こんにちは〜。
宮古も朝晩の風が秋めいてきました。かんづぅーかりうらまずなー(お元気です)?
今回もいろいろなぱなす(話)のお届けです。
お楽しみくださいね〜。
夏バテに蜂の子を食べよう
宮国勉(城辺・西城出身)
今年の夏は例年になく暑かった。ここ埼玉県は内陸のせいか東京都や神奈川県・千葉県・茨城県などの近県よりも1度は高い。不用意に屋外へ出ると気温差で体調に異常が現れそうである。
最近、バッタのハンバーグの新聞記事を読んだ。やらびぱだ(子供の頃)の記憶が呼び覚まされて、蜂の子が思い浮かんだ。 当時、蜂の子は焼いたりしてよく食べていたからである。しかし、ハンバーグでは蜂の子を潰すことになるから別のものを考えることにする。姿や形を変えない方が蜂の子の魅力が引き出せるだろうとも思える。蜂の子は高タンパクで栄養価があり、創意工夫で高級珍味に仕立て上げると、ふるさと創生のひとつになりそうである。
蜂の子は小さいので自然の蜂の巣を探して捕る方法では埒が明かないので養殖するようである。だが、スズメバチだと扱う人にも、地域の人にも危険が及ぶことから難しい。ならば刺されても死ぬ程では無い ふまばつ(アシナガバチ)が適していそうだ。しかも日本全国に棲息しているので養殖し易いかと思われる。
ふまばつは樹の枝や草陰の岩などの清潔なところに巣を造ることから、衛生上も良好である。調理法は素材の特徴を活かして焼き鳥風に少し焦げ目をつけて瓶詰めにすると良さそうだ。素材本来の美味しさを味わうには、なるべく加工しないことが大切ではないかと素人ながら考える。蜂の子は炙ると焼き鳥やウナギのように香ばしく食欲を誘い酒やビールのつまみにも最適に思える。
長野県や岐阜県では蜂の子を「ヘボ」と呼び、クロスズメバチを追って巣を捜し当て採集する方法は蜂追いと云い、テレビでよく放送される。岐阜県恵那市串原地方ではヘボ祭りが開催されるぐらい盛んである。蜂の子の佃煮や蜂の子入りご飯(ヘボ飯)など、その土地の食べ方の流儀が面白い。一度ヘボ祭りに参加してみたい衝動に駆られる。
このごろ外食産業では異物混入が騒がれているので、食品安全衛生法などの関連法もクリアする必要がある。しかし、缶詰め大国の我国では難なく次のステップに進めるであろう。瓶詰めの蜂の子は行儀良く脚を揃え、立ち姿で日本的なおもてなしの格好であろうと想像する。
宮古島には がやんだ(オキナワチビアシナガバチ)と云う、体長が8〜10ミリ程の小さな蜂が居る。朝夕を除き、いつも羽を持ち上げ、飛び立てる体勢をとり攻撃に備えている。攻撃するときは巣から一直線を描き編隊をなして向かってくる。まるで戦闘機が続けざまに突っ込んでくる特攻のようである。小さいながら凄まじい攻撃性を兼ね備えた蜂である。
がやんだは巣作り場所としてアダン、サトウキビ、ススキ、チガヤなどの葉裏など、雨の直接当たらない処に造る。巣が大きくなるとなぜか反り返るような曲がりのある巣を造るので昔から ぴるます(不思議)に思っている。
蜂の巣をよく観ると正六角形が連なって出来ている。その形は、最小限度の材料で最大限度の空間を構成できる、最も優れた構造である。丸や正四角形あるいは他のどんな形よりも無駄が無い。自然界から学んだその構造は、軽量、高強度、高剛性、表面積が広い、衝撃吸収性、断熱性能があるなど優れた性質がある。蜂の巣構造又はハニカム構造(Honeycomb)と呼ばれ自然界の不思議の一つである。
ハブ酒やマムシ酒など、一般的に攻撃性が有り、毒が強い生き物ほど、滋養強壮に効くとされることから、小さいながらどう猛な がやんだを候補に挙げておきたい。これを食べれば夏バテには絶対にならないであろう。
我が家の椿の樹にはオオスズメバチの巣が2つも造られており、小さな壺の芸術作品である。今までは物置小屋に造ったが、入れなくしたため移動したらしい。毎年冬には殺虫剤を吹きかけ、大きくならよう見張ってきた。
