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宮古島方言マガジン「くまから・かまから」
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くまから・かまから vol.55

2021 6/02
メールマガジン
2003年7月3日2021年6月2日

みなさん、ぞうかりうらます゜なー。(お元気でしょうか)
何もせず、ジッとしているだけで、汗がダダダダ・・と流れる夏。
一服の清涼剤に、くま・かまは、のーしーがらやー(いかがでしょう)

目次

みゃーく んなまずぶん(いまごろ)

さどやませいこ

ウーズン(うりずん)の後は、カーツバイ(夏至南風)ぬさやさやてい吹きい、スダイン(次第に)島は真っ赤な夏に突入。これでもか、これでもかと焼き付けるテイダ(太陽)に、ンニャ ジョウブンニュー(もういいようー)と言っても素知らぬ顔。そうかと思うと、いきなりウプカジ(台風)をふかしてンーナパライピー(みんな払っていく)。マーンテイ(本当に)自然な、ギッツアナラン(わがままだ)。

六月下旬から七月上旬にかけて、海に関わる生き物たちは再生の季節でもある。アラガン(オカガニ)、マクガン(ヤシガニ)、サンゴ、アマン(ヤドカリ)は競って産卵のシーズンだ。ピルマスムヌドウー(不思議なもんだよ)、普段、陸で生活しているオカガニやヤドカリ、ヤシガニは満月の夜に海に行ってゾエア(幼生)を産み落とし、海で生活するウミガメは砂浜に上がって来て卵を産むのだ。

誰が教えたわけでもないのに、満月の夜にゾロゾロ出てくるオカガニたちを見ているとナダヌ イデキスサア(涙が出てくるサー)。ご苦労さんと声を掛けたくなるよ。

でも、昔は、やっとの思いで産卵を済ませふらふら上がって来るところを、獰猛な人間たちが待ちかまえていてカマス(大きな袋)に集めていって食べたそうだ。ウトルッサー(恐ろしい)。ウスカ(おしまい)。

お店紹介7《平田菓子店》

松谷初美

平田菓子店は、西里通りのちょうど真ん中あたりにある、老舗の菓子店だ。菓子店というより、宮古の人には、餅屋さんというイメージの方が強いかもしれない。昔から平田屋さんの餠は有名で、行事ごとに餠を買う人で賑わっている。

 創業は昭和初期で、今の場所で営業するようになったのは、戦後とのこと。現在の店主、平田勝信さんは三代目にあたり、お姉さんの初子さんや家族で切り盛りしている。

 宮古では、いろいろな行事に餠を使うことが多い。正月、じゅるくにつ(十六日=あの世の正月)、お盆、葬式、高校の合格祝い、すらぶうつ(棟上式)、結納、などなど。

今、餠は、餅屋じゃなくてもスーパーなど、どこでも売っている。また昔に比べ餠を行事に使う人も少なくなっているようで(昔は、じゅうるくにつの時など やーむとぅ(本家)に行く時は、必ず餠を持っていくものだったらしい)
10数年前は、行事があると1万個以上も売れていたそうだが、今は数千個売れる程度だそうだ。

私が訪ねた時、ちょうど喪服をつけた(着た)若い女性二人が車から足早に下りてきた。カイゲン(四十九日法要にあたるもの)のお餅を買いにきた様子。餡の入った餠を注文したら、「カイゲンには餡の入った餠は使わないよ」と初子さん。そして赤い餠も頼んだので、「25回忌や35回忌には赤い餠を使うけど、亡くなったばっかりの時はやらんさー」と教えていた。私なども、その辺りのことを何もしらないので、教えてもらえるのがうれしい。

店の中には、昔ながらのガラスのショーケースが二つあり、餠やまんじゅうかるかん、最中などの和菓子やマドレーヌ、ロールケーキなどの洋菓子がきれいに並べられている。こういった洋菓子も案外、お盆や みーにつの定番なのである。

私も小さめの紅白の餠(いわゆる大福だが、宮古で大福と言ってもたぶん通じないと思う)とシナモンの香りのする饅頭、かるかんなどを買って帰った。餠もかるかんももちろん美味しかったが、一番は、シナモン饅頭である。白餡だとばかり思っていたら紅芋の餡だった。いや、これは、んまい!!お勧めです。(小さいお餅は行事の頃しか置いていないそう)

行事の時だけではなく、甘いものが欲しい時は、いきみーるよー(行ってみてね)。一個、二個、買うのももちろん大丈夫よー。

《平田菓子店》
平良市西里303-4
電話:0980-72-3220
店主:平田勝信さん(三代目)

みゅうとぅ(夫婦) その2

菜の花

くずぅぬ(去年の)10月、救急車で搬送されてきて、以後人口呼吸器をつけたままのおばぁがいる。たまに みー(目)を開けるけど、おばぁからのメッセージはない。やらび(子ども)のような無垢なみー(目)で んざがら(どこか)を見ているだけ。

月に一度、診察の帰りにおじいがおばぁを見舞う。つぐすまい くすまい(膝も腰も)曲がり、歩くにも ぴとぅぬてぃ(人の手)を借りる。おじいはおばあの みぱな(顔)を覗き込んでは「ほれ、目をあけろよ。オレだよオレ。分るか?オレだよ。ほれ、何とか言えよ」と同じ言葉を何度も繰り返す。ぷとぅぷとぅてぃ(ブルブルと)震える てぃ(手)で、ティッシュを掴み、水でんなっし(ぬらしては)おばあの口元をそーっとそーっと拭く。その手つきがあまりにも あたらすむぬ(大切なもの)を扱うようなので、付き添ってきたお嫁さんに、仲の良い ご夫婦で感動していると伝えたら「とーんでもない。ケンカばっかりよ」と意外な返事。

