みなさん、がんずぅやしー うらまずなー(お元気ですか)。 vol.63、ぱずみっとー(始めますよー)。
のど自慢出場大変記
アモイ
あれは、30年以上も前の高校1年生のことだった。
琉映館(第一)で、のど自慢大会(どこの主催か ばっしにゃーん(忘れて しまった)が開催されるとの情報を得て、当時歌好きだった級友と私を含むフ ォークソング同好会のメンバーがそののど自慢に出ようという事になった。し かし、のど自慢開催は平日の午後に予選があるという事で学校の午後の授業と 重なってしまいどうしようかということになった。のど自慢に出たい一心で担 任の先生に相談したら、自分では許可できないが校長先生に申請してみろと言 われ、早速校長先生宛にのど自慢出場のために当日午後の授業を休ませてくだ さい、という申請書を提出した。そしたらなんとあっさり認められたのだった。 その頃、宮古島で開催されるのど自慢は数少くなく、出場するだけでもすごい なと言われる位だったので校長先生もあっさり認めてくれたのだと思う。
のど自慢大会には、級友(TS君)がソロ、私と他のクラス2人のトリオ(以 下トリオ)の2組で出場する事になった。クラスメートに、「あつかーいきく ーっとー」(それじゃーいってくるから)と言い残し、午後の授業を休んで、 のど自慢予選に出場した。会場に着くと、他の出場者たちはみんな大人達だ。 その中に我々学生服を着た4人(2組)が加わった。今なら ぷとぅぷとぅて ぃふーり ぱずすぅが(ブルブル緊張すると思うが)その時は世間知らずのた めかそれほど緊張感が無かった。予選は順調に行なわれ、その日の出場者全員 に参加賞としてウイスキーのポケット瓶が渡された。トリオ組は人数が多い事 も有り?うまい事予選を通過したが、TS君の方は選曲がわるかったか、初出 場の為実力が出しきれなかったのか予選落ちしてしまった。(彼はその後の宮 古島ののど自慢大会で何度かグランプリを取っているので彼の名誉の為に記す) 予選落したTS君はちしてちょっとショックを受けていた。
その後、クラスの同じTS君と私は2人で学校へ歩いて戻る道すがら、参加 賞としてもらったウイスキーを眺めながら、ウイスキー(サントリートリスだ った)ってどんな味なのかな?ちょっと飲んでみようか、という事で互いにポ ケット瓶の栓を開けてジュースを飲むように相次いで一気に飲みこんだ。「あ がいたんでぃ・・うぅ・・・のーりゃーういりゃー・・・」(うわーっ、うぅ ・・・ なんだこりゃー・・)といいながらも、苦しくて2人で暫くの間道路 上で咳き込んでしまった。喉を強烈に焼きながらおなかの中まで熱い物が流れ ていく感じはそれまで体験した事がなかった。
その頃、家でもウイスキーなる物は置いてなく、親父達の残した酒、たてぁ ーした泡盛(水割り泡盛)やビールをちょっといたずらで飲んでもそれほどの 事はなかった「あがんにゃ、ウイスキーてぃや あんちぬむぬなー、だいずな むぬやー」(いやいやウイスキーとはそういうもんだったのか?大変な代物だ なー)「はい、うわがみぱなーあかーあかなりゆぅーさ、」(ねーお前の顔真 っ赤になってるよ)「うわまい、ゆぬぐーさいが」(お前も同じだよ)とお互 いに顔を見合わせていた。TS君にとっては予選落ちしてのヤケ酒となってし まった。なんでこんな物が参加賞なんだろう?大会主催者は学生の出場は想定 外なのだ。
その時が私達の公式のど自慢大会デビューだったのだが、同時にウイスキー の初飲み経験とも重なった。のど自慢出場と、思わぬものが流れ込んできた「 喉様」にとっては、倍の悲劇?ともダブルの刺激?とも言える出来事だったに ちがいない。その日の夕方本選が行われた。林家こん平が司会を務め山本リン ダがゲスト出演という当時の宮古島としては豪華キャストで開催された本選大 会に学生服のトリオで初々しく挑むのであった。
つづく
ミャークフツ講座 動作編
ざうかに
ミャークフツ | 標準語 |
---|---|