沖縄県の珍味は豆腐よう、海ぶどう 、ミミガー、イラブー汁、イソアワモチなどがあるそうだ。イソアワモとは見たことも食べたことも無いので、ネットで調べてみた。この生物は海辺の岩礁に棲み、伊是名島などでは味噌炒めで料理し、磯の香りあふれる珍味として食されているらしい。
食べたことのある昆虫は、あらかちゃ(ツチイナゴ)、いなご(イナゴ)、がーす(蝉)、ぱつ(蜂)などで特にイワサキクサゼミの まーすぅいずき(塩炒め)は美味しかった。
日本の食文化は想像を超えて奥深く、食わず嫌いを戒めて、世界の食文化に挑戦したい歳になった。
以下はWikipediaからの参考試料
*佃煮とは砂糖と醤油で甘辛く煮付けた食べ物で小魚、アサリなどの貝類、昆布等の海藻類、山地ではイナゴ等の昆虫類などを醤油・砂糖等で甘辛く煮つめたもの。
*甘露煮は、煮物・煮魚料理の一種でアユ、鯉、ニジマス、ハゼ、フナ、ワカサギ、ヤマメ、アマゴ、イワナなど主に淡水魚を生のままか素焼きした後、醤油やみりんに多めの砂糖や水飴を加えた汁で、照りが出るように煮たもの。
*瓶詰とは、野菜や果物などの食品を、塩水、酢、油、酒等による調味液とともにガラス等を材質とする容器に封入したもの。
*魚の缶詰といっても奥が深い。アンチョビやシーチキンといった缶詰。
*缶入りとは乾燥食品などの製品を単に金属缶 に詰めて密封したもので「缶入り」と呼ばれ一般に缶詰とは区別される。
◇あの話をもう一度
菜の花(伊良部町仲地出身)
「おばあが かしー」vol.148 2007/5/17
私の年代なら誰でも、やらびぱだんな(子どもの頃は)今の若い主婦並に、いやそれ以上かも知れないくらい かしー(手伝い)をさせられたんじゃないかと思う。なんたって行事の島宮古!みどぅん(女性)が働かんと行事は済ませない。その かしーを担うのが みどぅんやらび(女の子)かしーをしながら行事の料理も覚えていくんだけど、私みたいに例外もいるさー。
やらび(子ども)の頃は炊飯器もないから、ご飯は石油コンロで炊いた。火加減が難しくて、なびふた(鍋蓋)からじゃーじゃー吹きこぼれるし、火を弱くするのが遅れると なんかつくるず(焦げて真っ黒)になって、母ちゃんに「すかた にーん んまり(不器用な子だね)」と怒られる。
ご飯炊きだけじゃない。グルクン(たかさごという魚)や うんぱんびん(芋天ぷら)を揚げるときは、大きな鍋で揚げるから油の量が多すぎ!投げ入れるようにして、グルクンや うん(芋)を鍋に放り込もうものなら、災いは自分の身に降りかかる!油がはねて火傷をする羽目になってしまう。水で冷やしてもチリチリ痛む。まるでそこの部分も唐揚にされた気分・・・。
命がけの かしーぬぱなす(手伝いの話)はこれ以外にも だう(たくさん)で・・・あらん!(ちがう)私がもっと小さい頃の かしーのぱなす(手伝いの話)をしようと思っていたさー。
私はおばあっ子だった。おばあのかしーは母ちゃんに頼まれる かしーとは全然違っていて、遊びと同じくらいにおもしろくて楽しかったさー。
おばあはカナぶば(直訳するとカナおばさん)が畑から採ってきた うん(芋)を干して保存食にしていた。庭先の かーぎ(陰)に座って足を広げてタライを挟み、釜を逆さにして刃を上に向け、厚めのポテトチップスのように芋をスライスしていく。
うん(芋)の皮をカナぶばが剥き、おばあがスライスし、小さくて軽い私が梯子で屋根に登り、むしろを広げて うん(芋)を干す。二人三脚じゃなくて三人四脚だ。
うん(芋)を干すときは重ならないように並べていく。強烈な太陽の光に干されて、真っ白になっていくのを見ると眩しいくらいだった。屋根の下では、芋を削りながら歌うおばあの声が聞こえる。
