こんにちは〜。
早くも11月になりましたねー。 がんづぅかり うらまずなー(お元気ですかー)?
vol.399お届けします。ぬかーぬか(ゆっくり)ゆみふぃーさまちよー(ゆっくりお読みくださいねー)
とぅびゃす
松谷初美(下地・高千穂出身)
知り合いと方言の話をしている中で「ぴずき」という聞いたことのない言葉が出てきた。
それは、松の木の根っこに、松脂が固まった部分のことで、とてもよく燃えるのだという。昔は燃料として使っていたとのこと。「ぴずき」とは「火付け」という意味か?
父親に訊いてみたところ、うちあたりでは「とぅびゃす」と言うとのことだ。「とぅびゃす」?火とはぜんぜん関係のないような言葉だが、どうしてそう言うのか知らないとのこと。
「昔は、うぷに山(大野山林)によく取りに行ったよ。松の木の根に傷がつくと松脂が出てきて根っこに付く。それを切ってきて燃やして、灯りに使ったさ。いざり(漁り)に行く時は、サトウキビを絞ったあとの搾りがらを30センチくらいに切り、数本揃え並べて、その上に「とぅびゃす」を数個置いてその上からまた搾りがら数本乗せ、綱で巻いて松明(たいまつ)のようになるからそれを持って行ったよ。2時間くらいはもったはずよ」とお父。
思い出した!そういえば、宮古方言研究会(通称:新里教室)の新里博先生が、松明(たいまつ)は たいうまつ(束火)と関係があるのではないかと話されていた。「宮古方言に関する小論集」にそのことが詳しく書かれている。(P145〜P149)そして、最後に、「松の古木の切株に松脂が染み込み、べっこう色になったものを・・・とぼし(灯)/トボス/[tobosi]と言っていることにも留意すべきであろう」と書いてある!そっか、伊良部で言う「とぼす」がうちのほうでは「とぅびゃす(灯)」なのだ。納得。
お父は続ける。
「隣のおじいが、いざりの名人で、まいのいん(前の海、川満の海のこと)に付いて行って習ったさ。おじいは、海の中のことをよく知っていて、さーさー(さっさ)と歩いて行くけど、自分は、うとぅるす かいば(怖いから)岩に沿って歩いて、おじいが見えなくなると、おじい、おじいとだんばん(大きな)声で叫んで必死に付いて行った」
「それから、何度も海に行って、自分でも捕れるようになった。あっずぅ(アイゴ)とか つぬがん(カニの種類)を捕ってきたけど、覚えているか?」
「覚えているよー」と私。「朝起きたら、むいぞーき(竹で編んだ丸く浅いかご)の中にたくさんあったよね。あの魚の味とカニの味は、ばっしらいんさー(忘れられないさー)」
「とぅびゃすで思い出したけど」とお父。「ウギャスギー(モクタチバナ)の枝を乾燥させたら、よく燃えて、火持ちがいいよ。夜は熾火にして土をかぶせておいて翌朝、また使ったさ」
「とぅびゃす」や「ウギャスギー」を燃やしていたのも、昭和5年生まれの父が若い頃の話だ。私が子どもの頃には、ランプや電気を使うようになっていたから、松明を自分で作っていたとは、まったく すっさったん(知らなかった)。
