師走ですねー。みなさん、ぱんたーぱんた(忙しく)していると思いますが、今回は、時間についてのぱなす(話)です。
『あてぃあわてぃさますなよ(あまりお急ぎなさらないで)』
アモイ/著
近年の「IT革命」「グローバル化時代」到来は何事にもスピーディーな対応が要求されます。しかし、あまり事を急ぎすぎると弊害も出てきます。事情はちょっと違いますが、中国の交通事情において、タクシーの運転手は、客を乗せるとやたらスピードを出します。売上げを上げようと空車の時よりもさらにスピードを上げて目的地に向かいます。事故も多くて怖いです。
また、豚肉を食べた人達が中毒で入院する事件がありました。原因は豚の餌に混ぜる薬「精肉激素」にありました。この薬は成長を促進させ、脂肪分を減らす作用がありますが、毒性があり、その肉を食べた人間が中毒を起こします。これも売上増を急ぐあまりの暴挙で、大きな弊害(被害)をもたらしました。
それに比べて、宮古島で過ごした子供の頃(S40年代)は、時間に追われることなく「てぃだ(太陽)が上れば朝、真上なら昼、夕陽で夕方」と大雑把でした。日曜日にやらされた農作業の時などは、早く帰りたくて「ぴゃーかりてぃだぬうてぃんがらやー」(早く陽が沈んでくれないかなー)とあの一日の長い事といったらありませんでした。
今は年のせい?もあり、1年でも、あっと言う間に過ぎ去ります。当時は、腕時計の習慣もなく、畑仕事中の農夫が手を休めて、通りがかりの人に「んなまー何時がなりゅー」(今何時ですか?)と尋ねると、長時間外出中のその人も、知らないとは答えず「きすぬぬ、んなまずぶんさーい」(昨日の今時分だよ)と切り返す光景もみられました。
豚の飼育ものんびりでした。えさは人間の食べかすがほとんどで、そのせいか脂肪分が多かった。「あがい のーしぬ あうわーわーが」(何て、ひどい脂肪豚だ)といいつつ食べていましたが、大きな問題はなかったですね。
今の時代はどうでしょう?30年前に戻る気もしませんが、みんながあまりに急ぎ過ぎていませんか?急ぎ過ぎて弊害につきまとわれないように気をつけたいものですね。
『宮古のことわざ』
〔 昨日や 人ぬ上 今日や 自分ぬ上 〕
キィヌゥヤ ピトゥヌウイ
キュウヤ ドウヌウイ
他人に起こった災難がいつわが身に起こらないとも限らない。この世の福と禍は天秤棒(てんびんぼう)のようなものだ。
んきゃーんじゅく 佐渡山政子/編 より
『あぱらぎねーねー(きれいなお姉さん)』
菜の花/著
がんずぅしてる?(元気にしてる?)もうすぐクリスマスだねー。クリスマスが近くなるといつも思い出す患者さんがいるさー。その人はあぱらぎねーねーだったさ。すぐりぴとぅ(優れた人)で、外国でも活躍したらしい。
仕事が面白くて、舌が癌にやられていても病気だと気づかなかった。病院に来た時、舌の3分の1は溶けていて、体のあちこちにも転移していた。うーぐとぅ(大変な事)になっているのに、ねーねーは、あぱらぎばらぃ(美しい笑顔)で「これも経験!」と言った。ちゅーばぁみどぅん(強い女性)だった。
インテリアデザイナーだったねーねーから「病室を美術館のようにしたい」とメモを渡された。病院の偉い人に頼んだら、施設を壊さなければいいとOKがでた。それからねーねーは、あぐ(友達)に絵と額縁を用意させ、ベッドの上から厳しく指図して「仕事人」になった。プロの仕事だった。壁いっぱいに絵が飾られ、病室の入り口には「アートギャラリーへようこそ」と貼られ、ねーねーの仕事は終わった。
ある夜勤の日。ねーねーの枕元に行ったら、「クリスマスの灯がいっぱい。空いっぱいに明るい光。怖くない」とやっとやっと書かれたメモを渡された。ねーねーはその夜どんな夢を見たのだろうか?それから1ヶ月後、ねーねーは天国の住人になった。
もうすぐクリスマス。あぱらぎばらぃと やぱつむ(優しい心)で、どんな事をも「これも経験」と受けとめていたねーねーは、生きた時間は短かったかもしれないけれど、ぬつ(命)は光っていた。どんな状況でもそれをプラスに思える人は、真に強い人なんだろうね。
年取ったねーねーのお母さんから毎年届く年賀状の端っこには、クリスマスに法要を行いました。と書かれている。
『ミャークフツ講座 時編』
Hatsumi.M/著
- きゅう = 今日
- あつぁ = 明日
- あさてぃ = 明後日
- き゜ぬ = 昨日
- ぶとぅとぅず = おととい
- んなま = 今
- くとぅす = 今年
- くんどぅ = 今度
- んきゃーん = 昔
- すとぅむてぃ = 朝
- ぴすま = 昼
- ゆなず = 夜
【例】
あつぁ んざんかいが いかでぃ
(明日は、どこに行こうか)
『編集後記』
Hatsumi.M
やらびばたぬ(子供の頃の)時間の流れは、ホントにのんびりでした。んなまぬ(今の)時代は、いろいろな機器ができて時間は短縮されたはずなのに、なんで余裕がないんだー??欲張りすぎるんだねー。
「あぱらぎねーねー」の生き方は壮絶だけど、しまいぎぃ(最後まで)自分らしく生きるとはどういうことか、考えさせられます。
さて、次回は「やまとぅぴとぅぬカルチャーショック」をお送りします。お楽しみに!