「サッサ、ヒヤサッサ」と囃子を入れたり、「かなす んまがまよ〜(愛しい 孫よ)」と私のことと思われる歌を即興で歌ったりしていた。やらび(子ども)だった私には意味が分からないような古謡も歌っていた。物悲しくもあり、心地良くもあった旋律が、今もぼんやりと記憶に残っている。
芋はカラカラに乾燥するまで干すため、天気が続く日を選んでやった。おばあは天気を当てるのは当たり前のようにピタリと当てていた。
おばあやー(おばあの家)は実家の隣にあった。おばあは干した芋の料理ができると戸口から手招きをして「ぱたらつ だまど(働いた分だよ)」と食べさせてくれた。芋の皮を剥いてサイコロに切りご飯に混ぜて炊くとき、干した芋も砕いて一緒に焚くと芋でんぷんでトロリとした芋ご飯の仕上がりになるのだ。かぬ んまさーばっしらいん!(あの美味しさは忘れられない)
他にもおばあの かしーはいろいろやった。おばあがとってきた アダナス(アダン木の若い根)を裂いて水に曝すために井戸水を汲んだり、縄をなうための ギスツ(ススキの葉)を叩いて柔らかくして干したり、一緒に ぬぅずぅ(湿気のある地面に生えるきくらげのようなもの・直訳では野原の野菜)を採りに行ったりした。
司んまだったおばあは御願になると御嶽に泊まるので、ちゃーぬちょーき(お茶うけ)やおにぎりを届けにも行った。まーんてぃぬ(本当の)おばあが ちびっふゃ(おばあの尻を追うの意)だった。
んなみぬ やらびぬきまい(今時の子どもたちも)かしーはやるだろうけど、んきーんぬ かしー(昔の手伝い)とは だいず(すごく)違うはずねー。小さい私にとっては、何でも知っているおばあは偉い人であり、また友達のような存在でもあった。おばあの かしーから学んだものはいっぱいある。おばあのかしーをさせてもらえたことは、今となっては貴重な体験さー。おばあ感謝しているよ。
うとぅるすむぬどぅ・・・
根間(幸地)郁乃(平良・久貝出身)
突然ですが、怖い話がお好きな「くま・かま」読者の皆様はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。私は三度の飯より・・・いえ、三時ちょーき(おやつ)と同じくらい怪談が大好きです。以前開催したトーク&朗読イベント『琉球怪談@宮古島』について「くまから・かまから」vol.290 https://miyakojima.jp/kumakara-kamakara/vol-290/ でも熱く書きなぐったほどです。
今年の夏、宮古島市立図書館では「怪談朗読“うとぅるす”ナイト」(「うとぅるす」は、恐ろしいときなどに発する言葉)を企画しました。地元で長年こどもたちのために活動している「おはなしの会たまてばこ」のメンバーさん達に、図書館で所蔵する郷土資料の中から宮古や沖縄の怖い話を読んでいただいたのです。
取り上げたのは『琉球怪談』、『ウーウートイレ』、『ぴるます話』(「ぴるます」は「びっくりする」の意)の3冊。著者の小原猛さん、アンクル・カヤさん、かたりべ出版の佐渡山安公さんにもご快諾いただき、練習を重ねました。
当日は観光の方も含め、20人ほどのこぢんまりとちょうどいい観客数。朗読するお三方は浴衣姿で、いっそう涼やかな雰囲気の空間に。
宮古で聞き書きされた怪異集『ぴるます話』に収録されている「あの世への銭を拾う話」も紹介したのですが、薄気味のわるいお話です。ある方が自分の車の周りに小銭が落ちているのに気づく。いやな感じがして拾わずにいると、日々、だんだん金額が増えてゆく。ついにあるとき千円の札束を目にして捨ててしまうと、それを拾った高校生たちが事故に遭ってしまった・・・というもの。
このほか、亡くなったおばあさんが蝶になって現れたようなお話や、出演者の実体験など、10話を超す“うとぅるすぱなす”(恐ろしい話)を、三者三様の朗読と素ばなしで披露。裏で聴いていた私もぞくぞくしました。