んきゃーん(昔)の人たちは、島にあるものをフルに活用して生活してきた。その知恵と工夫たるや本当にすごいなーと思う。そして、言葉には語源があり意味があるんだなぁとしみじみ。
◇あの話をもう一度
マツカニ(上野・高田出身)
「『古見の主』 どぅかってぃ解説」vol.162 2007/12/20
今回は「古見の主(くんぬしゅう)」というリズミカルな唄を取り上げました。宮古民謡の第一人者國吉源次さんがライブでよく唄うので、聞いたことがある方も多いとおもいます。唄の途中で「ウリッ」という力強いハヤシをご自分でいれるあの唄です。
1. ばんぬ かみかみやよ どぅぬうりゃが ぬうりゃがよ
(私は亀 亀です 身体を(浜に)乗り上げようと)
※ハイシュヌ カミヤ ヤイマヌ シュド ユスマヌシュウ(ハヤシは2番以降省略)
2. あらぱなぬ ぬうす゜あよ ぱづみてぃぬ ぬうす゜あよ
(最初に上がるのは 初めて 上がるのは)
3. くんぬ まいどぅます゜よ かなすばが とぅます゜よ
(古見村の 前泊だよ 恋しい私の 前泊だよ)
4. ばたやみどぅ ぬうす゜たよ っふぁ なさてぃどぅ ぬうす゜たよ
(お腹が痛くて 上ったよ 子供を産もうと 上がったよ)
5. くんぬしゅうが いんぐな まないしゅうがさうとぅりゃ
(古見の主の海の係り 物静かな主の 釣竿の係り)
6. すとぅむてぃんな ぴゃあしうき あきしゃるんな ぴゃあしうき
(朝は 早く起きて 明け方には 早起きをして)
7. いんゆ まあり みいりばどぅ ぱまゆ まあり みいりばどぅ
(海の様子を 見ていると 浜を歩き回っていると)
8. ばんゆ みたんがら かみゆ みたんがら
(私を 見つけたらしく 亀を 見たらしく)
9. くんぬ しゅうが みなかんかい まないしゅうが ゆさすんかい
(古見の主の 庭へ おとなしい主の 庭先へ)
10. ばんゆ むたぎぬうし かみゆ さあぴすき ぬうし
(私を 持ち上げて乗せ 亀を ひきずり 乗せ)
11. かたな ならしうりばよ まなつぁ ならしうりばよ
(刀を鳴らしているので まな板を 鳴らしていたので)
12. ばがんぬつ きゅうだら うぷみ うてぃ きゅうだら
(私の命も 今日までだ この命 落とすのは 今日だ)
(解説)
まず、大まかな意味から
私は亀です。初めて浜に上がるのはなつかしい古見の前泊です。
おなかが痛くて子供を産む為に上がりました。
すると物静かな古見の主に仕える魚釣りをする係が朝早起きして
海の様子を見に歩いてきました。
その時に私を見つけたらしく「庭にひきずり上げられて刀やまな
板を取り出しているので自分の命も今日までだと覚悟をしていた」
ここまでが12番です。
この後の歌では、覚悟をしていたが、古見の主の奥様の情けによ
り助けられ、その恩に報いるべく古見の主の航海の際はいつも船
に付き添って航海を安全に導いたと歌われています。
「平良市史」には37番まであり、その辺をうかがい知ることができるとおもいます。機会があれば御一読を・・・。
ハヤシの部分は「もしもし亀さん、八重山の主だよ、四島の主ですよ」と、こんな感じでどうでしょうか?
