みなさん、こんにちは。んにゃ、三月どお(もう三月ですねー)。今回は、いでゃい(出会い)や ばかーり(別れ)ぬ ぱなす(話)。しまいぎぃ ゆみふぃーさまちー。(最後まで読んでくださいね)
「いでゃあい(出会い)? <コーラルピンクの知念かおりさん>」
宮国優子
私が出会った宮古人はダウ(たくさん)いる。私も宮古人なので当たり前だけど。その中でも仕事で定期的にお世話になっている方に囲碁棋士の知念かおりさんがいる。宮古人なら誰でも知っているかおりさん。アエラの表紙を飾った宮古人はこの人くらいではなかろうか。最近では女流棋聖戦で三度目の防衛を果たした。プライベートでは三児の母であり、棋士の揚嘉源八段の妻でもある。はぁ、だいず。もうこれだけでも息切れしそうなくらいのハードな毎日を想像する。私だったらその重圧で押しつぶされる。絶対。100%。
でもこのすんばらしいタヤ(凄い)肩書きを微塵も感じさせない、小柄で可愛らしい少女のようなかおりさん。オーラがコーラルピンクな人。無邪気なのに謙虚で礼儀正しい。勝利コメントは実家の家族や自分の家庭の話を交えながらということも多い。意地悪な私は有名人のインタビューを読んだりすると「家庭的な面をアピールしたいのかな…」というよこしまな考えを持つことも多い。でもそんな悪い考えは彼女の笑顔で吹き飛ぶ。いつもその曇りのない瞳に吸い込まれそうになる。
彼女の人生は勝ち負けのはっきりしている厳しい世界。気の強さも持ち合わせているだろうし、ガーズー(負けず嫌い)だとも思う。しかし「悔しさをバネに」という感はなくて、ますます不思議になる。立場がある分、余計な事も耳にするんだろうに。でもこの人はそれを鏡のように跳ね返してしまう力を持っているんだはず。その強さは悠々として、マーンティ(実に)母性的なのだ。
彼女の軸足はたぶん家族や応援してくれる人のような気がする。そして貰った愛情を増幅して与える事の出来る人だとも思う。愛情をそそぐというのも大事だけど、愛情を認識できるという資質はもっと大事なんだと思う。与えて貰ったから人にも与えられるとも言える。その愛情連鎖ぶりは、まじで宮古島の良心だと思う。それが宮古で培われたものかどうかはさておき、こんなズミ人(スーパースペシャルな人)を輩出できた知念ファミリーは勿論のこと、宮古島は奥が深い…と、私は思いこんでいる。そして今度会ったら、爪のアカを貰おうと本気で画策している。ちょうだいね。かおりさん。
<知念かおり プロフィール>
昭和49年7月28日生。沖縄県平良市出身。時本壱八段門下。平成5年入段、8年二段、9年三段。7年第14期女流本因坊戦挑戦。9年第15期女流本因坊位獲得、10年防衛、11年三連覇。11年度棋道賞女流賞。?12年から女流棋聖、2月に四連覇を果たす。楊嘉源九段夫人。
「宮古のことわざ」
〔 木ぬ先ぁ見らいすぅが 人ぬ後ぁ分いん 〕
キィヌスゥラァミイライスゥガ
ピトゥヌアトウァスサイン
どんなに高い木でも先をみることはできるが、人間の将来(先)はみることができない。
『んきゃーんじゅく』 佐渡山政子/編 より
「ミャークフツ講座 どれくらい編」
松谷初美
- いなぎ<が> (どれくらいの長さ)
- いふか (幾日、何日)
- いすか (幾ら、値段)
- いふたーず(幾人、何人)
- いふから (何匹)
- いふきう (何軒)
- いふたてぃ(何種類)
- いふん (何度、何回)
- いだき (どれくらいの高さ)
(例)
- いふか どぅ たちうー?
(何日経っている?) - うぬ ばそう や いすか りゃー?
(そのバナナは、いくらですか?) - いふたてぃ まい あーでぃす
(何種類もあります)
「きない(家族)」
菜の花
生まれて間もない我が子を腕に抱くことも、膝であやすこともないまま死んでいくとしたら・・・?妻や幼い子どもたちを残して逝かねばならないとしたら・・・?!