お帰りの際、ご来場者には浄めを兼ねて島マースのお菓子を。そして会場の四隅には、しっかり盛り塩もして臨んだのですが、(小声で)・・・まーんてぃ(ほんとうに)、うとぅるすき(恐ろしい)ことも、実はあったのでした・・・。うばいがうばい(まいったまいった)。
琉球の歴史書『球陽』には、18世紀初頭に編さんされたといわれる外巻(『遺老説伝』)があります。離島も含め各地の古老が語った140話余りが収められていますが、宮古諸島のお話はなんと25話も!頭に二つの角をもって生まれた下地川満村の「目利真角嘉和良(メリマツノカワラ)」という男の子の話など。宮古の人たちは、島じゅうのお年寄りから集めた民話を取捨選択しまとめた『宮古島旧記』を1707年に首里王府に提出したとのことで、それだけ数多くの民話が語り継がれていたのだということが分かります。
今年の夏は、市の総合博物館でも宮古の不思議な習俗などを紹介する「宮古のピルマス展」が開かれ、関連行事の「ナイトミュージアム」では、地域の方による、ぴるます話の語りも。ちょっとしたミステリー月間でした。
霊感のない私でも、たまに四辻などを歩いたり古い建物の中にいると、ふとした気配を感じることがあります。そんなときは「ああ、ここもきっと誰かの居場所なのだ」と、気にしないようにしています。
「うとぅるすむぬどぅ、みーぶすむぬ(怖いものほど、見てみたいもの)」という言葉があります。人々が古来から培ってきた、自然や目に見えないものへの畏れ―決して人間が万能ではないという敬けんな気持ち―は、こうした物語や習俗を大切にすることで守られていくのかもしれません。
編集後記
松谷初美(下地・高千穂出身)
茨城、宮城の水害には言葉をなくしてしまいますね。一日も早い復旧を願ってやみません。どうぞ、みなさん、お体気を付けて。
宮古では、ぶーぎ(キビ)の夏植えもひと段落。早くも ぶーぎの芽が出てすくすくと育っています。サニ(種)を蒔けば、後は雨や太陽、自然の恩恵を受け育っていきますね。蒔かないことには芽も出ない。当たり前のことですが、その時期に種を蒔くということの大切さを感じます。躊躇していては何も始まらないんですよね。考えすぎないでまず種を蒔く。そうすればいろいろな人に助けられ、進んでいけるかも。(あれ、何の話だっけ?笑)。やらびぱだ(子どもの頃)には、なんてことのない、宮古の風景でしたが、深い事をおしえてくれる気がしています。
さて、今回の くま・かまぁ のーしが やたーがらやー?
宮国勉さんの蜂の子の話、すごい発想ですね〜。私は食べたことないですが、おじいが焼いて食べていたのよくを覚えています。他の地域では、お祭りもあるとは、びっくり。食べるのは宮古だけじゃなかったんですね。蜂の性質や、巣の様子についても初めて知ることがいっぱい。流石の宮国さんでした。
来る21日は、敬老の日ということで、菜の花の「おばあのかしー」を再掲載しました。かしー(手伝い)をすることでおばあちゃんと豊かな時間を過ごしてきたんですね。お互いを あたらすーと(大切に)想っていることも伝わってきました。敬老の日。私たちを たかさして(可愛がって)くれたおじい、おばあに感謝したいです。
郁乃さんの「怪談朗読“うとぅるす”ナイト」上等企画ですね〜。怖い話しが好きな人は結構いるのでは?いろいろな話の内容に興味しんしんでした。行けなかったのが残念。本には先人たちの知恵がたくさん詰まっていて、現代の私たちにも多くの事をおしえてくれますね。最後の文章も本当にそうだなーと思いました。
貴方は、どんな感想を持ちましたか?お聞かせくださいね。
掲示板での感想もお待ちしています。どうぞ、よろしくお願いします。
きゅうまい、しまいがみ ゆみふぃーさまい すでぃがふー!
(今日も最後までお読みくださり、ありがとうございました!)
次号は10月1日(木)発行予定です。
季節の変わり目です。どうぞ、体調くずされませんように。
あつかー、またやー!