古見の主は四島の主のことで仲宗根豊見親の時代に狩俣・島尻・池間・大神を治めて仁政を施し人徳を集めた領主だったそうです。
学問に秀でていたことが「四島の主」という民謡で唄われています。豊見親に重用され西表の古見村へ派遣されて造船の監督をしていたそうで、その時の出来事を唄ったものと思います。通常は6番までが唄われています。
さぁ、では、昔々の宮古島に思いを馳せながら、唄ってみますか。
ジャング、ジャング・・・
オワリはじまり
R(平良・西里出身)
私の うや(父)は、15年前、うーずん(初夏)の頃に亡くなった。うや(父)との別れの時間は、2週間あったのだが、うや(父が)この世を去った時に、やり尽くせなかった思いとなり後悔を残した。
その2年後、あんな(母)が亡くなった。あんな(母)との別れの時間は、11か月あった。うや(父)の時のような後悔はしたくないと思い、あんな(母)との残りの時間を過ごしたが、やはり大きな後悔を残した。
そこで私は、否応がなく学んだことがある。
「私は、ぷりむぬ(バカ)だ!」
うや(父)との最後の時間で一度学習し、き゜む(心)に刻んだはずなのに、また同じ思いをしてしまう、なんて私は、ぷりむぬ(バカ)なんだろう。
まだ両親が生存していた頃の私は、できない事にぶつかりそうになるとわかると、上手く逃げて、問題を乗り越える苦労を避けまくっていた。それでやり過ごすことができていたので、できない自分を知ることはなかった。
しかし、うや(父)とあんな(母)の死は、こんな私に「大きな後悔」という形でできない事があることを目の前に見せて教えてくれた。この2度の「大きな後悔」は、私の中にある「殻」を破ってくれたように感じる。
それ以降、できない、わからない事から逃げることがなくなった。「私は、ぷりむぬ(バカ)だ、だから教えてほしい、助けてほしい」と素直に他人を頼ることができるようになった。
それから、やまかさ(多く)の学びの機会が私に訪れた。
健康問題に向き合った時、まず「食」を見直した。その過程でいろいろなアドバイスや協力を周囲から得ることができた。
「食」だけでなく、同時に「衣」「住」も見直さないといけないこと、身体には生活の仕方・精神状態・環境全般が影響すること、お医者さんは、病気を治してくれる人であって、病気にならない身体作りは自分でしなければならないこと、何より自分は使命を持って生まれ、生かされている存在であること。
うや(父)とあんな(母)がこの世を去ってからの13年という時間に学んだことが、最近、点と点で結ばれ、線となり、面となっていく様を見せてくれている。私は、んなま(今)、実に楽しい時間を過ごさせてもらっている。
父と(うや)母(あんな)がこの世を去った時、別れの悲しみに包まれたが、大きなプレゼントを残してくれたことに気づく。
「死は終わりではない、始まりだ。」
誰かが言ったこの言葉を実感せずにいられない。
かりゆし58というグループの歌「オワリはじまり」という歌がある。娘の中学卒業の前後で知り、だいず(大変)好きになった歌だ。ご存知の方もいらっしゃると思うが、ぴっちゃ(少し)紹介させてもらいたい。
もうすぐ今日が終わる、やり残したことはないかい 親友と語り合ったかい? 燃えるような恋をしたかい? 一生わすれないような出来事に出合えたかい? かけがえのない時間を胸に刻み込んだかい?・・・ 今動き始めたものやもう二度と動かないもの 今灯り出した光や静かに消えていく光 この世の向こうで新しい朝が世界に降り始めている 旅立ちの時はいつだって少し怖いけど これも希望のかたちだってちゃんと分かっている 思い出に変わるのはきっと最後の最後さ 笑って「さよなら」を言えたらいいな・・・
人生の節目に聞くと共に過ごした家族や仲間との思い出の数々が頭に浮かび なだ(涙)が出て、新たな出発の時に頑張ろうと思う歌だ。
このたび、人生後半戦に差し掛かり、私は、35年勤めた会社を辞めるという自分にとっては大きな節目を準備した。
沖縄本島の短大を卒業後、宮古島との関わりを求めてこの職に就いた。これまで多くの喜びと試練を与えてくれた同期入社メンバー・先輩・後輩のみんなに感謝しつつ、これからの新たな時間の流れの中で新しい自分をまた発見したいと思い、自分に期待しているところだ。
