夏が近づいてきました。みなさん、のーしーりゃー。「くまから・かまから」のお時間です。チャーガマァ、ヌンガツナ、(お茶を飲みながら)お付き合いください。ヒヤーウィー、ゴー(ミャークフツ?)
『旅の途中』
ワタリ マリ/著
おとう(父)が極楽浄土へ旅立ちました。そのおとうに、いつも言われていました。『旅ンチャアナア、ウランサヤ』と。訳すると、旅に出たままでは、いけないとの意味になるのですが、昔の人は『内地にいる』を『旅ンドウゥ』と表現しています。隣のおじいも『バンタガプリッフアマイ、旅ンチャアンドゥウ』(私たちの子供も内地にばかりいる)と、なかなか帰ってこない息子を嘆いていたものです。
私は、この『旅ンドウゥ』との何とも言えない素朴な言い回しが好きで、子を思う親の愛情を感じるのです。広い世界に旅に出て、見聞を広めたらきっと必ず宮古に帰って来てほしいと、どこの親も思ったことでしょう。また『旅ンカイド、ピーター』は、旅に出たことの意になり、旅立つ子の、内地での活躍に期待する親の気持ちが含まれていたように思います。
『旅ンチャーンナ、ウラン』とのおとうの言い付けを守らず、とうとう私は、20数年『旅ンチャアン』(内地にだけ)いてしまいました。でも、自分の中では、いつかこの『内地にいる』旅を終わらせ、ミャークンカイ(宮古に)帰ろうと思っています。もしかしたら、極楽浄土でプカラッサ(うれしそうに)しているおとうも、ヤーンカイキシュウトイ(家に帰っていて)、カンタナ(神棚)の中から、イヒィッ(にこっ)と、笑ってくれることでしょう。旅カラナ、ムドリュウ?と。(内地から戻ったのか?)
それまで、私は、まだ旅の途中にいるのです。ンナピーッチャ、ウラダカラア ナランニバ。(もう少しいなければいけないので。)
『宮古のことわざ』
〔 夏ぬ雨ぁ 牛ぬ肩身 〕
ナツノアミァ
ウスヌカタドゥ
夏の雨は急に降ったり止んだりするスコール。俗にいう片降りである。雨があがった後、牛の片側だけが濡れており、その面白い自然現象を牛の体にたとえた。
んきゃーんじゅく 佐渡山政子/編 より
『カーフナタ物語 第2話(全2話)』
アモイ/著
翌朝はいい天気でしたが、カーフナタ(ミヤコヒキガエル)達は、陽に当たると、皮膚が乾きがちでちょっと苦手です。長旅の疲れはまだ残っていました。そこへ情報を入れてくれた、アカビーナが元気に飛んできて、そして、野原岳から見える景色についてガイドしてくれました。
「目の前の上野村もいいところじゃろう。海岸の方にはドイツ村があるんじゃよ。右手が下地町じゃ。前浜という所は砂が眩しいくらいに真っ白じゃ、その向こうに来間島があるんじゃ」
「城辺トゥ、平良ア、陰ンナリ、見イラインパズ、」
(城辺と平良は、陰になっているから見れないはず)
「それじゃ、わしはこれから、ひとっ飛びじゃ、マサーギン、マイヤミィーガッチャン、イキヨー」
(足元に気をつけて行ってね)
アカビーナのガイドを聞き終えたフナタアザとフナタアグは、「何とか、ここから城辺や、平良が見えないものかなー」と話しながら、一段と高くなっている岩を見つけそこへ登っていきました。フナタアザは城辺の方向へ、フナタアグは平良の方向を見ていましたが、
「アガイ、ンナピーチャシドゥミーライティウウーバ」
(もう少しで見えそうだけどなー)
と言って、アパナキウリッティ、(上を見上げていて)ついには、2匹とも「ンッタ!」と気合を入れながら後ろ足で立ち上がりました。そして大きな声で叫んでいました。