あずく゜ | 歩く |
びず | 座る |
ゆっつ | 寄る |
うらす | 降ろす |
むつ | 持つ |
むたぎる | 持ち上げる |
たみる | 受取る |
ししゃーす | こする |
むんでぃる | ひねる |
つんきす | つねる |
ぱんきす | 嚙み切る |
かふたぐ | 抱きしめる |
まやーす | 投げ捨てる |
かつみる | 捕まえる |
ぽーぐ | 掃く |
みゃーぎ | 仰いで、見上げて |
あぱなき | 上を見て |
うすみ | 下を向いて |
とぅんかえず | 振り返る |
とぅーふかす | 物を通す |
てぃ ゆ しみる | 手を洗え |
てぃ ゆ かみる | 仏壇などに手を合わせる |
(例)1.かまんかい むたぎ ぴり (向こうへ持って行け)
2.うまんかい うらし うき (そこに降ろしておけ)
家の中の風景
松谷初美
あたりまえに見てきた実家の家の中の風景も、離れて生活してみると、やは り独特のものだなーと思う。見慣れたはずのものが久しぶりに帰ると新鮮に見 えるから ぴるますむぬ(不思議だ)。
・「かんたな(仏壇)」
仏壇のことも宮古では「かんたな(神棚)」という。従って、仏様も神様。たいがいは、二番座あたりにある。仏壇の下のもの入れには、お盆セットや線香、ローソクなどが入っている。昔は作りつけのかんたなも多かった。 朝一番のお茶は、もちろん 神様から。
・「神棚」
部屋の角や台所などにある神棚。毎日の たちょう(お茶を供えること)は欠かせない。ここでの線香は、平たい黒線香。
・「表彰状」
やたら多い。鴨居のところに必ず やまかさ(たくさん)飾ってある。宮古では、誰でも主人公になれるときがあると思う。
・「命名用紙」
子どもが生まれると、亀や鶴の絵の入った用紙に名前を書き、床の間などに飾る。また、内祝いには必ず、名前と生年月日の書かれた短冊が入っていて、それは家の壁に貼られる。内祝いをもらうたびに重ねて貼られていく。古いのはもうどれくらい前のだろう。紙が茶色になっている。
・「大きな飯台」
我が家には来客用も含めて3台ある。
・「ティッシュの箱」
飯台の上には必ずある。宮古の料理は油っこいものが多いので必需品。ゲートボールの賞品としても定番で、うちではティッシュは買うものではなく、ゲットするものらしい。
・「チラシで作ったゴミ入れ」
折り紙の要領で作った使い棄てゴミ入れ。食べ終わったみかんの皮や、わーぶに(豚の骨)や、魚の骨などを入れるため食事時、テーブルの上に置かれる。おばぁが暇な時に作っていて、常にストックされている。
・「缶ジュース(お茶)の箱」
冷蔵庫には必ず冷たい飲み物(缶の)が入っている。さんぴん茶はもちろんのこと、最近は緑茶も人気。なのでスーパーの安売りは、見逃せない。うちの場合、一缶27円(安すぎ!)が買う目安らしい。スーパー「かねひで」の目玉品。
・「じょうぐ(漏斗)」
泡盛を 水でたてゃーす(割る)ので、必需品。台所には泡盛の一升瓶がごろごろあったりするが、その中のひとつの瓶にじゅうぐはささっている。
・「ハエ叩き」
年がら年中、活躍している。ハエ叩きを使用せず、素手でハエを捕まえる、剛の者(?)もいる。
・「日めくり暦」
きょうのぴかず(日和)は、どんなんかねーと見る大切なもの。私にはまださっぱり分からん。
・「さば(ぞうり)」
これには二種類ある。ゴム草履とお父たちが履く、サンダルに鼻緒がついいた感じのもの。玄関には色とりどりのゴム草履がある。家族全部がマイさばを持っている。ゴム草履は、その人の足の形にへこんでくるので、人のものを履いたときは、ぴんなぎ(変な感じ)
実家に帰るとこんなものものがうれしくて、ふるさとを満喫する私である。
あんな(母)
菜の花
うでぃ(腕)から肩へ、ちびぐう(背中)から ちびたい゜(お尻)までどぅ (体)の背面のほとんどを刺青で埋めつくした びきどうん(男)が入院して きた。身の回りのことは「若い衆」と呼ばれる者達が代わる代わるしていてき ない(家族)の姿は一度も見かけない。言葉は丁寧で、物腰もやぱーやぱ(柔 らかく)威厳さえある雰囲気の男だった。
