〜。あつかー、またや〜。

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