くまから・かまから vol. 402

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 こんにちは〜。
 今年も残すところ、んな ぴっちゃ(もう少し)となりましたががんづぅかり うらまずなー(お元気ですか)?
 今年最後のくま・かまお届けです。お楽しみくださいね〜。

『方言サミット(北海道大会)』に参加して

さどやませいこ(城辺・新城出身)

 「イランカラプテ〜」これは、アイヌ語の「こんにちは」のあいさつ。訳すると「あなたの心にそっと触れさせてください」だそう。深いね〜言葉って。まぁそんな訳で12月2日〜4日まで北海道へ行ってきましたよ。
 
 2009年、国際連合教育科学機関(ユネスコ)が、世界の消滅危機にある言語地図を発表。日本では8つの言葉「アイヌ・八丈・奄美・沖縄(国頭・沖縄中南部・宮古・八重山・与那国)」がそれにあてはまるということで、2014年から各島(地域)において方言サミットを開催しています。
 
 教育委員会から2人、文化協会から3人、そして方言話者の垣花譲二さんとで「平成29年度 危機的な状況にある言語・方言サミット(北海道大会)」とその関連事業に行ってきました。さすがに北の果て北海道は遠い。移動にまる1日を有し、結局2日間の大会に参加するのが精いっぱいで、お土産も買ってこれなかったさーごめんね。
 
 それでも3日目にようやく粉雪が舞い「あ〜、北海道に来たんだー」と感動で写メを撮りまくりました。(そんなことはどうでもいいって。すみません、本題に入ります)
 
 初日は、方言サミット関連事業である、第21回アイヌ語弁論大会「イタカンロー」(話そう)が千歳市民文化センター大ホールで開催された。公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構(札幌)の主催。朝10時から夕方5時まで子どもや大人が入れ替わり立ち代わり、何と41人の弁士が登壇。もちろん耳から入る言葉は理解不能なので、私たちは配られた解説本を必死にめくった。
 
 話の内容は、昔、和人が入り込んでアイヌの人たちを殺したという悲しい話や、言い伝え、昔話、生活習慣などテーマは様々だった。「言葉は魂」という言い伝えが示す通り、アイヌの方言には、自然の生き物や植物を大事に慎ましく生きてきたことが伝わり、むしろ精神の豊かさを感じた。
 
 2日目の本大会は、北海道大学学術交流会館小講堂で行われ、午前10時の開会を皮切りに千葉大学教授・中川裕氏の基調講演や危機的状況にある言語・方言の現況報告、語りなどが披露された。聞き比べでは、8地域の話者が司会からふられた言葉をそれぞれの地域の方言で話すということが行われ、あまりの違いに会場からは感嘆の声や笑いなども起こった。宮古からは、浦添在住、下地与那覇出身の垣花譲二さんが話し、やぱ〜やぱの ゆなぱふつ(柔らかい与那覇方言)を紹介し会場を沸かせた。
 
 この後、アイヌ語に関する取り組み事例報告が、平取町立二風谷アイヌ文化協会と北海道アイヌ協会からなされた。また「危機言語・方言の保存・継承と地域社会」をテーマに4氏がそれぞれ報告、スライドを通して現状を伝えた。
 
 閉会式では、関根健司さん親子によってほのぼのと「大会宣言」が読み上げられた。その内容は「先祖代々、引き継がれてきた言葉を絶やすことなく若い人たちが自然に触れられるような環境をつくり、本サミットで生まれた各地域のつながりを大事にしていきたい」というものだった。ま〜んてぃ(本当に)。
 
 最後は、場所を変えて関係者が集い和やかな交流会が催された。言葉を通し、これまで地域の生活文化を支えてきたお互いの方言の大切さを確認しあいながら、雪の舞い散る夜は笑いと歌で更けて行った。うすか(おしまい)。

◇あの話をもう一度

ひさぼう(平良・西仲出身)

「ミャークフツ講座 助詞編2」vol.85 2004/10/7

 助詞「が」と「の(ぬ)」の使い方

 ミャークフツの場合、「が」は、GA と発音されて、共通語と同じであるが、「の」は、NO の O が U となって、NU「ぬ」と発音される。したがって、共通語の「の」はミャークフツでは、「ぬ」となる。

 さて、ミャークフツの場合、所属・所有関係を表わす「が」と「ぬ」は、その前に来る名詞・代名詞によって、どちらを使うか決まってくる。 例えば、「わたしの子供」は、「ば が っふぁ」とは言っても「ば ぬ っふぁ」とは言はない。逆に「天の星」は「てぃん ぬ ぷす」とは言っても「てぃん が ぷす」とは言はない。 さらに、この区別は、「が」と「ぬ」が、主語を表わす場合も出て来る。
 これを、グループに分けると、次のようになる。