状態は日ごとに ばい゜ふ(悪く)なり、体を拭くことも、つがい(着替え) も「若い衆がもうすぐきますから」と言葉は強気でも、体は思うように むゆ かだ(動かず)、排泄物で つん(寝衣)を汚すようになってきた。看護者に は決して体を見せることをしなかったが、やむを得ない状況に男もしぶしぶ着 替えをさせる。体を拭きながら、背中の刺青のあまりの見事さに感嘆し見入っ てしまった。この模様を作り出すのに、何本の ぱい゜(針)を体に刺し、ど れ程のやん(痛み)に耐えたのだろうか・・・。この痛みに耐えられたなら、 どんなことでも超えて生きられたんじゃないだろうか・・・。そんなことを考 えながら、衣類を替えていると「何という 彫り物ですか?」と不意に、言葉 が出てしまった。一瞬、間があった・・・。「しまった!!」と後悔するが、 もう遅い!言葉は彼の みん(耳)に届いてしまった!男は情けなさそうに ばらい゛(笑い)ながら「バカモノ・・・と言うんだよ」と、自分に言うよう に、私に諭すように静かに答えた。何と言って良いのか困った私は「そうです か」と我ながら間抜けな返事だと思いながらもそう言うしかなかった。
病状や余命について、家族にも知らせなくてはならない時期がきたが、絶縁 状態にあり家族がどこにいるのかも見当つかない。本人の気分の良い日に、や らび(子ども)の頃の遊び場や学校から住んでいた所を探していった。「若い 衆」にも最期が近づいているので、このままで良いのか確認し家族を探すよう 協力を依頼した。
それから数日後「若い衆」が家族の居所を探し当て、あんな(母親)とあに (姉)二人が面会に訪れた。車椅子の母親は病室の まうきー(手前)で、車 椅子を止めるよう みどぅんやらび(娘)に指示をする。ゆっくりと立ち上が り病室へと向う。緊張で うむてぃ(表情)も くぱーくぱ(硬い)。その後 ろに同じ表情の姉達が続く。40年ぶりの再会だという。緊張の空気は私に「 彼はこの再会を何も知らない」ことに気づかせてくれた。あまりにも突然のこ とだったので、看護者も驚き彼の気持ちを確かめることが出来ていない。
母と姉を病室の入り口で待たせ、男のベッドの あっつぁ(傍ら)に つぐ す(膝)をついた。母と姉が面会に来ていることをゆっくりと一言ずつ話すと 男も驚いた。そして一言「恥ずかしい」と漏らした。それから、うろたえ、苦 笑し、誰か傍にいる様に頼む姿にいつもの親分の威厳は全くみられなかった。
母は息子のベッドに寄り「どうした?」とその一言しか ふつ(口)にしな かった。母からの問いかけはその一言に全て含まれていた。彼も言葉が出ず、 姉に何を聞かれても頷いては苦笑ばかりだった。母は黙って息子の顔を見てい た。なだ(涙)が流れても拭いもせず、瞬きもせずただ眺めていた。母の顔を 見ないようにしては、苦笑する男は母に叱られている いみーみ(小さな)ぼ ーちらやらび(いたずら小僧)を思わせる。母の前ではだだの やらび(子ど も)以外の何者にもなれない彼がいた。母親にとっても、彼の人生がどうだっ たかなどより、彼が自分の息子であることのみが全てのようにベッドを覗き込 んでいた。彼を丸ごと包む母の愛だけが感じられる。
彼の人生はあと数週間で終わるだろう。この親子の再会が良かったのかどう か私には答えは出せない。しかし、「母」と「子」であるという関係は、いか なることにも否定も阻害もできないことである。彼が死んでも母親は生きてい くのだ。そう考えたときこの親子が残された時間を安らかな思いで過ごせれば と願うだけだった。
お便りコーナー
平良市出身 長野県在住 武島玄正さんより
vol.63 方言マガジン届きました。
皆さんがんばりますね。