この機会に是非、伝えておきたいことがある。あんな(母)の死後、私の宮古島との関わりを表現させてくれた松谷さん、また「くま・かま」に投稿した私の拙い文章を読んでくださった皆さん、心より感謝します。
たんでぃがーたんでぃ(ありがとうございました)。
お知らせ
D介
■『ポストカードアート展 ぴん座 2017』開催
ポストカードアート展ぴん座は、オリジナルのポストカードの展示と販売を行うアートイベントです(合同企画展)。身近で手軽な素材であるポストカードをテーマとし、「送る」+「贈る」で伝えるコミュニケーションの提案と、そこに描かれる宮古島発のアートを応援することをコンセプトに始まりました。今年2017年はぴん座の創設10年の節目にあり、3年ぶり7回目の開催をさせていただくこととなりました。
『ポストカードアート展 ぴん座 2017 ―10th anniversary PINZA Since 2007―』
日 程 | 2017年11月23日(木・祝)〜26日(日) |
時 間 | 12:00〜20:00(最終日は19:00まで) |
会 場 | 花ギャラリー TOMOE(西里通り) |
入 場 | 無料 |
編集後記
松谷初美(下地・高千穂出身)
10月も終わりの頃に台風が2週続けてきましたね。そちらは大丈夫でしたかー?宮古は、台風から離れていましたが、結構風が吹いてました。台風が去った後からは気温が下がり、クーラーがいらないくらいになっています。
去る10月29日は、第3回、第4回「すまふつ普及人材養成講座」でした。今回の講師は、第3回が砂川春美さん(宮古島市文化協会方言部会長)の「自分の事典を作ろう〜衣・食・住・行事編〜」と題しての講座。第4回は、本永清先生(宮古島市史編纂委員)による「自分の事典を作ろう〜宮古の島名、季節編〜」と題しての講座でした。懐かしい方言や、目からうろこの「宮古」の名称についてのお話しなどが聞けて、とても勉強になりましたよ。第5回、6回は今度の日曜日(11月5日)です。どなたでも参加できますので、ぜひ!
講座が終わった後は、クイチャーフェスティバルが行われているJTAドーム宮古島へ。初の屋内会場となったドームの中は、やまかさ(たくさん)の人人。伝統のクイチャーと創作クイチャーが次々繰り広げられ、クイチャーの魅力があふれ出ていました。間近で見るクイチャーは、迫力がありました。若い人たちも子連れでたくさん来ていていましたよ。なぜ、宮古ではクイチャーなのか、歴史も含めて次世代に繋げていきたいものですね。
さて、今回のくま・かまぁ のーしが やたーがらやー?
「ぴずき」「とぅびゃす」どちらも初めて聞く方言でしたが、新里先生が話されていたことと結びつき、今さらですが「そういうことだったのか」と膝を打った次第。消えゆこうとしている言葉を拾っていけたらと思っています。
あの話をもう一度は、マツカニさんの解説「古見の主」をお届けしました。民謡は、方言に強い人でも、耳からだけだとなかなか理解しにくいものもありますが、解説が入るとなるほどーと思いますね。ものがたりになっているのも面白いなーと思いました。歴史の勉強にもなりますね。
Rさんの「オワリはじまり」は、歌だけでなく、Rさん自身のことでもあったんですね。Rさんは2007年からくま・かまのライターになってくださり、とても心温まるお話しを やまかさ(たくさん)書いてくださいました。感謝の気持ちでいっぱいです。心より、たんでぃがーたんでぃ。新しい道にも素敵なことがたくさんありますように!
D介さんからお知らせが届きました。久しぶりのポストカード展の再開ぷからすむぬやー(うれしいですね)。どんな方たちが参加されて、どんなポストカードが見られるのか楽しみです!ぜひお出かけくださいね〜。
貴方はどんか感想をもたれましたか。感想もぜひ、お聞かせくださいね。
掲示板への書き込みともお待ちしてます!投稿もぜひ!
きゅうまい しまいがみ ゆみふぃーさまい すでぃがふー!
(きょうも 最後まで 読んでくださり ありがとうございました!)
次号は、いよいよ400号!11月16日(木)発行予定です。あ、特集「宮古の好きなところ」(仮)への投稿もお待ちしていますよ〜。よろしくお願いします!
きゅうまい ぞう(今日も佳い)1日でありますように!あつかー、またいら!