1.「が」と言う、グループ。※( )の中は、ミャークフツのローマ字表記

 ◆一人称、二人称、三人称、不定称 
 (例)
  私の(BAGA)本、君の(UVAGA)本、彼の(KAIGA)本、誰の(TO-GA)本
  ※ 共通語の例 わが母校、君が代、鬼が島など文語的表現
 ◆人名
 (例)
  太郎の(TARO-GA)本、花子の(HANAKOGA)本
 ◆兄、姉、父母、祖父母など
 (例)
  兄の(AZAGA)本、姉の(ANNGAGA、NE-NE-GA)本、父の(UYAGA、OTO-GA)
  本
 ◆これ(KUI)、それ(UI)、あれ(KAI)
 (例)
  これの(KUIGA)主(NUSU)、それの(UIGA)主、あれの(KAIGA)主

2.「ぬ」と言う、グループ。
  大ざっぱに言うと、上の例以外は、全部「ぬ」と言う。

 ◆身体、自然、動物、植物、
 (例)
  目のくそ(MI-NU FUSU)、山の上(YAMANU UA-BI)、馬の糞(NU-MANU 
  FUSU)
 ◆神(KANM)、魔物(MAZUMUNU)、
 (例)
  神の助け(KANM NU TASUKI)、魔物の住みか(MAZUMUNU NU YA-)
 ◆人名以外の固有名詞
 (例)
  日本の旗(にほんNU PATA)、トヨタの車(トヨタNU くるま)、秋田の
  米(あきたNU MAZZ)
 ◆子供、弟、従兄弟、親戚など
 (例)
  子供の家(FFANU YA-)、従兄弟の家(ITUFUNU YA-)、親戚の家(UTU
  ZANU YA-)
 ◆この、その、あの、どの  ここの、そこの、あそこの、どこの
 (例)
  この(KUNU)、その(UNU)、あの(KANU)、どの(NNJINU)、ここの(K  UMANU)、そこの(UMANU)、あそこの(KAMANU)、どこの(NNZANU)

3.ミャークフツは、「が」と「の(ぬ)」を、上のように使い分けている。
  これからすると、「豆の花」は、MAMI NU PANA となるはずである。と
  ころが、宮古民謡「豆が花」では、はっきり MAMI GA PANAと歌ってい  る。これは、どういうことか。

(1)民謡「豆が花」の歌詞は、次のようになっている。
  朝ぬ豆が花よ サーサー
  明きしゃるぬ 露が花よ イラユシ 
  イラユシマーヌ 露が花よ
日常の、会話では、「豆の花」は、MAMI NU PANA であって、MAMI GA PANA ではない。なぜなら、例えば、豆と同じような次のことばを言い比べてみる。
  大根(UPUNI)の葉 ⇒ UPUNI NU PA―  × UPUNI GA PA―
  ざうかにの種 ⇒ ZAUKANI NU TANI   × ZAUKANI GA TANI
  大豆の花   ⇒ DAIZU NU PANA    × DAIZU GA PANA

(2)また、「が」と「ぬ」は、所属、所有関係を表わすほかに、次のような言い方 NU→ NUDU、GA→GADU で主語を表わす。
 「ぬ」のグループ
  大根の葉が枯れている ⇒ 大根 NU 葉 NUDU 枯りうズ
  ざうかにの種が落ちている⇒ ざうかに NU 種 NUDU 落ちうズ
  大豆の花が咲いている ⇒ 大豆 NU 花 NUDU 咲きうズ
 「が」のグループ
  太郎が本を読んでいる ⇒ 太郎 GADU 本ぬ読みうズ 
  母さんが笑っている ⇒ あんな GADU あまいうズ

(3)これらの例から、「豆が花」なら、「豆の花が咲いている」は、
 豆 GA 花 GADU 咲きうズ となるはずである。しかし、日常会話では、豆 NU 花 NUDU 咲きうズ と言う。

(4)以上のことから、「豆が花」という言い方は、歌詞のリズムとか、ことばの調子を整えるため、あるいは、後ろの「よ」という感動詞とのつながりで「が」になっていると思われる。