「ひさぼう」さん、このような方言への接近もあるんですね。離れること日々 に疎しで、「今君はこんなことを言ったよなー」と確認が必要で方言を忘れか けている私には大変有難いと苦笑しながら読んでいます。
神童さんの建造物の件、あなたのような考え方に私も大賛成です。「宮古毎 日」あたりでキャンペーンが張られるといいと思います。私が残念に思うのは 今の北市場が昔は「プカマザーうたき」で確か雨乞いのクイチャーをやったと ころです。プ二をシッチられないように(骨をしゃぶられないように)豊見親 のプ二は「プカマザーうたき」に埋めたと聞いたことがあります。敷地の片隅 に香の置き場があるだけで、私は情けなくて涙が出てしまいました。
松谷さんの「お店紹介」は取材が大変だと思いますが、ぜひ続けてください。 お店の人が原稿を見て生き様に誇りが持てるような記事を書くことは大変なこ とだと思います。
※北市場のあたりがそうだったとは、すっさったん(知らなかった)。これ からも んきゃーん ぬ ぱなっすぅ きかしふぃーさまちー(昔の話を 聞かせてください)
編集後記
松谷初美
アモイさんの「のど自慢大会」は、vol.66に続きます。この大会を記憶され ている方がいらっしゃったら、ぜひ何の大会だったか、教えてください。それ にしてもその頃にも有名人は来ていたんだね。さー本選はいかに!?
みゃーくふつを日本語に訳すのに、ぴったりの言葉がなくて、苦労する。今 回の「みゃーくふつ講座」でも、微妙なニュアンスが伝えられないのが残念だ と ざうかにさん。「つんきす」は聞いただけでも痛い!
菜の花の病院ぬ ぱなすっすあ(話は)、つきることがない。それは看護婦 として、時には一人の人間に立ち返り、常に患者と真摯に向き合うからだと思 う。うや(親)の思いに泣きました。
図書支援のその後をお伝えします。宮古教育事務所によりますと、現在、本 が2000冊余、図書券等が70万円余、届いているそうです。また平良市の姉妹都 市である世田谷区からは、図書1万冊の申し入れがあったそうです。くま・か までは、ライターを初め、読者の方、その友人、知人の方からお寄せいただい た、図書と図書券を二回に分けて送らせていただきました。ご参加いただいた 皆さん、ありがとうございました。たくさんの反響に私達、図書支援し隊も大 変うれしく思っています。今回の台風で人の優しさ、深さというものをしみじ み感じました。まーんてぃ(本当に)たんでぃがーたんでぃ。みなさんから寄 せられた図書は現在、教育事務所のロビーで展示されていて今後、分配委員に よって、各小学校へ届けられるということでした。(狩俣小学校はすでにたく さんの図書が集まりいっぱいだとのこと)。図書の受付はまだしていますので、 準備されている方はどうぞお送りください。よろしくお願いします。
(おしらせ)
沖縄本島にある「宮古の自然と文化を守る会」から『宮古の自然と文化』と いう本が今月発行されました。宮古について造詣の深い各専門の14名の方が書 いています。昔の写真や、統計、図などを使い、分かりやすく書かれています。 ぜひ、お手にとってみてください。沖縄、宮古では各書店で扱っています。そ れ以外の方は、出版社(新生出版 電話:098-866-0741 送料310円)に申し 込んでいただくか、お近くの本屋さんで「地方小出版流通センター」扱いと言 って、取り寄せることができるそうです。
次号はもう12月の発行となります。ぴゃーむぬやー(早いものですね)。 1月には、「お年玉」にまつわる ぱなっすぅ(話を)特集しようかなーと 考えています。ぜひ、うわが(あなたの)お年玉に関する話を かきふぃー さまち(書いてください)。100字〜800字程度で。12月20日ごろまでにお寄せ ください。ドルの時代のお年玉でも、お年玉で何を買ったかでも のーまい じょうぶんどー(何でも結構です)。
vol.63は、のーしがやたーがらやー(いかがだったでしょうか)。ご感想も お待ちしています。あつかー またやー。
※お店紹介は、今回お休みしました。