彼が入院してきたのはクリスマスの音楽と、イルミネーションで街もテレビも賑わっている最中の12月22日だった。眼はレモンより黄色く、顔は土色で、体はむくんで腫れ上がっていた。酒の飲み過ぎで出来た食道静脈瘤が破裂し、内視鏡室で処置を受けた後の緊急入院だった。データは肝不全を示している。見た目も重症だ。
情報収集に当たった私は、まず年齢を見て溜息をついた。35歳。若い・・。そして、話を聞いて更に驚いた。外来では仕事の忙しさを理由に、何度も検査の予約をキャンセルしていた。家族は妻と6歳と3歳の息子、そして、2週間前に生まれたばかりの子で待望の女の子だという。原疾患はなく、酒の飲みすぎによる肝硬変悪化によるものだった。
治療をしても一向に状態は改善せずに、弱っていく体と対称的に全身はどんどん膨れ上がり、ベッドが狭いほどだ。血漿交換が行われ、透析も連日しているが一滴の尿も出てこない。輸血、血圧維持薬、強心剤、栄養の点滴とアラーム付の点滴装置が何台も取り付けられた。
日中は、透析でウトウトするけど眠れない夜にはナースコールをもてあそぶ。水を欲しがっても、一日に体に入る水分の量が決められ思う存分飲ませてやることが出来ない。気を紛らわすには話しをするのがいいとベッドサイドに腰を下ろす。話の中で「趣味は強いて言えば子どもと遊ぶことかな」と言われ胸がしめつけられた。
テレビ中継の仕事は家族を離れての現場が多く、子どもと毎日一緒にいられないという。いつも一緒にいられないからこそ、一緒にいられる時間を大切にしたいという彼の思いが伝わってくる。それでも、仕事のことを語る彼の眼には生気が溢れていた。仕事のおもしろさと、家族を離れての寂しさが彼に酒をあおらせたのだろうか?
治療の効果がいよいよ期待できない状態になり、彼の心臓は一気に拍動をさぼったり、痙攣を起こしたりと落ち着かない。「歩かせろー」「起こして」と時々喚く彼の声は悲哀を含んでいる。思わず額に手を当てそっと頭を撫でると静かになる。現実から少しずつ離れていく彼に「その日」が近づいてきたことを感じる。
そんな中、妻から生まれたばかりの娘がパパと一緒の写真が一枚もないので、写真を撮ってもいいかと相談された。妻は夫を見送らねばならない現実と、子どもたちを抱えて生きていかねばならない現実の間にあっても、常に母として子どものことを考え、逝く夫とこどもたちとの接点を結ぼうとしているのだ。親子が一枚の写真の中に納まることを、他人の私が拒めるはずなどない。むしろそこまでに至った彼女の気持ちに頭が下がる思いだった。
そして、膨れ上がった大きな体の父親の横に、生まれて間もない小さな赤ちゃんが寝かされ親子は一枚の写真の中に納まった。例え、記憶には残らなくても、父が在ったことを生まれたての娘はいつか写真を見るたびに思うだろう。その後、家族全員が、初めて揃って写真に写った。
モニターのアラームは日ごとに鳴り止まず、彼の心臓もギブアップの日を迎えた。湿っぽいのは嫌なんだよといつも言ってた彼が、旅立ちに選んだ日はバレンタインデー。テレビはチョコレートの話題で賑わっていた・・・。
もう少し酒を控えていたら・・・。もう少し早く検査を受けていたら・・・。しかし、これが彼の人生であり、結末であることに変わりはない・・・。最期に家族で撮った一枚の写真は彼の人生の最期の仕上げだったのかも知れない。
酒ふぁや(酒飲み)の皆さん!酒は飲んでもぬつ(命)まで取られるなよ!酒を飲むならさっさと酒に飲まれて寝るが勝ち?!がんずぅさどぅ いつばんよー!(健康が一番)
「編集後記」
松谷初美
まーんてぃ、「命あっての物種」。体はいたわりましょうね。
さて、先月、半年振りに宮古に帰った私は、あ、また増えているー!と思ったことがある。コンビニである。「なんで、うぬすくなー ふえんといかんかねー」(なんでそんなに増えないといけないのかねー)イチローもびっくりすると思うな。(野球選手のイチローがかつてオリックスにいた頃、宮古にキャンプに来て、コンビニがないと言った一言で、宮古にコンビニが登場したと言われている)あの赤の看板とグリーンとブルーの看板は今に宮古を陵駕する。というのは、オーバーかもしれんけど。でも人口の割りには、おお(多)ーいじゃないか。西里通りに行ったら老舗のあった場所が、コンビニに改装中だった。うぬつかふがまんな(そのすぐ近くには)違うコンビもあるんだよ。それだけ需要が多いってこと?
友人に聞いたら、「結構行くよ、お菓子の新製品を買ったりする」と言う。まぁね、私だって東京でコンビニを利用しないわけではない。お菓子も買うし、すぅとぅむてぃ(朝)あわてて卵を買いに行くこともたびたびで、重宝している。あすぅがさーい(でもさー)何もこんな狭いところで だう(たくさん)なくてもいいんじゃないな?
この思いは、私が宮古を離れて住んでいて、宮古は昔のままでいてほしいという、勝手な思いのせいなのか。自分でもよく分からないが、増え続けるコンビニを見ると、個性のない、のっぺりーとした街に映って、がっかりする。結局、淘汰されてそれなりの数になっていくと思うけど、どうなんでしょうか。住んでる人は何とも思わん?
「いでゃあい(出会い)」宮国優子 は、今回は知念かおりさんを紹介しましたが、今後も優子さんが記者(宮古毎日新聞)という仕事柄、出会ったズミ人たちを紹介していく予定です。どうぞお楽しみに。
次回は、3月20日の予定です。あつかーまたやー。