4.ミャークフツの「が」と「ぬ」の使い分けは、共通語にもあるのか、調べたところ、「古語辞典」(小学館 中田祝夫編)に次のように書いてある。「一般に、代名詞・固有名詞には「が」が付き、普通名詞には「の」が付く。多く官職名(普通名詞)を用いて人を表わしたから、本名など固有名詞を用いるのは、身内や目下の場合で、「が」に親愛または軽視が、感じられる・・」 また別の辞典では、この区別は、中世末期まであった、とある。これで見ると前に挙げた、自分を中心にした身内グループには「が」を、その外のグループには「ぬ」を、という使い分けと大体同じに思える。

 ばんたが宮古では、奈良・平安時代の「が」と「の(ぬ)」の使い分けを、未だにやっているわけである。

『方言サミット(北海道大会)』に話者として参加

クイチャーマン(下地・与那覇出身)

 12月3日(日)に開かれた文化庁、北海道、北海道教育委員会などが主催する「平成29年度 危機的な状況にある言語・方言サミット(北海道大会)」に、宮古島市文化協会の役員の方々といっしょに参加した。
 
 このサミットにおける私の役目は、日程のなかの「聞き比べ―消滅の危機にある8つの言語・方言を実際に聞き比べていただく―」という時間枠で、宮古島の方言を話して聞いてもらうことだった。
 
 聞き比べてもらう8つの言語・方言は、アイヌ語、八丈語、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語であった。これらは2009年2月にユネスコ(国連教育科学文化機構)が調査結果を発表したもので、消滅の危機にさらされている世界で約2500の言語に含まれる日本国内の言語で、発表では方言も独立した言語とみなされているという。
 
 8つの言語・方言の「聞き比べ」用の文言は、夏目漱石の『吾輩は猫である』『坊ちゃん』『三四郎』のなかの一節と、童謡の『むすんで ひらいて』を、それぞれの言語、方言に翻訳して話すというものである。課題は、サミットの2カ月ほど前に示されていた。
 
 課題と私が話した ゆなぱふつ(与那覇方言)は次の通りである。(8人の話者が翻訳して提出していた文章は、会場の参加者に配布された冊子(資料)にも掲載されており、翻訳文は片仮名表記であった。)

『吾輩は猫である』から
(1)吾輩は猫である。
 <ゆなぱふつ(与那覇方言)、以下同じ>
 バンドゥンマ マユ ガミドゥ ヤーダラ。
(2)名前はまだ無い。
 ナーヤ ンニャダ ニャーン。
(3)どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。
 ンザンガ ンマリターガラ マーダ ッサルン。
 
『坊ちゃん』から
(4)親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。
 ウヤンマリャーシーヌ ズーキシムナーシッティ
 ヤラビパダカラ スゥンバシーティヤーンウー。

『三四郎』から
(5)うとうととして目がさめると女はいつのまにか、隣のじいさんと話を始めている。
 ニウニウバシューリッティ ミーソゥリッカー ミドゥマー ッサ ルンキャ、トゥナス゜ヌシュートゥ パナッスゥ パズミュー。

童謡の『むすんで ひらいて』から
(6)むすんで ひらいて 手をうって むすんで
 ンキ゜ジッティ プラキッティ ティーユウチッテ ンキ゜ジッティ
(7)またひらいて 手をうって
 マタ プラキッティ ティーユウチッテ
(8)その手を 上に
 ウヌティーユ ワーブンケー
(9)その手を 下に
 ウヌティーユ スタンケー
(10)その手を 頭に
 ウヌティーユ カナマス゜ンケ―
(11)その手を ひざに
 ウヌティーユ ツグスンケー

 以上11の課題を宮古島市文化協会のみなさんとも調整し、ゆなぱふつ(与那覇方言)に翻訳して話すことにしたが、なかでも、苦心したのは「吾輩」「猫である」「とんと見当がつかぬ」などである。また、まったくわからなくて与那覇の先輩に尋ねて教えてもらったのが「無鉄砲」(ずーきしむぬ)であった。
 
 私は話者として ゆなぱふつ(与那覇方言)を話しながら、他の7つの言語、方言を聞き比べるという貴重な体験をした。アイヌ語については、サミット前日のアイヌ語弁論大会も拝聴したが、まったくわからなかった。与那国や八重山の方言も難しかった。一方では、やや似たような表現も散見され、根っこの部分でのつながり、関係性などが推測されることばもあった。
 
 会場の札幌市の北海道大学学術交流会館(小講堂)には満員の約200人の研究者、関係者らが詰めかけていた。小中高校生ら約20人がアイヌの歌や踊りを披露したが、保存・継承に向けた関係者の努力を称えたい。一方、与那国方言の話者で、八重山古典民謡技能保持者の宮良康正さんが歌・三線で「与那国ぬ猫小節(まやーぐぁふし)」を熱唱し、北と南を結んだのも素晴らしかった。歌の途中で宮良さんが私を向いて「指笛」と声を掛けたので、囃子の指笛を吹き鳴らして雰囲気を盛り上げた。
 
