通夜の後に行われる「通夜振る舞い」では「献杯」という挨拶を行います。乾杯と違い聞き慣れない言葉なので、献杯を行う際の流れやマナーなどを知らない方も多いでしょう。今回は、通夜振る舞いにおける献杯の流れや乾杯との違い、注意点などについて解説していきます。最後までお読みいただき、献杯について理解を深めていただきたいと思います。
そもそも通夜振る舞いとは
通夜振る舞いとは、通夜の後に遺族が参列者に料理をふるまう習慣のことです。通夜が終わると、「お清め室」「お清め所」と呼ばれる別室に移動し、遺族と参列者が会食をします。故人の思い出話を語り合ったり、在りし日の姿を偲んで食事したりすることを目的とします。
通夜振る舞いは地域によって形式が違う
東日本では一般の参列者にも通夜振る舞いに参加していただき、遺族と一緒に会食を行います。しかし、通夜振る舞いは地域によって形はさまざまです。特に西日本では通夜振る舞いの習慣がない地域も多く、通夜終了後は親族のみで食事をすることが一般的です。
通夜振る舞いにおける献杯の流れ
通夜振る舞いでは、故人に敬意や畏敬の念を示すため、「献杯」と呼ばれる挨拶を行います。献杯はさまざまな場面で行われる「乾杯」とは流れや作法が異なるのはご存じでしょうか。以下で、通夜振る舞いにおける献杯の流れを確認しておきましょう。
通夜振る舞いにおける献杯の流れの一例
1. 故人の位牌や遺影の前にグラスなどを用意し、お酒を注ぐ 2. 全ての参列者に行き渡るように飲み物を用意する 3.遺族(喪主)が、通夜の終了の報告と参列者にお礼を伝える挨拶を行う 4. 挨拶の中で、献杯を頼んだ人を紹介する 5. 指名された人が献杯の挨拶を行う(そのまま喪主が献杯を行う場合もあります) 6. 全員で献杯と唱え、軽くグラスを持ち上げる 7.黙とう、または合掌などを行う 8. 喪主が「お召し上がりください」と参加者に声を掛ける 9.会食が始まる 10.時間を見て、閉式の挨拶を行う |
乾杯と献杯の違い
前述の通り、「献杯」と「乾杯」には大きな違いがあります。ここでは、乾杯と献杯の特徴についてそれぞれ説明していきます。通夜振る舞いの席で「乾杯の挨拶」を行うとマナー違反となり、周囲を不愉快にするため注意が必要です。失礼のないように、しっかりと違いを確認しておきましょう。
盛り上げるときは「乾杯」
「乾杯」とは、古くから伝わる健康や成功・祝福などの儀礼です。元々は盃の交換を行っていましたが、衛生上の理由から現在の形に変化したといわれています。ヨーロッパの影響受けてグラスを合わせるようになりました。お祝いの席や努力や功績をねぎらう場面で行われることが多いです。
偲ぶときは「献杯」
一方で、通夜振る舞いなどの悲しみの席で行うのは「献杯」です。献杯は故人に対し敬意を表し、杯を捧げることが目的なので、「献杯」と声を掛けた後は、静かに黙とうや合掌などを行います。「乾杯」も「献杯」も、グラスに飲み物を注ぎ、掛け声と共に口を付けるという行為は同じですが、目的や作法が違う点に注意しましょう。
知っておきたい献杯のマナー
献杯は故人に対し敬意を示す行為です。そのため、「献杯!」と言いながら元気に盃やグラスを合わせるようなことは避けましょう。献杯の声掛けの後は、胸の高さまでグラスを静かに上げるのがマナーです。頭より高い位置に元気に掲げるのは乾杯の挨拶になるため、気を付けましょう。
その他、献杯における注意点を下記にまとめました。
- 献杯の掛け声は落ち着いた声で行う
- 献杯の掛け声の後は、「黙とう」又は「合掌」になることが多いため、献杯の直後に飲み物を飲み干さない
- 献杯は供養になると考えられるため、必ず飲み物に口を付ける。ただし、全て飲み干す必要はない
- 献杯が終わるまで食事は食べない
上記から分かるように、献杯は故人の姿を思い浮かべ偲びながら静かに行います。
献杯の挨拶は誰が行うのか
献杯の挨拶は誰が適任なのか明確な決まりなどはありません。しかし、一般的に献杯の挨拶を行うのは、以下のパターンが多く見られます。
- 通夜振る舞いの開式の挨拶を行った喪主が、そのまま献杯の挨拶も行う
- 通夜振る舞いの開式の挨拶は喪主が行い、献杯は会社関係者などが行う
家族葬など人数が少ない場合は、挨拶の後で喪主がそのまま献杯の挨拶を行ってもよいでしょう。大型葬や社葬などの場合は、会社関係者などに献杯の挨拶を依頼するケースが多く見られます。以下で、それぞれの挨拶の文例をご紹介します。
献杯の挨拶の文例
1.喪主が献杯も行う場合の挨拶例
本日はお忙しい中、父○の通夜にご参列いただきましてありがとうございます。 皆様の生前のご厚誼と、療養中のお見舞いに厚く御礼申し上げます。 ささやかではございますが、故人の供養のためにも、どうぞお召し上がりください。 それでは、献杯のご唱和をお願いします。 献杯。 ありがとうございました。 |
2.通夜振る舞いの挨拶は喪主で、献杯は会社関係者が行う挨拶例
①喪主の挨拶
皆様のおかげをもちまして、滞りなく通夜を終えることができました。 ささやかではございますが、父の供養のためにも、どうぞお召し上がりください。 それでは、これより父の同僚に当たります〇さんより献杯のご発声を賜りたいと存じます。 〇さん宜しくお願い致します。 |
②会社関係者の献杯の挨拶
ご紹介に預かりました、〇さんの同僚の〇と申します。 〇さんとは、入社したての頃から長い時間一緒に過ごして来ました。突然のことで、信じられない気持ちでいっぱいです。 ご家族をはじめ、多くの参列者に見送られ、〇さんは安らかに眠っていることでしょう。 それでは、献杯のご唱和をお願いします。 献杯。 ありがとうございました。 |
献杯の挨拶は「忌み言葉」と「時間」に注意
献杯における挨拶の中で注意すべき点が2つあるので、以下でご紹介します。
1.忌み言葉に気を付ける
献杯に限らず、葬儀の一連の流れの中で使用してはいけない「忌み言葉」があります。日常では気にせずに使用している言葉が多いので、挨拶文を考えたら今一度「忌み言葉」が含まれていないか確認しましょう。
- 「ますます」「しばしば」「様々」などの重ね言葉
- 「再び」「もっと」「追って」などの続き言葉
上記以外にも、「生死に関する直接的な言葉」や「宗教によっては適さない言葉」などがあります。マナー違反になるため、忌み言葉などにはくれぐれも注意してください。
2.挨拶は手短に済ませる
献杯の挨拶は手短にまとめましょう。遺族が通夜振る舞いから献杯まで挨拶を行う場合は3分程度、献杯の挨拶のみ依頼された場合は1分程度が望ましいでしょう。
まとめ
今回は、通夜振る舞いにおける「献杯」について解説しました。献杯の挨拶を行う際は、故人に敬意を表すため落ち着いて杯を捧げましょう。 また、献杯と乾杯はよく似た言葉ですが、目的や作法などは大きく異なります。 通夜振る舞いの席に参加する場合は、場に応じたマナーを身につけ故人やご遺族に対して失礼のないようにしましょう。