おばぁが とーりぃ(倒れて)おじいの優しい言葉を耳にした誰もが、ショックでおじいは かなまず(頭)がおかしくなったと思ったらしい。あがい!のうしーぬばーが?(あれまー、どういうこと?)こんなに優しいおじいが、おばあと毎日ケンカばっかりしていたとは信じられない。お嫁さんの言葉をよそにおじいはまた、ぷとぅぷとぅ(ブルブル)震える くぱずてぃしー(おぼつかない手で)おばあの からず(髪)を整えている。おばぁが がんずう(元気)だった頃は、こんな光景はきっとなかったに違いない。ケンカすることを当たり前にしてきたおじいの生活が、当たり前でなくなったとき、失いかけているものがどんなに大切なものかおじいは嫌というほど感じているのかも知れない。今、失いかけているものはおじいの人生の支柱だったはず。

夫婦の数だけ愛情表現もあると思うけど、おじいなりの表現方法で自分をさらけ出し、我がままも甘えも強さもおばぁに差し出していたんだろうか・・・。
おじいの声は時々、呼吸器の音に消されるくらい弱くておばあとケンカする姿は想像できない。おじいの いみーみぬ(小さくて)まーくてぃぬ(丸まった)背中を見ていると、「私のありがたさがわかったでしょう」っておばあが喋ったらおじいのあの曲がった くす(腰)は、しゃんとするかも知れないと在り得ないことを考える。

おばぁにはおじいの声は届いているだろうか?「ケンカするほど 仲がいい」というけど、やっぱりたまには優しい言葉をかけてほしかったんじゃない?
ねえ、おばあ!

ミャークフツ講座 自然編

松谷初美

  • てぃん(空・天)
  • てぃだ(太陽)
  • ぷす(星)
  • つき゜(月)
  • かじ(風)
  • あみ(雨)
  • かじふき゜(台風)
  • わーつき゜(天気)
  • かんとぅゆん(雷)
  • てぃんぱう(虹)
  • いん(海)
  • すーぴす(干潮)
  • すーんつ(満潮)
  • い゜ずぅ(魚)
  • んーなぐぅー(砂)
  • んた(土)
  • いす(石)
  • ぱな(花)
  • ふさ(草)
  • いき゜むす(動物)

お便りコーナー

那覇市在住 ぺこさんより

毎回、毎回、内容もりだくさんって感じで読んでて楽しいです。前号の「豆が花」。唄の題名からは想像もつかない解説でビックリしています。
5月に、宮古に行ったときに「人頭税」の「石」を見ました。久しぶりに見たんですが、あまりの低さに驚きました。「なんでこんな小さいうちから税金を収めないといけないの?」と思ってしまいました。今度、「豆が花」聴いてみようと思います。
 
「オトーリ」の話、おもしろいですね〜。
実家で親戚、友達が集まって飲んでる風景が目に浮かびますね。子供の頃、なぜかその風景を楽しんで見ていたような気がします。母は、酒がなくなっていないか確認しながら、忙しく台所でサキウサイ(酒の肴・・・方言あってますか?)のパンビン(てんぷら)を作っていたものです。忙しく、動いている母が一番楽しそうにしていたのを思い出します。
 
うちの両親もよく大声で「やどぅゆん(大喧嘩)」してました。っしばら(後ろの家)の夫婦のやどぅゆんの声もよく聞こえてました。今でも実家に帰ると、っしばらから聞こえてきます^^母を亡くしたので、今では両親の「やどぅゆん」さえも懐かしく、いい思い出になっています。
 
宮古の人に挨拶上手が多いのは「オトーリ」のおかげですかね〜^^
「くま・かま」のみなさん、これからもいろいろ教えてくださいね。

※ぺこさん、お便りたんでぃがーたんでぃ。くま・かまからいろいろなことを感じてくれて、だいず、ぷからすです。サキウサイは、サキ ヌ ウサイと言った方がよりいいと思います〜。

編集後記

松谷初美

夏やー(夏ですねー)
あつーぬ とぅきゃー(暑い時は)クーラーぬ にゃーだかー んびゃーいん
(クーラーがないと耐えられない)私は、今年の夏の電力不足は、乗り越えられるのか、しわ(心配)するこのごろ。

でも、実家(宮古)には、クーラーは、にゃーん(ない)。扇風機は、だう(たくさん)あるけどよ。それでも宮古では大丈夫だよ。平良市内だとそうもいかないかもしれないけど、窓をあけて、すだーすかじがまが(涼しい風が)入ってくるのを感じながら、眠るのは、だいず ずみさー(すごくいいよ)。
時々、とぅりー(風がソヨとも吹かないこと)として、眠れんときもあるけどね。東京でもクーラーに頼らない夏にしたいもんだ。

四季のメリハリが にゃーんだかりぬ(ないような)宮古でも、確実に生物はその時期を知り、活動しているんだねぇ。満月の夜にゾロゾロと・・・。そーっとのぞいてみたいなぁ。

みゅうとぅ(夫婦)でも、言葉にしないと伝わらないこと、言葉だけではなく、行動もともなわなければ伝わらないことってあるね〜。分かっているつもりでもついつい甘えてしまう。私も反省。

ご意見、ご感想、投稿、お待ちしていまーす。
どんない(どんどん)お寄せくださいね。よろしくお願いします。

次回は、7月17日の予定です。あつかー またやー。

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