 今度で4回目という方言サミットへの参加を通じて、多くの関係者の方々と交流できたことはとても楽しく有意義だった。来年のサミットは宮古島市での開催が予定されているとのこと。「んみゃーち!」と心を込めて参加者を歓迎し、大成功させたいものである。

編集後記

松谷初美(下地・高千穂出身)

 宮古も、にすかじ(北風)が吹いて、ぴしーぴしの(寒い)日々です。ぶーぎ(サトウキビ)の ばらん(穂)も出てキビ倒しの時季到来でもあありますね。与那覇湾には、クロツラヘラサギの姿が!あば本舗さんがvol.285https://miyakojima.jp/kumakara-kamakara/vol-285/でクロツラヘラサギについて書いていましたが、与那覇湾にも飛来するというのを読んで以来、会えるのを楽しみにしていました。今年初めてしっかりとこの目で見て感激!沖縄製糖工場そばの橋の上から、最近よく見られます。お近くを通る機会がありましたら、ぜひ、足をとめて見てみてください。
 
 宮古島市文化協会では、12月1日に沖縄県文化協会賞を受賞した個人2名、1団体の受賞祝賀会を15日に開催しました。受賞したのは功労賞下地和宏氏(宮古郷土史研究会会長)、奨励賞:斉藤葉彩氏(一葉式いけ花准一級上席教授)、団体賞:宮古フロイデ合唱団の皆さん。やまかさ(たくさん)の方がお祝いにかけつけ、受賞を喜びました。本当に素晴らしい皆さんです。市文化協会では宮古の文化面で長年活躍されている方々を毎年推薦していますが、これも文化協会の大切な役割だなーと実感しています。祝賀会の様子が新聞に掲載されています。よろしければご覧くださいね。

 さて、今回のくま・かまぁ のーしが やたーがらやー?
 
 12月2日、3日「平成29年度 危機的な状況にある言語・方言サミット(北海道大会)」と関連事業が開催されました。参加したお二人からその時の模様が届きました。それぞれの角度からのお話しで、方言サミットの様子が伝わったかと思います。
 
 政子さんのアイヌ語の挨拶「イランカラプテ〜」から始まるお話し、いいですね〜。アイヌ弁論大会の感想は、民話やことわざを長年研究されている政子さんらしい視点が入り興味深く読みました。実際、その地でそこの言葉を耳にすることで独自の言葉の良さ、大切さを実感できますね。
 
 クイチャーマンさんこと垣花譲二さんは、宮古方言の話者として登壇。事前に課題を、ゆなぱふつ(与那覇方言)に直すことの難しさも書かれていましたね。無鉄砲を「ズーキシム」と表現されていて言い得て妙だなーと思いました。一堂に8地域の言葉が聞き比べられるのは、方言サミットならではですね。
 
 方言サミットはこれまで、八丈島、沖縄本島、与論、北海道と開催されてきましたが、方言が見直され全国規模でこのような展開がされていくということは本当にすごい事だと思います。
 
 来年の方言サミットは、宮古での開催が決定しました。たぶん秋ごろだと思います。文化協会では関連事業を開催する予定です。日程や内容などが決まり次第くま・かまでもお知らせしますね。
 
 あの話をもう一度は、ひさぼうさんの「ミャークフツ講座 助詞編2」でした。「が」「の(ぬ)」は、宮古の人は無意識に使っているんですよね。使い分けているともぜんぜん思ってもいず。(笑)こうやって、みゃーくふつを分解してみると、だいず うむっしだなーと思いますね。
 
 今年最後のくま・かまをお届けしました。この一年も、たかさーしーふぃーさまい(ご愛顧くださり)たんでぃがーたんでぃ。また、いただいた感想にたくさん、励まされました。くま・かまライター一同、心より御礼申し上げます。すでぃがふー!
 
 貴方の感想もぜひ、お聞かせくださいね。
 掲示板への書き込みもお待ちしてます!投稿もぜひ願いしますね。
 
 今年最後のくま・かまをお届けしました。この一年も、たかさーしーふぃーさまい(ご愛顧くださり) たんでぃがーたんでぃ。くま・かまライター一同、心より御礼申し上げます。すでぃがふー!
 
 次号は、来年1月4日(木)発行予定です。
 どうぞ、良い年をお迎えくださいね。
 あつかー、またいら!