葬儀にはさまざまな風習やしきたりなどが見られますが、「寝ずの番」もその1つです。通夜の夜に一晩中故人の側でそうそくや線香を灯しながら故人を見守る風習ですが、近年は通夜の形式が簡素化される傾向にあり、寝ずの番を行わないことも増えてきました。今回は、寝ずの番の由来や意味、マナーから近年の傾向に至るまで詳しく解説していきます。最後までお読みいただき、いざという時にお役立てください。
寝ずの番とは
前述の通り 、「寝ずの番」とは通夜の夜に一晩中ろうそくや線香を灯しながら、故人を見守る風習です。翌日には葬儀・火葬が執り行われるため、故人と過ごす最後の夜になります。ご遺族や親族の中で数人が交替制で一晩付き添い、別れを惜しみます。
通夜から寝ずの番までの流れ
一般的な仏式の葬儀において、通夜から寝ずの番までどのような流れで行うのかご紹介しましょう。
(通夜の流れ)
- 通夜の開始
- 通夜振る舞い
- 参列者が帰宅する
- 片付けなど
- 葬儀屋と翌日の葬儀・告別式の打ち合わせなど
- 故人との最後の夜を過ごす(寝ずの番)
地域にもよりますが、関東などでは通夜終了後に一般参列者に料理をふるまう「通夜振る舞い」が1時間程度行われます。通夜振る舞いが終わり、参列者がお帰りになった後は、ご遺族や親族だけで翌日の葬儀・告別式の打ち合わせなどを行います。その後、寝ずの番の係は、故人が眠る部屋でろうそくや線香を灯しながら、最後の夜を過ごします。
寝ずの番の意味や由来
寝ずの番を行うようになったのは、さまざまな言い伝えが残されています。以下で、いくつかご紹介します。
- ろうそくの灯りは、故人があの世で道に迷わないための道しるべとなる
- 虫や野犬から故人を守るため
- 線香の香りは魔除けになるから
- 線香の香りはご遺体のにおいを和らげるから
また、昔は現代と違い医学が進んでいたわけではありません。死亡の判断が間違うことも稀にあり、その場合は夜中に生き返るケースもあったようです。故人を夜通し見守っていたのは、「万が一の場合にすぐに対応できるように」という理由もあったのかもしれませんね。
寝ずの番を行うときは
寝ずの番を行う場合、ご遺族や親族の中で誰が行うのが適任なのでしょうか。ここでは、「寝ずの番の決め方」「寝ずの番を行う際のマナー」などについて詳しく解説していきます。
誰が寝ずの番を行うか決める
誰が寝ずの番を行うのか明確な決まりは特にありませんが、喪主は翌日の葬儀や告別式のために早く休む必要があります。そのため、喪主は除外しましょう。一般的には、ご遺族や親族の中で比較的若い人が交替制などで行うことが多いようです。
線香とろうそくを絶やさない
寝ずの番は、線香やろうそくを灯し続け故人を見守るという意味があります。そのため、線香やろうそくの準備を行い、夜通し火を灯し続けることになります。最近は、長時間タイプの線香などを使いながら付き添うご遺族も増えています。
寝ずの番を行うときのマナー
お葬式には数多くのマナーがありますが、寝ずの番にもマナーはあるのでしょうか。寝ずの番は、ご遺族や親族など近い身内のみで行うことが多いです。そのため、特別なマナーなどはなく、付き添う際は喪服を着る必要もありません。しかし、故人と過ごす最後の夜に、パジャマやジャージというのも配慮に欠けます。かしこまる必要はありませんが、カジュアルになり過ぎないような一般常識の範囲内の恰好を心掛けましょう。
近年の傾向とは
本来ならば、「灯りを絶やさない」ことがが寝ずの番の目的でした。しかし、近年は約12時間程燃焼時間が続く「渦巻きタイプの線香」、「ろうそく型のライト」などを上手く利用するご遺族も増えています。寝ずの番は「徹夜で火を絶えず灯し続ける」から、「最後の限られた時間を偲びながら故人と過ごす」という意味合いに変化しつつあります。
寝ずの番を行わないことが増えている
近年は、さまざまな理由から寝ずの番を行わないケースも増えています。それは、時代の変化やライフスタイルの変化の影響が多いようです。ここでは、寝ずの番を行うご遺族が減少した背景についてご説明しましょう。
半通夜が主流だから
現在主流となっている時間の短いお通夜は、正確には「半通夜」とよばれる形式です。 「お通夜」というと、夕方から2時間程度行われるイメージを持つ方が多いですが、本来のお通夜は、夜から朝まで故人の側に付き添い、冥福を祈るものになります。
近年は核家族化などライフスタイルの変化により、通夜・葬儀・告別式など一連のお葬式の流れに縮小や簡略化が見られます。家族の人数が多いと交替でできる寝ずの番ですが、少ない人数では負担がかかることもあります。さまざまな手続きや準備に追われ、疲れも溜まっている頃でしょう。そのため、ご遺族は21時前後に半通夜が終わると翌日の葬儀・告別式に備え休むこともあります。
管理されている安置所に保管されていて、見守る必要がなくなった
前述の通り、寝ずの番には「 虫や野犬から故人を守るため 」「線香の香りはご遺体のにおいを和らげる」といった理由がありました。しかし、現代においては、適切に管理されている室内に安置されるため、そのような心配もありません。そこで、ご遺族は故人の安置を斎場などに任せ、自宅などに帰り、翌日の葬儀や告別式に備え休息を取るケースも増えています。
斎場側が禁止している
寝ずの番が行われない理由の1つに、斎場側の事情もあります。近年は防災意識も高まり、火気の取り扱いに厳しくなりました。線香やろうそくを夜通し使用することを禁止している斎場もあります。また、消防署の指導により、夜間のろうそくの使用を禁止されている地域などもあるようです。
朝まで故人に付き添いたいと考えるご遺族は、「故人の付き添いが可能な斎場」を希望し、葬儀屋に調べてもらうと良いでしょう。貸切型の家族葬斎場や葬儀屋の自社斎場などは寝ずの番が可能な場合があります。一方で、公営の斎場などは夜の付き添いを禁止にしているところも多く見られます。
まとめ
お葬式には昔から伝わるさまざまな風習やしきたりがあります。寝ずの番もその1つですが、現代のライフスタイルの変化により、行われないことも増えているようです。生前の故人を偲びながら夜通し付き添うのも良いですが、ご遺族にとっては疲れがたまっている時期でもあるため、無理をしないようにしましょう。