「ハーイ、ウワタマイ、クマンキシタチミール、平良ぬ、城辺ぬミーライウード」
(おーい、みんな、ここへ来て立ってごらん、平良が、城辺が見えるぞ)
その声にカーフナタ達は、我先にと岩に登り、
「アンチーナー、ンジンジ」
(そうなの、どれどれ)
と言って平良のフナタは城辺の方向に、城辺のフナタは平良の方向に向って「ンッタ、ンッタ、」と立ち上がりました。
そして、カーフナタ達はお互いに顔を見合わせながら、
「平良トゥ、城辺ヤーノーマイカーラン、マッタクサイガヤー、アガイタンディ、ンゾーサ、難儀スァシーキスタン。アカビーナガマン、ダマサイニャーン、ズゥズゥ、ヤーンカイ」
(平良と城辺は、何処もかわらんなー、本当にそっくりじゃないか、なんだ、赤とんぼにだまされたなー、難儀してくる事もなかったよ、皆、家に引き返そう)
と言って「ゲロゲロゲーロ」と鳴きながら帰っていったということです。
解説
カーフナタの目は上の方についており、立ち上がると後ろの方が見えて、平良のフナタには、平良が、城辺のフナタは、城辺が、見えたという訳でした。 お粗末様でした。
―おしまい―
(編集者注:『カーフナタ物語』第1話は、バックナンバーでご覧いただけます)
『ミャークフツ講座 日常会話編』(投稿)
ざうかにさん/著
- んざんかいりゃー? ⇒ どこ行くの?
- のうしいりやー? ⇒ どうですか?
- やーっさ ⇒ はらへった
- んまくいぎ ⇒ おいしそう
- んまい ⇒ おいしい
- ばたんちどぅ ⇒ はらいっぱい
- ばたふさり ⇒ 頭に来た
- ぷからっさ ⇒ うれしい
- まいふか ⇒ ありがとう
- たんでぃがーあ、たんでぃ ⇒ ありがとうございます
- あが ⇒ 痛い
- ぴぐるさ ⇒ 冷たい
- す(つ)んだらーさ ⇒ かわいそう
- ぱずかっさ ⇒ 恥ずかしい(似たことばでどうぐりーどうぐり)
- うわた ⇒ あなたたち
- ばんた ⇒ わたしたち
(例)うわたーんざんかいりゃー?(あなたたち何処行くの?)
*ざうかにさん、投稿ありがとうございました。ざうかにさんは、ざうかに(グミの実)が好き?ですか。
『お便りコーナー』
名古屋の *yumika* さんより
こんにちは、はじめまして。わたくし、名古屋に在住の*yumika*と申します。『くまから・かまから』とはついこないだ出会いました。それと言うのも、宮古島の方言を勉強したくてネットをカタカタ・・・・『おぉ!こんなに生々しく語ってあるなんて!おもしろ?い♪』と大発見。とぉ?っても勉強になってますよ!
あたし小さい頃から沖縄というものにすんごく憧れてました。とてもとても不思議なところに感じていたんです。なにがどうあたしをそう言う感情に駆り立てるのか未だにうまく言葉にはできないのですが、とにもかくにも沖縄というところは『すんばらし!』と感動を覚えるんですよ。
では、これからも楽しみに読ませていただきますので、どんどんいろんな事教えてくださいね♪
* *yumika*さん、メールありがとうございました。これからも、生々しく語っていきます!よろしくお付き合いくださいー。
『編集後記』
Hatsumi.M
いよいよ、夏ですねー。宮古の夏といえば、スコールでしょう。おもいっきり降って、その後は、カラッと晴れる。家を空ける時は、用心のためというより、急に雨が降っても家に雨が入らないように、戸を閉めてでかける。これは、大事です。すぷーすぷ(湿っぽーく)なってしまうからね。ご用心。
次号は、6月21日発行予定です。お楽しみに??。